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第四幕〜最後の闘い〜

「今、わかったぞ。私が数ある武器の中から鎌を選んだ理由が」

 


 大きく回転する鎌から突き刺さるような冷たい風が吹き出される。唯はその風に吹き飛ばされそうになりつつも懸命に両足で踏ん張る。



「私は心のどこかでお前が来ることを知っていたのかもしれん。だから私という者を知ってもらうのに死神の鎌を選んだ」

 唯は前に進もうとするが、三条院に向けて短刀を突き出すが一向に届かない。風が止み、三条院の手に鎌が戻る。

「唯、オイラ達が三条院の動きを止める!その間に……」

「三条院の左胸をその短刀で刺すのだ!」

 いい終わるや否や、影丸と殿様がはじき出されたように三条院に向かって飛び込んでいく。

「愚かな……。一生消えぬ傷をその魂に刻んでくれる!」

 三条院は飛び込んでくる二人を避けようとせず、鎌を前に突き出す。

 甲高い乾いた音が唯の耳に響いた。

 三条院に忠誠を誓うかのように彼の前に突っ伏す二人。

「影丸!殿様!!」

「ハハハ、肉体を傷つけられるよりも痛む魂へ痛みはどんな味だ?」

 三条院は声高に笑う。しかし、そんな三条院の上に大きな墓石がいくつも落ちてきた。

「ヘヘ、本当の悪戯好きは悪戯をされるのは嫌いなんだよ。ざまーみろ!」

「か、影丸ぅ…」

 三条院の目が獲物を追う獣のようになる。

「ワンワンワン!!」

 その隙をよしとした太吉が三条院のちょうどみぞおち辺りを狙って体当たりを食らわせた。

「犬風情が……人間様に牙を剥く、か」

 三条院の怒りの視線が影丸から太吉に移る。

「秘技『蛙落し』!!」

 ちょうど墓石が落ちてきたあたりから刀の鞘を真下に向けて垂直に構えた殿様が勢いよく降ってきた。

「おがぁ!?」

 三条院が苦痛の表情を浮かべる。

「安心せい。致命傷は敢えて避けておる。ま、しばらくは苦痛で動けまいて」

「いいぞ、効いてる!!」

「どうやら奴は攻撃の使い方は学習しても防御の使い方までは学習できておらんようじゃな!攻撃をかいくぐり、耐え続ければ勝機は見える!!」

「影丸、殿様!!」

 唯は二人の側に駆け寄った。

『唯!!』

「大丈夫二人とも!?魂に傷が…」

「あぁ、なんでもないさこの程度」

「伊達に平安から生きておらん。この世界に来てわずか半年の小僧が我が魂に傷をつけるなどとでかい口を叩くでないわ!」


「う…ぬぬ…」


 三条院はユラリと立ち上がった。

「三条院、まだやるか?」

「結果は見えきっておるぞ。このまま麻呂達が主の攻撃をかわし続ければいずれ体力尽きるのは……」


「だったら…」


 三条院の目が鳥のように鋭く光った。

「攻撃を避けきれぬ小娘を狙えばいい!」

 そう言った刹那、三条院の鎌から小さな輪が三つ、唯に向けて飛ばされた。

「ばぁ〜か!いくら唯を狙ったところでオイラが全部受け止めてやる!」

 影丸のでか短刀が三つの輪を同時に断ち切った。

「いいぞー影丸!」

 唯が安心したのも束の間。断ち切られたはずの輪は空中を飛び交いながら再び集合し、唯の体を縛り付けた。

「うああああ!!」

『唯!!』

 影丸と殿様が悲鳴に似た叫びをあげる。

「な、何これ!?痛いし……離れない!」

 苦痛にもがく唯と慌てる影丸達を満足そうに見ながら三条院は嬉しそうに解説した。

「それは隣死の輪。小娘を拘束するだけでなく、輪から発せられる隣死の輝きが小娘の生命力をじわじわと奪い取る!!」

「何だって!」

「私の見立てだと小娘が完全に命を吸い取られるまでにかかる時間は三分だ!あと三分でその娘は我々の仲間となるのだ!」

 隣死の輪に縛られて力を失いながらも、唯は何とかその言葉だけを聞き取った。


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