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穴  作者: カトーSOS


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1/1

穴



穴があった。


昨日まではなかった。


人が一人、入れるくらいの穴だった。


男は覗き込んだ。


底に光が届いていない。


高性能のライトで照らしてみた。

壁はライトの光に照らされている。

だが、やはり底は見えない。


男は石を落としてみた。


耳を澄ます。


音が戻ってこない。


今度は鈴を落としてみた。


やはり、音は戻ってこなかった。



次の日、穴のそばに女が立っていた。


「危ないですよ」


男は注意した。


女は振り返り、ニコッと笑った。


そして、そのまま穴へ一歩を踏み出した。


「あっ……」


男は穴に駆け寄った。


穴の中を覗き込む。


そこには、真っ暗な闇があるだけだった。



その次の日。


穴のそばに家族が立っていた。


父親。

母親。

そして、抱っこされている子ども。


男は嫌な予感がした。


「そこに近寄らないで」


男は声をかけた。


すると、母親が穴に飛び込んだ。


続けて、父親も飛び込んだ。


子どもだけが、その場に立ち尽くした。


男は子どもを保護しようと駆け寄った。


すると子どもは、


「キャッキャ」


と笑いながら、穴の中へ飛び込んだ。



男は穴に蓋をした。



翌日。


穴は大きくなっていた。


蓋は落ちてしまったようだった。



男は穴の周りに柵を作った。



翌日。


穴は柵より大きくなっていた。



男は立て札を立てた。


『危険。近寄るな』


翌日。


穴は立て札の場所まで大きくなっていた。



最初は、人が一人やっと入れるくらいだった。


でも今は、自動車でもすっぽり落ちそうだった。



翌日。


人が手をつないで、穴の周りに立っていた。


十人?


二十人?


男は数えていない。


人々は手をつないだまま、時計回りに穴の周りをぐるぐる回っていた。


一人が足を踏み外した。


その人は、隣の人の手を離さなかった。


隣の人も、その隣の人の手を離さなかった。


手をつないだまま、


順番に、


穴へ落ちていった。



次の日。


誰もいなかった。


。

突然、男は分かってしまった。



穴のそばに男は立つ。



そして、男は一歩踏み出した

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