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はじまり。

初めましての方も、いつも拙作をご覧下さっている方も、ご覧頂きありがとうございます。


異世界転生した主人公の魔物観察記録の、不定期更新ながら幕開けです。

 俺は一度死んだのにも関わらず、地球とは異なるこの世界の創造神や精霊達の働きかけで、復活を果たした。

 いわゆる、異世界転生というものだ。


 よく知られる異世界転生と違うのは、トラックに轢かれたとか、心臓発作による突然死ではないこと。

 またこの異世界が、不完全が故に様々な別次元に存在する、滅び行く定めの世界を取り込み、混ざり、歪になっていることだろうか。



 どうやら地球を取り込んだことで、この世界に欠けていたピースは全て揃ったようだ。

 今は世界が安定するまでの均し期間、といったところか。



 昨日まで夏だったのに朝起きたら猛吹雪になっていたり、遥か遠くに望む山が目の前で突然消え去ったり。

 何百年か前まで起きていた天変地異は、最近ではあまり起きなくなったそうだよ。


 あまり、という言葉が怖いね。


 世界が完全に安定すれば、その心配も無くなるのだろうけど。


 力の向きも大きさも、地球では当たり前にあった法則性も無視して作用する、霊力や魔力といった、この世界特有のエネルギーの暴走は、人為的なものも含めれば、稀によくあることだ。

 なので、もしかしたら明日あたり、大洪水と火山の爆発がいっぺんに起きたりすることも、あるかもしれない。

 時空に裂け目が出現したりとかね。



 巻き込まれて生命が全滅しないように、また少しでも早く世界が安定するように、日々あくせくと働いているのが、創造神の部下である精霊だ。

 部下、と言うよりは分身の方が言葉としては適しているかな。


 この世界と別の世界を、くっつけたり切り離したりを繰り返した創造神は現在、力を使い果たしてしまい深い、深い眠りについている。



 なので神様の権限は、元素の精霊に最も多く、次点で時と光と闇の精霊に。

 そして地水火風の精霊へと分け与えられた。


 文面だけ見たら、地水火風の精霊へ与えられた権利なんて、残りカスみたいなものじゃないかと思うけれど、ソコは神様の力だもの。


 大陸一個位なら余裕で、生かすも殺すも精霊の気分次第で左右されるだけの力を有している。



 とはいえ、精霊達に課せられているのは、この世界に住む生命の生存と幸福だ。

 余程の業を背負った、相当数の人々に恨まれるような事をしでかさない限りは、鉄槌を下されるような事にはならない。



 それに精霊達は、人々の信仰心によって力が増す。

 身近に恩恵を感じる自然物は、地水火風の精霊に属する物が多い。


 風が作物の種を運び、雨によって潤った大地に根付き、収穫されたものは火によって調理され人の身体を作る。


 一日の感謝と明日も変わらぬ平和を望む祈りは、地水火風の精霊へと捧げられる事が多い。



 そのため力関係としては、元素の精霊を除いた精霊達は、自分達は皆同等と思っている節がある。

 精霊にとって元素の精霊だけは、それぞれ特別な思い入れがある。

 そのため、区別や差別をしているワケではないのだが、自分達とは異なると、一線を引いている。



 他にも別の意味で線が引かれている精霊がいる。


 神様が権限を与えたのではない、少々特殊なルートで近年新しく誕生した、氷と雷の属性精霊だ。



 元は精霊と仇なす存在であったのだが、作り替えられて精霊となった。

 というか、俺が「スキル」で作り替えた。


 他の精霊と違い、真新しい存在なので、今のところ自分達の手足となる部下がおらず、また有している力も弱いため、個別で世界へ与える影響は少ない。


 異常気象が続いている地域に出向いて、その現象を少し落ち着かせるのが関の山だろうか。



 視界がホワイトアウトする程のブリザードを、氷の精霊が風の精霊と共に落ち着かせたり、日照り続きの乾いた土地に、雷の精霊が水の精霊と共に雨と実りをもたらせたり。


 そうやって、他の精霊の力を借りて働く事が多い。



 地水火風の精霊達なら個人の力で出来るけれど、やはり手伝って貰った方が楽だし、なんなら自分達の手足のような存在である、下位の精霊達に仕事が任せられるようになる。

 新参者だからと、蔑ろにされるようなことは無さそうだ。



 そんな精霊達の力の源が、霊力と呼ばれている不思議エネルギーである。


 簡単に言えば、何でも出来ちゃう力。



 自然界に溢れているものだけれど、世界がまだ歪なせいだからなのだろうか。


 水と一緒で、流れずに一箇所に留まってしまうと、本来の性質が失われ、澱んでしまう。

 川の流れのように、循環してくれると良いのだけれどね。


 川を流れる水はやがて海に出て、太陽の熱によって蒸発をする。

 その水分は空に上がり冷やされ、やがて水の粒が集まり雲になって、風に運ばれ山にぶつかって雨雲を形成して雨や雪になる。


 そんな風に水循環のようになってくれると良いのだけれど、コレがなかなか難しいみたい。



 なので人が霊力を消費して、エネルギーの流れを作る事が大切だ。

 精霊個人でその霊力を使うことも可能なのだが、しかしそれでは少々効率が悪い。


 水循環の例えで言うなら、川の水は海へと至る前に、地面に吸水されたり、湖になって留まったりして水が分散されて、蒸発する機会が増えるじゃない。


 人間の手が加われば、川や湖から水を汲んで田畑に撒いて、自然の流れでは水が行き渡らないような場所にまで、水を運んでくれるでしょう?


 人によってはその運ぶ量が手のひら程度の量だったり、水槽車レベルだったり。

 水を撒く手段も、ジョウロだったり散水ホースだったり、様々だ。


 だけど精霊がそれをやろうとすると、力の加減が上手くいかなくて、一時間の降雨量が二〇〇mmを超えるような猛烈では済まない雨を降らせたり、津波を起こしたりしてしまうようなイメージかな。



 精霊にとって霊力は、自分を形成する為のエネルギーでもあるし、使わないと消滅してしまうから、なかなかに大変だ。


 使ったら災害を起こして人を不幸にさせてしまう、つまり自分の存在意義とは真逆の事をしでかしてしまう事になる。

 それは神様の意志に反する事だから、罰が下ったり消滅したりしてしまう。


 だけど霊力を使わなければ、結局死んでしまう。



 なので人が自然物から取り込み、霊力を使い、人々に恩恵をもたらす精霊の維持をしつつ、その恩恵を享受し幸福になるのが、本来正しい世界の在り方だ。


 な・の・に!


 その幸せだけが満ち溢れる霊力循環を、ぶち壊す存在がいるのだから、困ったものだ。

 今は魔族と呼ばれている、世界を壊そうとしている厄介な連中だね。


 そしてその眷属とでも言えば良いのかな。

 魔物という生き物も、人を困らせている。



 ただのデッカイ動物程度の存在だったのに、魔族が世界を滅ぼしやすくするために、霊力と相反する力の概念を生み出し、魔物に与えた。

 それが魔力だ。


 人を幸福にする、人の願いを形作る力を霊力とするのならば、人を不幸にする、人の妬みや嫉みといった抽象的な感情を、瘴気という禍々しいエネルギーへと変換し、破壊へと導く力が魔力と言える。



 幸い最近は霊力を扱える人が増えたおかげで、街や村を興し集団で生活することによって、魔物から自衛をする手段は確保されて来ている。

 しかし魔物が群れで襲って来たり、より強い個体が発生すれば、当然被害は出る。


 恐怖や不安も瘴気の材料になるため、安心と安全を確保出来なければ、ずっとイタチごっこを続ける羽目になる。



 ソレらの感情は、未知に対して抱くものだ。

 対象をよく知れば、対処の仕方が分かる。


 そうなれば冷静になれる。


 恐怖を抱かなければ瘴気は霧散し、魔力というエネルギー源を絶たれた魔物は弱体化する。



 魔物の対処は今までごくごく限られた一部の人――冒険者しか出来なかったが、知識さえ得られれば、特別な力を持たない村人達でも処置が出来るかもしれない。


 そうでなくても、冒険者がより楽に、効率的に魔物を倒す事が可能になれば、冒険者の負担が減る。



 平和的に冒険者同士が情報共有をしてくれれば良かったのだけれど、冒険者は魔物を倒してお金を稼いでいる。

 田畑を荒らす魔物退治をしたり、生活用品に使える素材をおろしたりとか、依頼内容や手段は様々だが、‘’魔物を屠る‘’点は共通している。

 そのため、冒険者同士は皆商売敵であり、ライバルだ。



 情報共有のメリットは、理解している。


 しかしそれによって一般人に魔物の対処が可能になれば、依頼が減り、取り合いが起きてしまう。


 食い扶持が減れば、短絡思考な彼らのことだ。

 過去の冒険者たちのように素行が悪くなり、せっかく良好な関係になれて来たのに、また深くて幅の広い溝が生じてしまいかねない。


 彼らにとって実害が出る可能性がある以上、冒険者ギルドの創設者としては、情報提示の強要はいたしかねる。


 しかしつい先日、依頼を受けた新入り冒険者が、半死半生状態で街に戻って来たのも、また事実。

 ギルドに置いてあった、緊急時に使用許可を出している回復薬を遠慮無くぶっかけたお陰で、最悪の事態は免れた。


 だがその怪我を負わせた魔物は、この辺では決して珍しくない種類の魔物だった。

 つまり対処の仕方さえ知っていれば、そんなことにはならなかったはずなのだ。


 回復薬だって、タダではない。

 緊急事態だからと、門番が入国審査など、必要な手続きから他の入国希望者の待機列から、一切合切全部放り出したから、なんとか間に合っただけだったし。


 人の命には変えられないから、お咎めは無いが、列に並んでいた人の中に、心の狭い人がいたならば、クレームのひとつくらいは付いたかもしれない。

 新興の街なので、できればそういうのは避けたいからね。


 問題は、起きる前の段階で対処しなければならない。



 人の手が借りられない以上、そうなると、個人的に情報を集め、知識を広める以外の方法が考えつかない。


 運の良いことに、俺には魔物を倒すだけの力がある。

 文字を書くだけの知性もあるし、ソレを広めるための人脈もある。


 有難い話だ。



 なのでその知識を、ココに共有しようと思う。

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