第三幕〜様変わりしたシノビ〜
奇妙な二人旅は奇妙な出来事によって始まった。
「今、何時くらいかな…」
唯はぼそっとつぶやいた。
もともと叔父と叔母への言い訳作りだったつもりが、気がつけば語るにも語れないほど奇妙な旅を強いられている。
いったい、どうしてこんなことになったのだろう。
唯はもんもんと頭の中で考え続けた。
(やっぱり悪いことはするものじゃないってことか。とんだしっぺ返しだよ…)
影丸の後ろを歩きながらため息をつく。
「まだシマを出てから十五分しか経ってないのにもう疲れたの?」
影丸が後ろ向きに歩きながら言う。
「いろんな意味で疲れた。元凶のアンタにはわからないでしょうけど」
「そいつは災難だったねぇ」
皮肉たっぷりに言ったにも関わらず、軽くスルーされる。この軽い身のこなしは本当に昔の人間なのだろうか。唯にはとてもそうは思えなかった。
「まぁ、何百年も生きてりゃあそれなりに身のこなしは軽くなるよね」
「影丸は本当はいつの時代の人なの?そんで何歳なの?」
唯は影丸に出会ってからずっと思っていたことを尋ねた。見た目はまだまだやんちゃ盛りの十歳くらいなのだが……。
「唯は室町時代って知ってる?」
「室町……」
「そ。その室町時代のちょうど織田信長辺りの時代にオイラは生きていた」
「そんな前なの!?よく、あそこのお墓が今まで無傷で残ったものね」
「今まで無傷だったわけではないさ。戦を繰り返し、何度も何度も家は壊された。シマの住人も、ずいぶん様変わりした……」
「………」
「三条院が言っていたように、人間というのはいつになっても欲に溺れる生物だ。幽霊としてこの世界に残った身だから言える。人間っていうのは実に恐ろしい野獣だよ」
「………」
「話が逸れちゃったね。オイラはその織田信長が生きていた頃に別の地方で忍びをやっていた」
「シノビ?」
「忍者のことだよ」
「影丸って忍者だったの!?」
影丸の今の姿からはとても想像ができない職業だった。
「じゃあさじゃあさ、すいとんの術とか、分身とかできたの!?」
「アハハ、唯は漫画の読みすぎだよ」
影丸は愉快そうに大声で笑った。
「つまんないの。じゃあ、何してたのよ?」
「主に隠密活動さ」
ふてくされた顔で言う唯に影丸はその場から消えることで唯の質問に答えた。




