第二幕〜淡い光のその先は…〜
声のする方向に向かって、田んぼ道をてくてくと歩いていく唯。ハッと気がつけば団地を離れて、裏山のほうまで来ていた。この辺りは唯達が遊ぶ山とは別の場所だ。裏山のほうは、ほとんど道が整備されておらず、暗い夜では足元もよく見えない程だ。
唯は慎重に裏山を登っていく。
(皆と遊ぶ山道とは違って道が悪いなぁ)
唯は何度か落ちている石や木の根に足を引っ掛けそうになりながらも、未だ唯の耳に聞こえてくる話し声を追って、暗い山道を歩いた。
裏山に入ってから話し声は徐々に大きくなってきている。どうやら、話し声の主達はこの山で話をしているようだ。
(でも…)
唯はふと疑問に思う。
(どうして裏山で話をしている人達の声がふもとの団地のところまで聞こえてきたんだろう?)
そうなのだ。この裏山から、団地までは少なくとも一キロ以上は離れている。どんなに耳がよくても一キロ以上先の話し声が聞こえるなんてことは普通ではありえない。
(もしかしてあたし、本当に痛い人になってるわけ?)
自分でそう思っても仕方のないことではある。もともと、叔父と叔母への言い訳のネタにするためにここまでやってきたというのに、本当に痛い人になってしまっては元も子もないではないか。
唯の心にまた混乱が生じる。しかし、いくら混乱しているとはいえここまで来て話し声の正体すらつかまず、帰るということは唯にはできなかった。
(せめて、話し声の正体くらいは暴いて帰るわよ)
唯はパンパンと軽く顔を叩くと、立ち止まってもう一度両耳に全神経を集中させた。
「……!」
「…?……」
まだ話し声は聞こえる。さっきよりも大きくなってきているが、まだ完全に何を話しているのかはうまく聞き取れない。しかし、唯の直感ではあと少し歩けば、声の主と合流できるはずだ。
唯は再び裏山のゆるやかな斜面を登り始める。
ようやく目が山の暗さに慣れ始めて来た頃、急に道が開けて一本の小さな外灯がポツンと光っているのが見えた。
その外灯が弱々しい光で照らしていたのは……。




