第二幕〜刺さってる!〜
「何だこいつは…」
幽霊の一人が不機嫌そうに言う。
「わし達と違って匂いがあるな。懐かしい、人間の頃の匂いだ」
「ということは、この童は生きている人間か?」
「そういうことだろう。それにこの童の服装は、奴の服装とかなり似ている」
「現代を生きる童か!?」
「何と…。頭に思い浮かべば思うとおりになるとは…。今更ながら、この世界の滅茶苦茶さには驚かされる」
「ところで、影丸はどこに行った?」
「うん?そういえばさっきから姿が見えんな。さっきまでそこにいたと思ったが…」
(一体何を話しているんだろう)
唯は怯えながら、幽霊達の会話を聞いていた。
正直かなり意味不明だ。
わし達と違ってとか、人間の匂いとか、現代を生きる童とか。
今のところ、自分をとって食おうというような会話はされていないことは何とか理解できたが、会話の内容が理解できない分、何か突拍子もないことが起こりそうなことは明白である。
そう突拍子もないことが……。
「ぴぎゃあああああ!!!」
唯の悲鳴に幽霊達が一斉に耳を塞いだ。
「なんだなんだ!?」
「急に悲鳴をあげおって。一体どうしたというのだ!?」
「こんな夜更けに五月蝿いぞ!」
「さ、さ、さ、さぁ……」
唯は依然恐怖にゆがんだ表情のまま、幽霊達から見てちょうど背後にあたる場所を震えながら指差した。
幽霊達がなんだなんだと振り返ると……。
『ギャアアアア!!!』
何と幽霊達も含めて大合唱、もとい大絶叫した。
「さ、さ、さ…」
「ささ、さささ……」
『刺さってるぅぅ!!』
彼らが見たのは、幽霊達がさっきまで探していた影丸だった。ただし、巨大な短刀が首に刺さった状態の。短刀はゆうに彼の細い首かそれ以上の太さで、斜め上から一直線に彼の首を貫通していた。
「ア〜ッハッハッハ!!」
短刀で首を貫通された当の本人は、喉も貫通しているにもかかわらずケラケラと笑いながら唯達に向かって走り寄ってくる。
「わ〜い、誰かこの短刀を抜いてくれよぉ〜」
調子に乗った影丸は短刀が首に刺さったまま、唯達の周りを走る。
「ぴぎゃああ!」
「うわあああ!」
「か、影丸ぅ!お、お主何を…。ぎゃあ、こっちに来るなぁ!」
「ハハハハハ!お〜い、誰か取ってくれ〜!」
影丸はさらに調子に乗って走るスピードを速める。そしてその矛先は全体から唯に向かっていた。
「ぎゃあああ、来るな来るなぁ〜!!」
唯は墓石に供えられている水桶や花束を蹴飛ばし、必死に墓地の中を逃げ回る。
「そ〜れそれ。う〜ら〜め〜し〜や〜」
「ひーん、あたしみたいなただの女子中学生を恨んだってしょうがないでしょ〜!」
「そんなことはないぞぉ〜。オイラはお前のような『ただのじょしちゅーがくせー』が好みなのだぁ〜」
「子供のくせにロリコン発言するなぁ〜!」
「ふははははは、逃げきることができるかな〜?」
影丸はあと少しで唯を捕まえるところまで迫ってきていた。




