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迷宮レビュー☆2につきまして  ~迷宮建設部は今日も炎上中~

作者: 日御碕 出雲
掲載日:2026/08/31

誰がダンジョンを作り、罠を張り、宝箱を残すのか? 

そんな疑問を基に1本書いてみました。


第6作目。

迷宮社アースシェーパーの会議室には重苦しい空気が漂っていた。


壁には魔水晶より映し出された冒険者ギルドのレビュー魔導板の画像が浮かんでいる。


「白銀の竜哭迷宮、平均評価★★☆☆☆2.1……」

人事課長のオーガが震える声で読み上げた。


ドワーフ親方バッカスが机を叩く。

「ワシらドワーフ42人が3年かけて削った芸術的回廊だぞ!」


ダークエルフの魔術師ドリスは表示をスクロールした。


---------------------

・一本道でつまらない。

---------------------


「一本道?」

バッカスが首を傾げる。

「全36分岐なんだが…」


のちに調査すると、冒険者たちが偶然隠し通路を発見し、一直線でボス部屋へ到達していただけだった。


続いて別のレビュー。

---------------------

・宝箱の中身がほとんどゴミだった。

・迷宮の中に秘宝館があった、有料だった。

---------------------


オーガがさらに青ざめる。

「あっ、まさか…あいつら…」


「お前が採用したヤツらか…」


宝箱を点検すると、中にはゴブリンの私物がぎっしり詰まっていた。


さらなる調査の結果。

配備ゴブリンたちが宝物を勝手に持ち帰り、自室を豪華にリフォームしていたことが判明。

しかも部屋の入口には、

『第3階層ゴブリン長老 私設秘宝館』

という看板まで掲げられていた。


オーガは報告書を閉じた。

「採用面接で『協調性があります』って言ってたんですがねぇ……」


続いて別のレビュー。

---------------------

・魔法罠が陰湿。

・性格が悪い。

・作った人、絶対彼氏がいない。

---------------------


「ムキーっ!悪かったわね~!あ~そうよ、適齢期を300年過ぎて彼氏の一人もいないわよ」

浮かぶ画像に向かって、ドリスがファイヤーボールを投げつけ暴れ出す。


□□□□□□□□□□□□□□□


そんなある日、


「なんでだあぁぁぁ!!」

オーガが耳を塞ぐ。

「まだ会議始まって30秒ですよ!?」


「見ろこれを!」

魔水晶より写しだされたのは競合他社の迷宮レビューだった。

---------------------

紅蓮の溶岩洞  平均評価 ★★★★☆ 4.9


・最後まで飽きない。

・ボス戦が熱い。

・動線が素晴らしい。

・制作者の愛を感じる。

・人生最高の迷宮だった。

---------------------


会議室が静まり返る。

そして自社レビュー。

---------------------

白銀の氷回廊  平均評価 ★★☆☆☆ 2.3


・階段が見つからない。

・ミミック多すぎ。

・ゴーレムが内職していた。

・一本道。

---------------------


「一本道じゃないって言っとるだろうがぁぁぁ!!」

バッカスが絶叫した。


机が割れた、椅子も割れた。

なぜか隣の棚も割れた。


「落ち着いてください!」

「また36分岐が一本道扱いされたんじゃぞ!?」


「利用者の体験として一本道で踏破したなら一本道なんですよ!」

「そんな顧客第一主義の迷宮があるか!!」



「紅蓮……紅蓮迷宮工房か…」

ドリスが目を細める。


アースシェーパーのライバル組織。

この業界では知らぬ者がいない。

しかも最近やたら人気だった。


「何がそんなに違うんでしょう」

オーガが首を傾げる。


「調査だ」

バッカスは立ち上がった。


□□□□□□□□□□□□□□□

後日。

三人は変装して冒険者として潜入した。


紅蓮迷宮工房の最新作。

『紅蓮の魔王城迷宮』


入口に入った瞬間。

「おおーっ!」

オーガが感動した。


壁が光る。

荘厳な音楽。

不気味な霧。

雰囲気が完璧だった。


バッカスが悔しそうに呟く。

「予算いくらだこれ」


さらに進む。

道は一本だった。

だが不思議だった。


右を向きたくなる場所で右へ曲がり、

左へ進みたくなる場所で左へ曲がる。


迷わない。

看板もない。

地図もない。

なのに迷わない。


ドワーフの勘が警鐘を鳴らした。

「これは危険だ」

「何がですか?」


「設計が上手すぎる」

バッカスは少し震え始めた。


「……迷路は?」

「ありませんね」


「隠し通路は?」

「ほぼ無いです」


「では探索要素は?」

「ありませんね」


「でも面白いです」

オーガが言った。


バッカスは壁を殴りそうになった。


続いて罠。

ドリスは警戒した。


しかし。


落とし穴。

火炎罠。

毒矢。

シンプルな物ばかり。


「なんですかこれは」


「普通ですね」

「普通だな」

「普通です」

三人が同時に言う。


ドリスは混乱した。

頭の中で何かが崩壊する音がした。


自分の迷宮には、

転移罠。

幻覚罠。

逆さ重力罠。

人格診断罠。

偽出口。

偽偽出口。

偽偽偽出口。

そして偽偽偽出口だと思わせて本物の出口。


完璧な芸術だ。

それなのに。 評価は2.3。


なぜだ。

本当に、なぜだ。



最深部。

魔王との決戦。

魔王は堂々と名乗った。

「我が名はヴァルガード!」


冒険者たちは盛り上がる。

派手な必殺技。

ちょうど良い戦闘時間。

ギリギリの勝利。

歓声。

拍手。

感動。


帰り道。

三人は無言だった。


酒場へ直行した。


オーガがジョッキを空ける。

「負けましたね」


「負けたな」


「負けました」

沈痛な空気。


すると隣の席から声が聞こえた。

「あー忙しい忙しい」

振り向く。


そこにいたのは。

紅蓮迷宮工房のスタッフだった。


「あ?」

「あっ」


双方が固まる。

同業者。

即座に理解した。


「アースシェーパー…」

「紅蓮迷宮工房…」

火花が散る。


相手側の建築主任が笑った。

「そちらのレビュー見てますよ」


バッカスの拳が震える。

「何だと」


「面白いですよね」

「ケンカ売っとるのか」


「いや本当に」

相手は真顔だった。


「うちでは無理ですよ」

「何がだ」


「迷宮で内職をしているゴーレム」

「……」


「宝箱に住んでるスライム」

「……」


「フロアボスのドラゴンが有給取って不在の話」

「……」


「毎回レビュー欄が祭りじゃないですか」

バッカスたちは顔を見合わせた。


今度は相手がため息をつく。

「うちは評価高いですよ」

「うむ」


「でもレビュー内容、全部同じなんです」

三人が耳を傾ける。


・バランスが良い

・王道で面白い

・安定している

・また来たい


「良いじゃないですか」

オーガが言う。


相手は首を振った。

「7年間ずっと同じです」

「……」


「誰も笑ってくれないし、ネタにもならない」

「……」


「酒場ではアースシェーパーの迷宮の話ばかりです」

バッカスたちは固まった。


そういえば。

自分たちのレビューは。


・宝箱が歩いて逃げた

・ボスよりスケルトンの方が装備がゴージャス

・ゴーレムが副業で陶芸してた

・罠作った奴は性格が悪い


確かに印象には残る。


相手の魔法罠主任が苦笑した。

「うちは高評価です」

「うむ」


「でも皆さんの方が楽しそうですよ」

「……そうか?」


「ええ」


帰り道。

バッカスたちは少し考えた。


評価。数字。ランキング。

もちろん大事だ。


だが。


ドリスが携帯型魔水晶版を見せた。

新レビューだった。


------------

・また宝箱にスライム入ってた。

 やっぱりいた。笑った。

 次も行く。 星は二つ。

-----------


決して高くない。

だが。

三人は笑った。


「またアイツか」

「教育しなきゃですね」

「いや人気者だから残すか」


その翌週。

新たなレビューが投稿された。


----------------------

・紅蓮シリーズの迷宮は完成度が高い。

・白銀シリーズの迷宮は意味が分からない。

・だから両方行く。

----------------------


会議室でレビューを読んだバッカスは満足そうに腕を組んだ。

「よし」


「何がです?」

とオーガ。


バッカスはニヤリと笑う。

「意味が分からないなら、まだ伸びしろがある」


ドリスも頷く。

「次はもっと意味が分からない迷宮を作りましょう」


オーガが青ざめた。

「はぁっ、迷宮の優秀な人材集めなきゃ…」


こうしてアースシェーパーは、ライバルに嫉妬しながらも、いつも通り少しだけおかしな迷宮作りへ戻っていくのだった。

-------------------------

今回は

ドワーフの通路や広間を作っている職人さん。

ダークエルフの罠系のギミックを設置する職人さん。

鬼のダンジョン内モンスター人員をあてがう人事担当さん。

の3人が出てくるコメディーにしよ~っと軽いノリで書きました、毎回結末決めずに書き出すので、話を着地させるのに苦労します。(起承転結って難しい)

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