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第一幕〜謎の声〜

 唯はすっかり暗くなった田んぼ道を難しい顔をしながら歩いていた。

 三人の友達と無事しんみりすることなく来年も会う約束ができたのはいいのだが、問題はその先だ。

 おそらく叔父と叔母もある程度は予想していることだろうが、さすがに日が暮れるまでというのは論外だろう。いくら両親でないとはいえ、多少きつめの注意をされることは間違いない。そうならないために唯は多少、帰宅を早めようと努力はしたのだが、いかんせんノリの良い少女が四人も集まると、歯止めが利かなくなってしまう。一人が誰かを乗せればその勢いに乗って全員が動き出すのだ。

 疲れなんかない。

 最近の中学生の体力を侮るなかれ……と、昨日までなら胸を張って自負していたところだが、叱責という後始末の前では自慢の体力も意味をなすことはない。忍耐力という意味では、ある意味それに耐えうる体力ともいえるだろうが。

「はぁ〜。気が重いなぁ…」

 家との距離が近づいてくるにつれ、唯の足取りが重くなる。どうせ怒られるくらいなら、このまま歩いて実家まで帰ったほうがよいのではないかとも考えた。しかし、よくよく考えれば荷物は叔父と叔母の家にあるので、どうしても先に両親のほうに連絡が行ってしまう。そうなれば、このまま実家に帰ったとて、怒られるのは必至である。

(どの道怒られ地獄ですか。トホホ…)

 唯の足取りがますます重くなる中、ふと唯の足がピタリと止まる。家に帰るのが辛くなったわけではない。何かが唯の足を止めたのだ。

 唯は完全に体の動きを止めると、体全体を使ってその正体を掴もうとする。



「それで……つもりなのか?」

「……。やる…」



(話し声?)

 唯は、自分の足を止めた正体が誰かの話し声だと判断すると、体全体から両耳に神経を集中させる。どうやらこの近くで話しているようだ。

(でも、この辺りは田んぼと畑しかないし、そこで話しているのかな?)

 しかし、そうだとしたら話し声は唯が立っている真横から聞こえてこないとおかしい。話し声は唯の目の前から聞こえてくるのだ。しかも、話し声はまるで唯を誘っているかのように、時折遠くなったり、逆に近くなったりする。

(いったい何なのこれ!?何でこんな何もないところから話し声がするのよぉ?)

 混乱しつつも、このまま家に帰って叔父に怒られるよりかはいいかと唯の心の声は言っている。

(気持ち悪いけど、これを理由にしたらちょっとはマシな言い訳になるかな)

 叔父と叔母には痛い目で見られるかもしれないが、そのほうが同情されてあまり怒られないかもしれない。そう考えた唯は、自分自身を守るためと、興味本位で話し声を追ってみることにした。


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