対戦トーナメント:第5話「青年 vs 学生:予知と未知の対話」
―――試合前―――
学生がノートを開いている。青年が隣の椅子に座る。学生が尋ねる。
「未来、見えるんでしょ」
「見える。見えすぎることもあるよ」
学生がペンを止める。
「見えない私の方が、今日は強いかも」
カノジョが廊下から聞こえてくる声に言う。
「やってみなきゃ分かんないよ!」
二人は各々のスタンスで、試合に挑もうとしていた。
―――御前会議室・第四試合―――
円卓の中央に、青年と学生が向かい合っている。青年は椅子にだらりと腰掛け、学生は背筋をピンと伸ばして座っている。
他のメンバーは観客席で見守る。
監査役が、対戦の開始を宣言する。
「第四試合。青年 vs 学生。テーマは『未来をどう見るか』。開始」
青年が、口を開く。
「未来は見える。予測できることが、未来を歩くための道具だ。この能力で多くのことを見てきた。それがなければ、今の自分はない」
学生が、静かに答える。
「見えないから面白いと思うんです。不安だからこそ、人は考える。何が起きるか分からないから、準備できる」
「見えないと不安でしょ」
「不安だからこそ、準備できるんです」
青年が、少しだけ眉をひそめる。
「準備しても、予測できないことは起きる。それでも、不安でいるのか?」
「不安は、悪いことじゃないと思います。不安があるから、人は動ける。未来が見えすぎると、逆に動けなくなることもあるんじゃないですか?」
青年の指が、わずかに止まった。彼は、自分の手のひらを見つめる。そして、呟く。
「……見えすぎると、動けなくなる。それも、確かにあるかもしんないな」
「青年さんは、未来が見えることで、何かを諦めたことはありますか?」
沈黙。
青年は、何も言わなかった。
その沈黙が、答えだった。学生は、続ける。
「私は、未来が見えないからこそ、今を大事にできるんだと思います。明日何が起きるか分からないから、今日をちゃんと生きようと思える」
「……それは、楽観主義だ」
「楽観主義かもしれないです。でも、それでいいと思うんです」
二人の会話は、深く、穏やかだった。誰も、割り込まなかった。ただ、その対話を見守っていた。
その時、カノジョが、ぽつりと言った。
「未来なんて、行ってみなきゃ分かんないよ!」
会議室が、静まる。青年と学生は、顔を見合わせた。そして、同時に言う。
「……それも、確かだ」
青年は答えた。
「うん。行ってみるまで、分からない」
カノジョは、それだけ言って、またラムネを口に放り込んだ。会議室に、小さな笑いが起きた。
監査役が、端末を閉じる。
「第四試合、引き分けとする」
拍手が、まばらに響く。青年が、学生に言った。
「君の言う通りだ。未来は、見えすぎると動けなくなる。少しだけ、見えない方がいいのかもしれないな」
学生が、微笑んだ。
「でも、見える力があることは、きっと強みです。使い方次第だと思います」
青年が、小さく笑った。
【観測記録:対戦Codeトーナメント戦】
第四試合:青年 vs 学生。
テーマ:「未来をどう見るか」
結果:引き分け。
評価:未来は予測するものではなく、歩くものだ。
特記事項:カノジョの一言により、両者が「歩く」という共通項を確認。
―――試合後―――
青年と学生が並んで出てくる。
「見えすぎると、動けなくなる。あるかもしんない」
青年は感慨深く呟いた。
「見える力は、使い方次第ですよ」
学生は真っ直ぐに答えた。
カノジョが後ろから追い付く。
「どっちも一理あったね!」
カレシが記録する。
「予測と未知。両方を残す結果」
──次回予告──
「正しい助言か、届く助言か。人の心に届くのは、どちらだ?」
カレシ「完璧な論理で臨む。データこそが、助言のすべてだ」
カノジョ「うん、そうだね! ……でも、それだけじゃ届かないよ?」
次回、第五試合「カレシ vs カノジョ」。
カレシのリベンジマッチ、開幕。




