#0 翠嶺城の朝と、滑空する影
生まれて初めて、物語を形にしました。
ChatGPTくんにもアイデアや校正を手伝ってもらいながら、
ゆっくりのんびり、自分の“好き”を詰め込んで書いてます。
読んでくださった方へ、心から感謝を。
☆やいいね、そして何より感想をいただけると——
3次元機動しながら喜びます!
✒️性癖:ヤンデレ・おねショタ・エルフ・SF・ファンタジー・ロボット・お前女だったのか!?
・カプセル少女
書いてるのはぜんぶ“性癖”のまま。合う方は、ぜひご一緒に。
風がざわめく緑深き森の上空、何羽もの鳥が悠然と羽ばたいていた。
その大きさは、地上からではもちろん、空からでも正確には測れない。
その羽ばたきの陰に、本当の“影”が潜んでいることを、誰も知らなかった。
鳥の足に吊り下げられたフックには、金属製の兵員輸送箱が挟まるように接続されている。
その中では、下着のように薄い装甲服――
『霊導布』を身にまとった少女たちが、沈黙のまま座っていた。
不規則に振動する箱の中、緊張の色を浮かべる彼女たちの耳は、ぴんと張っている。
人間よりも明らかに長く、まるでおとぎ話の中から抜け出してきた“エルフ”のようだ。
「ティルヴァンよりエルサインへ。【レグルス】から各機への作戦情報、注入完了。これより投下に入る。ティルヴァン各員はそれぞれのエルサインに伝達を」
凛とした、しかしどこか甘さを含んだ女性の声が、輸送箱内に低く響く。
「【アーシュ】、セリラ了解」
緊張ひとつ見せない冷静な声。
「【アーシュ】、リュラ了解。捕虜奪還作戦ですね。今回も成功させましょう」
鼓舞するような優しい声。
「【セレス】、ミナラ了解。今回は飲み物吹かないでくださいね〜姫様!」
お茶目で、どこか舌足らずな声。
「ここでは隊長と!……あのときは降下のタイミングと、ボトルを離すタイミングが悪かったんだから……もう……!」
気の抜けたやり取りが、緊張した空気の中に微かな笑いを混ぜる。
だが、それもまた作戦の一部だった――。
兵士たちは互いに苦笑いを交わしながら、それが場を和ませる“意図された演出”だと理解していた。
「セリオン=リネア=サリエン、レイジェル=ヴェルガ!」
凛とした声が、エルフ語で「捕虜奪還作戦」の開始を告げる。
その瞬間――鳥が足を引き、フックを放った。
兵員輸送箱はゆっくりと回転を始めた。
角度は90度。その刹那、一瞬だけ真紅の硬質なシルエットが見えた。
それは鳥が掴んでいたものの正体――背中だった。
真紅の騎士の鎧のようなシルエットが浮かび上がり、太陽光を反射してきらりと光る。
しかし重力に引かれ、その輝きは瞬く間に消える。
真紅が一つ、モスグリーンがふたつ、翡翠色が一つ――
合計4つの影が森の緑を切り裂きながら、静かに降下していく。
***
終わりなき大戦――『赤い冬』の終焉から、500年。
世界はなお、“赤い冬”の影を引きずったまま。
それでも人々は、生きることを選んだ。
かつて栄えた科学文明は崩壊し、
人類は新たな力――霊弦霧に縋る“魔法文明”へと変貌を遂げた。
そして、世界は三つに分かたれる。
北米西部を中心としたアクシオン連邦。
西欧を治めるベルディア王国。
旧ロシアから中央アジアを支配するクラヴァニア帝国。
三つの大国は、覇権を巡り、均衡と緊張のはざまで揺れていた。
そんな中、人類は“世界樹”と呼ばれる巨大な遺産を発見する。
だが、その聖域を守護する未知の存在――エルフ。
彼女たちとの接触は、再び戦火の導火線となった。
三国は表向きには協調を謳いながらも、
内心では互いを疑い、
やがて、対エルフ戦争の泥沼に引きずり込まれてゆく。
人類は数で勝る。――誰もが、そう信じていた。
しかし、エルフは応じる。
古代の遺産を解析し、生み出された霊環駆動装体――『ハイエルフ』を実戦投入した。
それは、戦局を一瞬で塗り替える“力”だった。
霊環歴248。
半世紀にわたる戦線は、いまや膠着の極みに達していた。
そして今――
その世界に、新たな“歪み”が芽吹こうとしている。
それが何を変えるのか。
誰にも、まだ知られていない――。
***
アクシオン連邦
サンティアラ自治区中心都市・サンクリオ
研究施設兼工廠プラント――『翠嶺城』
広場の片隅に置かれた受信器に人々は耳を傾けていたが、誰もその表情を変える者はいなかった。
戦争は、もう日常の一部だった。
――霊弦式受信器から流れてくるのは、いつもの皮肉たっぷりのニュースキャスターの声。
「さあ皆さん、お耳の恋人、霊弦エアウェーブの時間です。今日も銃声がBGM代わりの世界から、皮肉たっぷりにお送りします。
まずはアクシオン連邦ソルディア。魔導工学万能のこの国では、新型ハイエルフの開発がまた進行中。殺し合いも日進月歩、未来は明るい……んでしょうか?
お次はベルディア王国。宗教とエルフのラブコールが止まらず、霊導布の怪しげな実験も絶賛増加中。呪文でも唱えてお祈りしててくださいね。
クラヴァニア帝国は相変わらずご近所とゴタゴタ中。誰も止められません。自滅に期待しましょう。
そして我らがサンティアラ自治区。今日も違法召喚問題で平常運転。関係者の皆さん、お気をつけて。
……では、今日も霊弦エアウェーブと共に良い戦いを!」
――翠嶺城の厚い石壁の上、男二人が肩を並べて外を監視していた。
煙草の煙が風に流れ、細くたなびいていく。
「これ、いつまで続くんだろうな……こんな緊張感」
――と、ハルトがポツリと漏らす。
「まあ、俺らにできるのは見張ることくらいだからな……。にしても聞いたか?」
隣で煙草をくゆらせるカイルが、気怠げに返した。
「……あ? 何がよ?」
ハルトが怪訝な顔を向ける。
「リュクス自治区の地獄っぷりったらねぇ。あそこは最前線も最前線だぜ。今頃もう、煙も上がってねーんじゃねぇか?」
カイルは鼻で笑いながら、冗談とも本気ともつかぬ口調で言った。
「世は事もなし。左遷されてよかった〜ってか?」
ハルトが皮肉っぽく笑う。
「……でもよ、ここも意外と火薬臭ぇぞ?」
「おお、異世界人ってやつだろ?」
カイルが小さく舌打ちする。
「“別の世界で存在を抹殺して召喚します”ってさ、かわいそうな話だよな。しかも、うちのラボが勝手にやってんだって? 国は許してんのかよ」
「黙認。知らぬ存ぜぬ。国も欲しいんだろ、膠着状態をぶち破る“力”ってやつがよ」
そう言って、カイルは肩をすくめ、煙を吐いた。
「こんなことやってるから、俺たちの給料もろくに上がらねぇんだよ……」
――と、ハルトが嘆くように言ってから、ふと思い出したように付け加えた。
「ってさ、可哀想といえば――この前、召喚されたガキ共、見たか?」
「……ああ、あれか」
カイルが煙草の火を指先で弾きながら応じる。
「三人のうち二人は優秀らしいが……最後の一人がな。魔力値が足りなくて、教育班に見放されて、まだポッドからも出られてないんだとよ。
そのうち廃棄処分かな」
「全く世知辛いねぇ……って、おいカイル! なんか光ったぞ」
ハルトが身を乗り出しながら、慌ただしくカイルに声をかけた。
カイルが素早く望遠鏡を構え、視線を遠くの森の空へと向ける。
「……ん? 鳥か? いや……」
視界の先――淡く、だが確かに輝く飛行体。
マントとも翅ともつかぬシルエットが、宙をすべるように滑空していた。
「まさか……ハイエルフ、か……?」
息を飲むカイルの声に、ハルトも凍りついたように黙り込む。
再び口を開いた時には、もう遅かった。
その姿が視認できる距離まで、すでに近づいていたのだから。
ジャンプを繰り返しながら接近する、その巨大な影。
「滑翅!? ハイエルフだ! 空挺してきやがったのか!」
「くそっ、エルフ共め! こんな辺境の地まで来やがって! 警報を鳴らせ!」
ふたりは慌てて城内へと駆け戻った――。
***
森の中――。四つの影が、地を蹴って奔る。
それは、人の足のようでいて、しかし人とは異なる。
逆関節に可動する足首が、地面を蹴るたびに、大きく跳躍し、木々を越えていく。
その肩の周囲で蠢くのは、マントとも翅ともつかぬシルエット。
風を裂いて揺れながら――やがて、その輪郭は、硬質な質感を覗かせた。
それは、ただの装飾ではない。
肩鎧――戦うための装甲だった。
「サリエ=リネア、稼働良好っ」
舌足らずな声が、通信に弾むように響く。
エルフ語で”サリエ=リネア”――人の言葉で”滑翅”と呼ばれるそれは、エルフたちの降下姿勢を制御し、同時に戦場を翔けるバランサーでもあった。
「そろそろ、いいでしょう!」
通信に割って入るように、別の声が叫ぶ。
「セレスは城の裏側へ! 兵員輸送箱、分離! ひとつはセレスについて行って!」
「残りは残念! 私たちと一緒に――おとりよっ!」
凛とした指揮官の声が、戦場に指示を飛ばす。
すると、翡翠にきらめく機影が、他の三機の影から音もなく抜け出した。
背中から解き放たれた兵員輸送箱がふわりと宙に浮き、意思を宿した従者のように、巨影の背後へと吸い寄せられていった。
次回予告 波濤の果てに
閉ざされたポッドの中で目覚める少年。
身体は裸、心は混乱。
突如鳴り響く警報、迫り来る敵の影。
「開けろ!奴らが来るんだ!」
怒号と緊迫の中、逃げ惑う彼を救う手が伸びる。
一方、城の正門に降り立つ三機の巨大な影。
真紅の機体が跳躍し、力強く門を蹴り破る!
「私たちはジャンプ、登ったらすぐにクルーザ=ナハール展開!
ルァルア=ゼア、使うわよ!」
戦いの幕が上がる。
命を懸けた戦士たちが交錯する中、少年の運命は――?
次回、
聖弦のレクイエム 〜異世界転生したら記憶喪失のショタになって エルフのお姉ちゃんに誘拐されて心中する話〜
『波濤の果てに』。
「運命の波が、今、彼らを導く――。」