第二幕〜ゴーストタウン〜
「ふぅ、やっと終わったぁ…」
影丸はペタリと地面に座り込んだ。
「自業自得じゃろうが。本来ならばお主が片付けるべきものを皆で協力して片付けたのだ。感謝せい」
「ぶぅ…」
影丸はふてくされた顔のままそっぽを向く。
唯も墓の掃除がこれほど手間のかかるものだとは思っていなかった。その上に、これだけの墓の数だ。自分でもよく全て掃除できたものだと思う。
もちろん、幽霊達の協力もあってこそだが。
その中で唯は感じていた。確かに影丸のような、一般的に世に知られているような幽霊もいるけれど、中には非常に家庭的というか日常味の溢れる幽霊もいるのだということを。
「さて、ようやく一区切りついたからそろそろそっちの童に話を聞こうか?」
ゴク。
唯は周囲の幽霊達から向けられる冷たい視線に生唾を飲むことしかできなかった。
「ねぇ、皆してそんな目でそいつを見るのは止めようよ。そんなんじゃ、話せるものも話せなくなっちゃうだろ。ね?」
影丸は唯に可愛らしくウインクをしてみせた。
幽霊達はお互いの顔を見合わせてから、再度唯に顔を向ける。まだ緊張が走っているのは否めないが、少なくとも唯にとってはさっきよりか幾分話しやすくなったはずである。
「それで、君はどうしてここに来たの?こんな時間に一人で肝試し?」
「ち、違うわよ!あたしはただ帰り道を歩いていたらあんた達の声が聞こえたから、だから気になって来ただけよ」
「変な奴だね。何も気にすることなんてないじゃない?」
「気にするに決まってるでしょ?こんな時間にあんたみたいな子供がこんなところをうろついていたら親に怒られるから連れて帰りにきたの!」
「それは君にも言えることじゃない?」
う、と一瞬言葉に詰まった唯だったが、すぐに調子を取り戻して続けた。
「あたしはいいのよ。あんたを連れて帰ることを理由にすれば、少しは叔父さんと叔母さんのお説教を避ける理由になるんだから!」
「ふ〜ん、最近の童も大変だねぇ。オイラが子供の頃はそんなこと考えもしなかったけどさ」
「あんた、今でも十分子供じゃない」
「ん?もしかして、お姉ちゃんはまだオイラを普通の童だと思ってる?」
「?当たり前じゃない」
「そう。じゃあ聞くけど、今時の童は首に短刀が刺さったまま走り回っていても何も思わない?」
「は?」
唯には影丸の言っている意味がよくわからなかった。いくら鈍感な人でもそんな子供を見て何とも思わないわけがない。
「そうだろ?じゃあ、何でお姉ちゃんは未だにオイラのことを普通の童だと思っているの?」
「そ、それは…」
唯は明らかに混乱していた。
あの時点で影丸が幽霊だということには気づいていた。名前だってとても現代の親がつけるような名前じゃない。
「まぁ、いいや。最初に言っとくけどこれは夢でも幻術でもない。おいら達の声が聞こえて姿が見えるっていうことは……」
影丸は一呼吸置いてはっきりと言った。
「霊感を持っている証拠ってこと」
そう言って笑う影丸が唯には妙に恐ろしく見えた。




