第二幕〜目が覚めて墓地〜
「う〜ん…」
唯はゆっくりと目を開けると、ぼやけた視界のまま辺りを見回した。
「ここどこ?」
仰向けに寝かされていた唯の目の中にはたくさんの星空が映っていた。どう考えても叔父と叔母の家で寝ていたわけではないようだ。
唯はまだ、活性化していない頭をフル回転させて自分がどうしてこんなところで寝ているのかを思い出した。
(皆と遅くまで遊んでて、叔父さん達にする言い訳を考えながら帰ってたよね。そしたら、急に声が聞こえてきて、それを追いかけてたらお墓まで来ちゃって。何だか幽霊に追いかけられていたような…)
「ビンゴ☆」
「うわ!?」
唯の横にはいつの間にか、影丸が座っていた。
「あ、貴方はさっきの幽霊!?」
「そ。影丸って言うんだよ、唯?」
「どうしてあたしの名前を知っているの?」
「簡単なことさ。幽霊は生きている者の考えていることなんて手に取るようにわかるんだ。人間でなくたって犬とか猫でもわかるんだぜ。今さっき考えていたことを当ててあげる。お姉ちゃん、自分はどうして墓地で寝ているのかと考えていたでしょ?」
「う…」
「そう嫌な顔をするなってば。慣れれば楽しいから♪」
「楽しいわけないよ」
唯は不機嫌そうにつぶやいた。
(今、ここにいるのはこいつだけみたいね。隙を見せれば、すぐに逃げ出してやるんだから)
「言っておくけど…」
影丸はまたも不吉な笑みを浮かべて唯に言った。
「さっきお姉ちゃんが嘘泣きをして逃げ出そうとしたおかげで、ここの皆は拍車をかけてお姉ちゃんが逃げ出さないように網を張っている。妙な考えは起こさないことだね」
その言葉に唯は初めて、周囲から感じる異様な気配に気がついた。すっかり戦意喪失した唯は、少し浮き上がらせようとしていた腰を完全に地面に落としてしまった。
「物わかりがいいね」
「半分脅したくせに…」
「嘘じゃないだろ?」
「………」
唯はもう一度辺りを見回した。しかし、どんなに見回しても視線の雨からは逃げられなかった。
「やっぱりあんた達はあたしを殺すつもりなんでしょ?」
「だからそんなつもりは一片もないってば」
「ふん。どうせ殺すつもりはないけど、幽霊にさせるつもりはあるとか言うんでしょ?」
「それもない。前にも言ったけど、幽霊を見れる人がその幽霊に呪われたり、恨み言を言われたりで殺されることはありえない。生きている時によほどひどいめにあった奴くらいだよ、そんなことをするのは」
「………」
「唯を逃がさない理由はちゃんとある。オイラに協力してほしいのさ」
「はい?協力?」
唯は影丸の言っていることの意味がよくわからなかった。
いつの間にか唯の周りにはたくさんの幽霊やら骸骨やらゾンビやらが集まってきていた。彼らの目はさっきまでとは違い、唯に対する警戒から願望の眼差しへと変わっていた。
「わしからも頼む。どうか助けてくれ」
「お願いだよ…」
「さっきのことは水に流すから、どうか…」
幽霊達に頭を下げられ、唯は困惑していた。なぜ幽霊が自分に、生きている人間なんかに頼みごとなんかするのだろう。そもそも死んだ幽霊に、人間に頼まなければいけないほどの悩みがあるとはとても考えにくかった。しかし、このままだとどうしても居心地が悪いので、唯は半ば諦めたように「わかった」と頷く。
「あたしにできることならするから、とにかく協力する内容を話してもらえない?」
唯の返答に幽霊達は皆、安堵の息を漏らしている。
(まだ協力するって言ったわけじゃないんだけどな…)
唯はそう思いながら、チラリと影丸を見た。
「あれは、半年くらい前のこと」
影丸は思い出すように話し始めた。




