Madness
やっとたどりついた・・・
楽しい時というものはあっという間に過ぎてしまい
肉も酒も残り僅かとなり宴は終焉に向かおうとしていた。
「三宅ー、たんと食ったかぁ。」
「言われなくても食ったよ。というかお前酔いすぎ。」
酒に対する免疫があまり無いくせに飲むのだから
この男には困ったものである。
「おっ、最後の一枚もーらい。」
と笹倉が炭で黒くなってしまった金網に乗っている最後の一切れを
他の者の目を盗んで素早く箸で捉えた刹那、それは起こった。
万人がよく言う台詞で申し訳ないがその言葉がしっくり来るので
そのまま使わせてもらう。
その瞬間はあまりにも突然すぎて何が起こったか分からなかったんだ。
「っいって・・・・・・」
つい今の今まで肉を掴んでいた割りばしが吹き飛び
笹倉は自らの腕を押さえ軽く呻いた。
ゆっくりとその手を開くと薄く血が滲んでいた。
「なんだ・・・。」
俺はどうして笹倉の腕にいきなり傷が出来ているのか
理解できずに本音がそのまま口をついて出た。
「・・・・・ニク。喰ワセロ。」
近くからおぞましい声がしなかったら俺はまだ
今の状況に目を向けることはできなかっただろう。
周りにいた連中には表情というものがなかった、
否、あるにはあった。
だがそれは普通の人間がする顔とは思えないまるで
殺人者か今にでも死にそうなやつの顔のようにみえた。
そいつらはもう以前のやつとは違うように感じた。