一章。
「だーかーらー、地毛だっつってんだろーがよぉぉおおぉ!!!!」
罵声と怒号。その日、学園に不釣り合いな騒音が響いた。聖カトリシア学園。極稀に特別な力に目覚めた者だけが入学出来る世界最大規模にして世界唯一の特殊な学園。国籍も学力も財力も関係ない。ただ、力のみが求められる箱庭のような場所に少年は足を踏み入れた。彼の名前は瀬尾 凛。学園からの入学申請書をことごとく無視した挙げ句に拉致同然に連れてこられた前代未聞の問題児だ。そのため、数日前に行われた入学式にも参加していない。
「さっきから、グダグダグダグタうぜえったらねえんだよ!人が黙って聞いてりゃ調子のりやがって!」
嗚呼、そんなことはどうでも良かった。凛を拉致した教師らしき男は学園に入ると同時に消えた。文字通り右も左も分からない学園に放り出された凛は立ち尽くすしかなかった。だか、それがいけなかった。生まれつき燃えるように真っ赤な赤い髪に一年生のネクタイ。この学園の生徒には国籍も学力も財力も素行も関係ない。派手すぎる外見の一年生は当然の如く絡まれることになった。だが、生まれつき赤い髪なのだ。今までだって、数えきれないほどに凛は絡まれてきた。言いがかりをつけられてきた。さらに、もう一つの理由で絡まれることがあったのだ。慣れている。正確に言うなら、慣れすぎていた。元々、短気な凛に耐えろと言う方が酷だろう。
「つうか、髪の色が何だってんだよ!俺の髪がてめえに迷惑でもかけたか!?こちとら、よくも分からねえとこに放り込まれてどうしようもねえ状況なんだよ!察しろや、コラァ!!」
腹がたちすぎて、凛自身も何にキレているのか分からなくなっていた。だが、絡んできた相手も引くに引けない。凄まじい怒気に気後れしながらも凛を睨み付けた。
「う、うっせー!一年のくせに生意気なんだよ!ここは、強い奴が偉いんだ!弱い奴は、」
「強い奴が偉い…?」
瞬間、空気が凍った。にんまりと。あまりに邪悪な笑みを浮かべる凛に少年達は青ざめる。彼等はやっと気付いた。自分達が目をつけた赤髪の少年が如何に危険な存在なのかを。
「いいなァ、そりゃ分かりやすい。つまりは、俺がてめえらより強けりゃいいってことだよな?強けりゃ俺のが偉いんだよな?」
一門一句確かめるように凛は言葉を口にする。けれど、怯える少年達は答えない。それを見て凛は苛立ちを隠さずに舌打ちした。
「聞かれたことには答えろよ。どっちなんだ。」
「確かに強い方が正しいよ。だけど、それが先輩を敬わない理由にはならない。」
それはどこか懐かしい声。その声に凛は目を丸くしながら振り返った。そこにいたのは艶やかな黒髪に人懐こい穏やかな笑みを浮かべた少年だった。背の高い凛の肩ほどしかない身長の少年は呆れたような笑みを浮かべながら静かに言う。
「相変わらずだね、凛。まさか、お前が力に目覚めるとは思わなかったよ。」
「つうか、名前で呼んでんじゃねえぞナオよぉ!」
ギリッと視線に攻撃力があったなら、少年に穴が開くのでないか。そんな鋭い怒気が含まれた凛の睨みをモノともせずに少年は肩をすくめる。そして、心底怯えてしまった年長者に声をかけた。
「本当にすいません、先輩方。ここはどうか穏便に。」
「なっ、」
「嗚呼、でもどうしてもと仰るなら凛は遠慮も手加減もしませんし。俺も全力で捩じ伏せますよ、俺のやり方で。何故ってここは“強さ”が全てなんですから。」
「お前も変わんねえなァ。」
皆本尚輝。凛とは腐れ縁で、数日前に姿を消していた。いや、恐らくこの学園の入学式に出ていたのだろう。この学園に求められる特別な力に目覚めて。
「変わらない?お前に言われたくないよ。何だって、入学早々に問題を起こそうとするの。その脳みそはお飾りか?帽子を被るだけのものか?まぁ、お前の頭の出来に期待はしてないけどね。」
「おーおー、何だ?数日ぶりに会った幼馴染みにその暴言たぁいい度胸じゃねえか。」
「どうでもいいけど、襟掴むのやめてくんない?とりあえず、ついてきて。お前は、俺とペアだから。」
ペア。その聞き慣れない言葉に凛は眉を寄せた。それを尚輝も承知しているのだろう。先を歩きながら、凛に視線を向けずに言葉を口にする。
「この学園の生徒は必ず学年関係なくペアを組むことが決められている。ただし、学園上位五人の中ではペアは組めない。ペアは寮での部屋が一緒。ペア決定権は生徒にある。俺はお前をペアに指名する。凛、お前が嫌ならいいんだ。」
一瞬の間。
「お前は俺を指名するか?」
「ハッ、知るかよ。てめえの勝手にしろ。」
ただ、一つ聞くぜ。
「学園上位五人ってのは何だ?」
しまった。と直感した。表情には出さないが尚輝は自分の軽率な発言を僅かに後悔していた。凛は短気で喧嘩っ早く何より“強さ”を求めている。それは、彼の置かれた境遇が深く関係していた。強くならなくてはならなかった。幼馴染みとして、凛を見ていた尚輝には分かる。言えば、凛は上位五人に喧嘩を吹っ掛ける。無謀だと知らないから。尚輝が力に目覚めたのは、普通よりもかなり早い。一般的に力が目覚めることが多いのは中学卒業の時期だ。それに何らかの理由があるのかは解明されていない。だが、尚輝が目覚めたのは僅か六歳。更に、尚輝の力は珍しいものだった。それでも、尚輝が学園に特別入学せずに“一般的”な入学が出来たのは奇跡だった。それでも、尚輝の両親は恐れた。自分達の愛しい息子を学園に奪われることを。彼等は調べた。恐らく、尚輝は今年入学した一年生の中では最もこの学園のことを知っている。それは、現在進行形で変わらない。彼は、情報収集に長けていた。だから、彼は知っている。現・学園上位五人を。背後に感じる重苦しい気配に眉をひそめながら尚輝は足を止めない。それに業を煮やした凛は小さく舌打ちして肩を掴んだ。
「だんまりかよ、てめえ。」
「俺が素直に教えたらお前は彼等を倒そうとするだろ。」
「ったりめーだ!」
だから、馬鹿なんだよ単細胞。
「入学早々に問題を起こすだけじゃ飽きたらず自殺行為もするつもりか。」
「あ?」
「彼等は、別次元の存在だ。この学園にどれだけの人間がいるのか知らないのか?約3500人だ。それだけの人間の上に立つ力を彼等は持っている。勿論、順位の入れ替わりはあるよ。上位同士が闘えばの話だけどね。嗚呼、まだ言ってなかったっけ?この学園は不定期に希望制の武道大会が行われる。そこでなら闘ってもいいよ、死なないから。でも、今すぐは無理だ。お前がどんな力に目覚めたのかは知らないけど勝てないよ。」
絶対にね。刺すような目付きで尚輝は凛を睨んだ。その迫力に凛は目を細める。尚輝が自分を心配してくれていることぐらい分かる。その気持ちを無視してまで、闘いたいとは思わなかった。それからの二人は上位五人の話は欠片もせずに他愛もない話をしながら、学生寮に向かう。既に、学園側には申請をしていたのだろう。尚輝は寮に入るために必要なカードキーを凛に渡す。
「やっぱ、俺の意思なんて聞く気なかっただろてめえ。」
「本音と建前って大事だよね。ほら、入った入った。」
カチャリと軽い音。開かれた扉の先には見たこともない豪華な部屋が広がっていた。豪奢な装飾が施された家具。最先端の電化製品。凛は言葉を失った。
「ほんの少し人と違う力に目覚めただけでこれだけの待遇が受けられる。不公平だよね、世の中。」
「そんなもんだろ。てゆうか、俺学費払う気ねえけどどうなんの?」
「学費は払わなくていいんだよ。稼ぐんだから。」
「は?」
怪訝そうに自分を見る凛に尚輝は逆に驚愕した。こいつはあまりにも何も知らなすぎる。どうゆうことだろう。この学園の大まかな規則が書かれた書類を読んでいな、
「お前、学園からの手紙は読んだか?」
「読むわけねえだろ、あんな胸糞悪いもん。」
そ う だ っ た 。こいつはこうゆう奴だった。内心で深すぎるため息をつきながら、尚輝は嫌がらせのように詳しい学園についての説明を始めた。勿論、そんなことは露知らず。凛は面倒くさげな表情を隠さないが、黙って聞くことにした。聖カトリシア学園に、通う生徒に学費はない。その代わりに、掲示板に貼られた依頼書の中から依頼を選び受けることが義務付けられている。その謝礼金の一部を学園に学費として出すのだ。依頼を行うのは、基本的にペア。だが、学園が表示した難易度の高い依頼は多数で行うことも許されている。そう、説明を終えれば凛は表情を輝かせた。
「なら、依頼を受けようぜ!」
「ただし、その依頼を受けられるようになるのは入学から早くて半年が経ってからだ。」
「半年…!?」
「当たり前だろ。戦闘経験もない素人に金なんか懸けられるか。凛、お前は喧嘩慣れはしてるけど実践経験はないだろ。喧嘩なんかの経験は、この学園には通用しないよ。」
呆れたようにため息をつき、尚輝は立ち上がる。けれど、何を思ったのかニヤリと口角を上げた。
「でも、今年入学してきた一年生の中に一人“天才”がいる。明日、彼に会いに行こう。もう、依頼を受けることを許可されてるからね。」
それは、凛に自分の力と世界の狭さを知らしめるために尚輝が思いついたことだった。だが、それは予想以上と結果になる。
今まで、出会ったことのない圧倒的な攻撃力。捩じ伏せられたことに驚くよりも感動した。こんなにも強い奴がいたなんて。こいつなら、勝てるかもしれない。そう思った。
自分の名前を呼ぶ緩い声によって氷室凍哉は目を開ける。ゆっくりと上半身を起こせば、自分より大きな後輩が泣きそうな表情でこちらを見ていた。
「どうした、蓮?」
神條 蓮。今年入学した後輩だ。身長193㎝に派手な金髪に紅い目。いるだけで押し潰されそうになるほどの威圧感を持つ後輩はひどく幼かった。
「ひーくん、お腹減ったぁ。後、お菓子なくなっちゃったしぃ。後、依頼受けなきゃだしぃ。めんどくさすぎて死にそう。」
へにゃりと力なく頭を垂れる蓮の姿に大型犬を重ねながら、凍哉は困ったように微笑んだ。そして、幼子にするように頭を撫でてやる。
「ごめんね、直ぐにご飯にしよう。お菓子も後で買いにいこう?依頼も一緒にやろう?俺がいるなら出来るよね?」
「ん~、でもめんどくさいのに代わりなくなーい?」
「蓮はついてくるだけでいいんだよ。俺、結構強いだろ?」
ふわりと少女漫画に出てくる王子様のように甘い笑みを浮かべると凍哉はベッドから出る。そして、クローゼットを開けると制服を二着取りだした。
「ほら、蓮も着替えて。遅刻するよ。」
「あらら、ひーくん知らないの?俺、“上位五人”の一人だから遅刻してもおっけーなんだよ?」
「だからって、故意に遅刻していいわけないだろ。着替えないとご飯やらないよ?」
あらら、それは困る。ゆらりと立ち上がり、寝室から出る凍哉の後を追う。そして、備え付けられている高価な椅子をひき、腰を下ろした。その膝の上に音もなく飛び乗る黒猫。足元にすりよる子犬。ソファの上で丸くなる白猫。部屋の中にいる数匹の動物に蓮は慈しむような目線を向けた。この動物は蓮か拾ってきた。蓮は動物が好きだ。自分を必要とするか弱い存在が大好きだ。だからこそ、彼は入学式の次の日に行われた武道大会に飛び入りで参加した。この愛しい存在を守るために。この時に当時No.5だった凍哉は蓮に負けて、彼のペアとなった。凍哉の同級生達は皆一様に驚愕する。自分を倒し、新しくNo.5となった蓮と組むなんて正気の沙汰とは思えなかった。だが、凍哉は自分の判断が間違っているとは思っていない。
「蓮、ご飯出来たから早く食べな。子猫ちゃん達もご飯、食べちゃいなさい。」
にゃあ。そっと高価な絨毯の上に子猫達のエサを置けば、一目散に駆けてくる。一匹だけ蓮の膝の上を占領している黒猫はつんとそっぽを向いたままだ。この黒猫はひどく気位が高く、蓮以外からエサを食べない。それを分かっている凍哉もこの黒猫の分は置かずに、蓮に渡した。毎度のことだが、蓮はそれがひどく嬉しかった。他の愛しい子達も蓮を一番に思っている。それでも、蓮が認めた氷室凍哉という存在も受け入れているのだ。喜ばしいことだ。けれど、嬉しくはない。
「クロはほんといい子だよね~。俺、お前がいちばーん好き~。」
「にゃあ。」
当然でしょう?私は貴方の一番ですもの。人間の女ならば、そんなことを言いながら鼻で笑っていたであろう姿が目に浮かぶ。蓮に唯一名前をつけられている黒猫はすまし顔で与えられたエサを口にした。
「そういえば、昨日尚輝君に何か言われてなかった?」
黒猫と戯れながらも朝食を口にしている蓮に注意しながら、不意に思い出したことを凍哉は口にした。だが、当の本人は不思議そうに首を傾げる。
「え~?そんなことあったっけ?」
「忘れるってことはどうでもいいことってことじゃないかな。」
神條蓮は基本的に興味のないことに対して全くの無関心だ。その度合いを出会って数日の凍哉が知らないのは当然だ。だから、彼等が朝食を食べ終え、上位五人専用の特別寮から出て直ぐにあきらかに苛立っている凛と尚輝と鉢合わせたのは必然だった。
「神條君、約束の時間を30分過ぎてますが言いたいことはありますか。」
「何で、なーくん俺を待ってんの?」
「ナオォ、こいつぶっ飛ばしていいよな!?」
「止めろ、単細胞。神條君はこうゆう奴なんだきっと。」
どうやら、大したことだったらしい。凍哉は慌てながら呆れたようにため息をつく尚輝に言った。
「すまない、尚輝君。何か約束をしてたんだね?俺が聞いとくべきだった。」
「いえ、氷室先輩は悪くありません。これからは、ちゃんと保護者を通します。」
「悪いが、そうしてくれ。」
そうして、お互いに顔を見合わせため息。そんな保護者を見て蓮は頬を膨らませた。
「ちょっと~、ひーくんとなーくんなんでため息~?覚えてないんだもん、仕方なくね?」
「んなわけねえだろーが、てめえ!!」
「はぁ?つうか、お前誰?知らないんだけど。」
「コラ、また蓮はそうやって酷いことをいう。」
「あ、神條君は間違ってませんよ。」
尚輝の制止に凍哉は首を傾げる。凍哉だけでなく、ほとんどの生徒は同級生の一部と上位五人に一度でも入った生徒以外のことは知らない。ましてや、今年入学したばかりの一年生のことなど知るはずがなかった。そのため、凍哉は蓮が気に入っている尚輝が連れてきた凛を“友達”だと思っていた。だが、どうやら違うらしい。
「じゃあ、彼はなんだい?」
疑心。そんな感情を笑顔で覆い隠し、凍哉は尚輝と凛を見つめた。凍哉の感情に気付いているのかいないのか尚輝も穏やかな笑みを浮かべなから言葉を口にする。
「神條君に紹介しようと思いまして。こいつは、瀬尾凛。俺のペアです。神條君、この単細胞馬鹿に上位五人の力を見せてあげて下さい。」
「は?」
何でもないことのようにさらりと言われた言葉に凍哉は目を見開いた。冗談かと思ったが、目を爛々と光らせ蓮を見る凛に本気だと悟る。それが、如何に無謀なことか知らないから。
「え~、やだよめんどい。てゆーか、俺へーわ主義だからぁ。無駄な争いはしないし。」
「そんなこと言って本当は負けんのがこえーだけなんじゃねぇの?図体だけでかくてなっさけねーな!」
「はぁ?」
安い挑発だ。子供じゃなければ、流せるほどに。だが、蓮にとっては充分すぎた。
「なーくん、何こいつ~。ちょーうざいんだけど。ほんとに潰していいの?」
「いや、俺がやるよ。」
だからこそ、凍哉が前に出た。むっとしたように自分を見る蓮に困ったように微笑みながら出来るだけ優しい声音で言葉を紡ぐ。
「だって、蓮は手加減しないだろ?学園内で怪我人なんて出したら罰則だよ。それは嫌だよね?」
「なんで、俺が罰則なの?喧嘩売ってきたのこっちじゃん!」
「買う必要がないからな。それにさ。」
にっこりと。凍哉の浮かべる笑みの質が変わった。
「俺に勝てないようじゃ、蓮に勝てるわけないしね?」
あきらかな挑発。凛が放った安っぽい挑発とは違う実に鮮やかなものだ。それに気付いたのは、残念ながら尚輝だけだったのだが。あっさりと凍哉の挑発に乗った凛は跳ねるように地面を蹴る。二人の力を使わないまるで喧嘩のような戦闘を離れたところで見ながら蓮は尚輝に言った。
「ねー、なーくん。あいつの力ってなーに?」
「見てれば、直ぐに分かりますよ。」
「あらら、ほんとだ。」
先に力を使ったのは凛だった。真っ赤な焔で両手を包むと拳を振り上げる。凛の力は“炎を操る”ことが出来るものだ。それを見て凍哉は驚いたように目を見開き一瞬だけ固まる。凛の攻撃は当たるかと思われた。だが、
「じゃあ、あいつ負けるね。」
興味を失ったようにあくびをしながら蓮は呟く。
「っ!!?」
凛の炎は凍哉に当たる前に消え失せていた。
「悪いけど、君に負けられない理由が出来た。俺は“炎を操る”力を持つ子には負けられないんだ。だって、負けたら蓮が弱いみたいだろ?」
ピシッと鋭い音をたて、空気が凍る。凛の両手はいつのまにか凍りつき、封じられていた。
「炎が氷より強いなんて大間違いだよ。少なくとも、俺はそこらの炎なんかじゃ燃やせないし溶けない。」
「…!」
「恥じる必要なんかない。これでも、元・上位五人の一人だからね。」
そう言って、凍哉は自然に凛の頭に手を置いた。元々、世話焼きのお兄ちゃん体質の凍哉にとっては何の疑問もない動作だったのだが。凛は違う。パッと頬を赤くすると眉を寄せて叫ぶ。
「餓鬼扱いすんな!」
「瀬尾君、俺は先輩で君より強いんだよ?ため口は良くないよねぇ。」
「~~~!!!」
ギリッと唇を噛み、凛は凍哉を睨む。それを余裕の笑みで流し、凍哉は歩き出した。
「じゃーねー、なーくんまたね~。」
緩い声音と表情で蓮は尚輝に手を振り、凍哉の後を追う。残されたのは、笑いが止まらない尚輝と両手が凍りついたままの凛だった。