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第三幕〜食事と幽霊〜

「信じられないよ!あんなことをするなんて!」

「いや〜ッハッハッハ。面白かったなぁ!」

「人の気も知らないであんたって奴は…」

 唯と影丸がいるのはコンビニからだいぶ離れた道路脇の林の中だ。流石に車も少し走っているし、ここなら追いかけてきていたとしてもわからないだろう。

「マジ最悪だよ…」

「いいじゃない。こうして食料も確保できたことだし」

「室町時代では食べ物は盗んで食べるのが基本だったわけ?」

 唯は皮肉を込めて影丸に言った。

「唯は怒りっぽいなぁ。『かるしうむ』ちゃんと取ってる?」

「ご心配ありがとう!にしてもアンタ、いくらなんでも持って来すぎでしょ?あたし一人じゃ食べきれないよ」

「いっぱい食べないと大きくなれないよ?ただでさえ小さいんだし」

「影丸に言われたくないよ」

「オイラはもう死んでいるからいいんだもん」

「ふんっだ。どうせ背の順で並んだときに一番前ですよーだ」

 唯はぷんっと影丸からそっぽを向くと、両手でサンドイッチを持って食べた。

 影丸はしばらくは黙々と食事を取る唯を静かに眺めていた。その姿はどう見ても大人の食べているものを物欲しそうに見ている子供である。

「何?影丸は幽霊なのだから食べれないでしょ?」

「まぁ、そうなんだけどさ。現代の菓子ってやつの味を少し確かめて見たい気もして」

「だからアンタ食べれないでしょ……でも待てよ。アンタって、悪戯で使っているあのでっかいナイフは持てるのよね?」

「うん」

「さっきもお菓子を手で持ってたし……持つことができるなら食べることもできるんじゃないの?」

「さぁ。ここしばらく試したことがないからなぁ…」

「じゃあ試してみようよ。はい、じゃがりこ」

 唯はじゃがりこの蓋を開け、その中から一本を取り出して影丸に手渡す。

「どれ、では『じゃがりこ』とやらの味、確かめさせてもらう」

 影丸はそう言ってじゃがりこを口の中に入れた。

 唯の予想通りならば、影丸の口からじゃがりこが垂直に落下するはずだったが――

 ゴックン。


 唯は影丸がじゃがりこを飲み込む音を確かに聞いた。


「マジで…?」

「…マジみたい」

 影丸本人も相当驚いているみたいだった。

「いつだったか同じような疑問を抱いたときがあって、そこら辺の草で試したことがあった。その時はうまくいかなかったはずなんだけど…」

「やっぱり口から入れるとストーンって?」

「うん」

「じゃあ、何でだろ?」

「オイラもわかんない。いつも驚かしているオイラが逆に驚かされるなんて気に入らないなぁ」

 影丸もまだ事実を認めきれていないのか、その顔は悔しそうというよりかは不思議そうだった。


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