エクスプロージョン
サブタイがオチしか見えない。
「理解してもらえる文章と覚悟とはなんなのかもっと考えるべきだ」って慈乃に突っ込まれた。
――シキとスプーは一度家に戻り準備をする。狩った魔物の一部を入れるためのバッグ、応急手当セット、シキに持たせる護身用の杖などを用意して家を出る。
――森で魔物狩りを始めて何時間か経った。スプーはいつものように魔物の一部をバッグにいっぱいにしているが、シキはまだ一匹も狩れていない。というよりも、狩る気が見受けられない。
「シキ君……どうして逃がすの?」
スプーの口調は落ち着いているが、怒っているのがわかる。
「えーと……その……なんていうか……生き物を殺すことに抵抗がありますハイ」
シキは目を逸らして答えた。
「だからって逃がしてちゃ慣れることもできないじゃないか」
スプーは呆れたように言う。シキは「ごめん……」とだけ言って魔物狩りを再開した。
――日が落ちて辺りが暗くなりはじめた。だが、シキはまだ何も狩れていない。
「……もう今日は暗いし帰ろうか」
スプーは諦めたようにシキに言った。この日シキは狩ることなく終了……二人は帰路に着く。そこに、何かが飛んでくるのをシキは見た。
「何かこっちに向かって飛んでるね」
「ッ!シキ君急いで逃げるよ!」
シキの話を聞いて空を見上げたスプーは、突然シキを引っ張って走り出す。走り出した方向は町とは真逆だ。
「風魔法使って速度上げて!!」
なんだかわからないが、スプーに言われた通り風魔法『アクセル』を使って加速するシキ。だが、空から巨大な生物がシキたちの目の前に降りてくる。
「な、なんで……!?なんでこんなところに!?」
スプーは驚いている。隣にいるシキも状況が把握できた。そこにいたのは、巨大な体、大きな翼、頑強なうろこ、するどい牙をもったトカゲのような生き物。ドラゴン。
「グギャアアア!!」
ドラゴンが咆哮する。
「しかたない……シキ君は下がってて、ドラゴン相手に手加減して勝てるわけ無いから」
シキは「さすがに今回はない」と言おうとしたが、自信が無かった。スプーに言われたとおり後ろに下がってしまう。
「ハハ、ドラゴンなんて久しぶりだなぁ。前に戦ったのは二十年以上前だし、軍で総力上げてかかったし……シキ君、やっぱ下がってるだけじゃ不安だから君逃げて」
スプーは少し震えた声でシキに言った。シキがそれに答える前に、ドラゴンは襲ってくる。
「ロイヤルフレア!!」
スプーの放った巨大な炎の塊がドラゴンに向かって飛んでいく。だが、ドラゴンの動きを一瞬止めた程度で、ドラゴンには傷一つついていない。スプーは弾き飛ばされ、ドラゴンはシキに向かう。
(なっ!こいつ……シキ君を狙ってた!?)
スプーは風で体勢を整え、もう一度魔法を放つ。
「ファイアァァァストォォォォォォム!!」
シキに飛び掛る直前のドラゴンに炎の渦がぶつかり、ドラゴンは少しだけ横に飛ぶ。
「グギャアアアアアアアアアアアア!!」
「ハァ……ハァ……」
スプーは一瞬で莫大な魔力を消費してしまったため、もう肩で息をしている。しかしドラゴンはほとんど無傷。大きな翼をはためかせ、今度はスプーに風魔法を放った。
(そうか風属性……だから火の魔法じゃ全然ダメージがないのか)
スプーは吹き飛ばされ、近くの木にぶつかる。意識はあるものの、もう動くことができない。ドラゴンは動けないスプーのほうに近づく。
「をりゃあああああああああ!!」
シキの叫び声が響く。ドラゴンは岩を腹に抱えて上に飛んでいた。シキの魔法だ。岩を地面から飛ばすギルドの前でも使った魔法。だがドラゴンは硬いうろこで覆われているためそこまでのダメージが無い。
「スプー!!」
シキはスプーのほうに駆け寄り、光魔法を使ってスプーの傷を治す。
「シキ君……逃げてって言ったし、入ってくるにしても遅いよ……」
スプーは少し皮肉っぽい言い方をした。
「ごめん……動ける?」
「ちょっと今は無理かな。魔力使いすぎちゃった」
そうこうしているうちにドラゴンは岩を叩き落し、空からこちらに向かって飛んでくる。シキたちがいた場所にドラゴンが突撃。だがそこにシキたちはいない。
「な、なにしたの!?」
「ふ、普通に回避しただけだよ!」
シキ自身も驚いている。風魔法で加速して避けようとして、気づいたらドラゴンのお尻が見えるほうに飛んでいたのだ。
「それじゃあスプーはここで休んでて」
スプーを木の陰に隠すように降ろした。
「もしかしてドラゴンを倒す気!?一人じゃ絶対無理だよ!」
「死ぬ気でやれば何とかなるって」
シキは笑いながら答えた。だが、目は笑っていない。
「まさか……!?」
「ごめん、火は効かないだろうし、岩が効いてないとなると、もうアレしかないよね」
シキは言う。
「大丈夫、絶対に死なないから!」
それだけ言って、スプーの前に土の壁を作りドラゴンに突っ込む。右手に火の魔法、左手に風の魔法。どちらも馬鹿でかい魔力を注ぎ込んである。
ドラゴンがこちらを向いたとき、シキは両手を合わせた。
――大きな音がした後、ドラゴンの破片が降る。
「シキくううううううううううううううううううううううううん!!」
慈乃「なんか思ってたのと違う」
藤宮「俺も何か思ってた通りに書けない」
慈乃「不意打ちと自爆がメインの主人公ってどうよ」
藤宮「元イメージがアレだからしかたない」
慈乃「あぁ団長……それはしかたないな」