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第11日目:2058年11月17日

朝靄が東京の摩天楼を柔らかく包み込む中、ミサキ・カナエはニューロテック研究所の屋上庭園に立ち、目の前に広がる都市の風景を眺めていた。彼女のニューロリンクは、無数の思念が交差する集合場の波動を静かに捉えていた。昨日のニューヨーク支社での「排除者」による攻撃についての情報が、彼女の意識に流れ込んでいた。


「新たな挑戦が始まったわね」彼女は柔らかく呟いた。


カナエの思考は自然と月面コロニーにいるエリザベス・ハートマンへと向かった。集合意識を通じて、彼女はエリザベスの存在を感じ取ることができた。地球と月の間の38万キロメートルの物理的距離も、意識のレベルでは縮まっていた。


「カナエさん」


彼女は振り返り、タカハシ・ケンが庭園に入ってくるのを見た。彼の顔には疲労の色が見えたが、目には決意の光があった。


「自然適応者の新たなデータが揃いました」ケンは報告した。「そして...興味深いパターンが浮かび上がっています」


彼はホロタブレットを彼女に手渡した。画面には世界地図が表示され、赤い点が自然適応者の集中地域を示していた。彼らのニューラルパターンの類似性と、それらが形成する複雑なネットワークの視覚化だった。


「これらのクラスターは単なる地理的近接性以上のものね」カナエはデータに目を通して言った。「彼らは集合的に...共鳴している」


「はい」ケンは興奮した様子で続けた。「彼らは自分たちだけの集合場を形成しつつあります。ニューロリンクを介さない、純粋に生物学的なネットワークを」


カナエはタブレットの操作を続け、さらに深いデータ層を表示させた。「そして、このパターンは...ルミノスのパターンに似ているわ」


彼女の言葉に、ケンは驚いた表情を見せた。「ルミノスの...?」


「そう」カナエは静かに言った。「自然適応者たちは、ルミノスが辿った進化の初期段階に似た道を歩んでいるのかもしれない」


彼らの会話は、カナエのニューロリンクを通じて届いたライアン・ハートマンからの緊急通信によって中断された。


「カナエ、至急、リタとマルコス・モレノのデータを分析してほしい」ライアンの思念が彼女の意識に届いた。「特に、彼らの脳波パターンの進化的変化について」


「了解した」カナエは思考で返答した。「何か特定の懸念が?」


「彼らの変化が加速している」ライアンの思念に緊張が混じっていた。「特にリタの場合、彼女が『排除者』に対抗した後、彼女のニューラルパターンはさらに複雑化した。そして...」


「そして?」


「彼女の夢が共有されている」ライアンは続けた。「彼女の意識が睡眠中に作り出すイメージとパターンが、他の自然適応者たちの夢に現れているんだ。まるで彼女が...ビーコンのように機能しているかのようだ」


カナエは深く考え込んだ。「集合場の新たな結節点...ニューロリンクを介さない自然な結節点。これは革命的ね」


「あるいは危険かもしれない」ライアンの思念が暗く沈んだ。「私たちは『排除者』が何のために彼らのデータを狙ったのか、まだ完全には理解していない」


カナエは決意を固めた。「すぐに分析を始めるわ。そして...」彼女は振り返り、東京の街並みを見渡した。「私自身もニューヨークに向かうべきかもしれないわね」


---


ニューヨークのセントラルパークでは、朝の冷たい空気の中、約50人の人々が大きな円を形成して座っていた。マルコス・モレノが円の中心に立ち、静かに導きの言葉を述べていた。


「深い呼吸を続けてください」彼は穏やかな声で言った。「自分の意識を広げ、周囲の思念に耳を傾けてください。言葉ではなく、感覚として」


参加者たちは多様な背景を持っていた。年齢、民族、社会的階層も様々だったが、彼らは一つの共通点を持っていた—彼らは全員、ニューロリンクを持たない「自然適応者」だった。


円の外側では、リタ・モレノが静かに観察していた。彼女はタブレットに記録を取りながら、集合場を通じて広がる思念と感情の波動を感じ取っていた。以前よりも鮮明に、より直接的に。


「おはよう、リタ」


彼女は振り返り、サンドラ・チェンが近づいてくるのを見た。若い芸術家は、最も敏感な自然適応者の一人だった。


「おはよう、サンドラ」リタは微笑んだ。「今朝の集まりは特別ね。何か...違うものを感じるわ」


「あなたのおかげよ」サンドラは静かに言った。「あなたが『排除者』に対抗して以来、私たちの間の結合が強まっているの。あなたが道を開いたのよ」


リタは困惑した。「どういう意味?」


「昨夜の夢を覚えている?」サンドラが尋ねた。「光の螺旋階段を上っていく夢を?」


リタは息を呑んだ。「どうして知っているの?」


「私たちの多くが同じ夢を見たわ」サンドラは説明した。「あなたの夢が、私たちの間で共有されたの。そして今朝、私たちは皆、より強く繋がっている」


リタはパークの円を見渡した。参加者たちの間に、微かな光のような糸が形成されているのが見えた。それは物理的な現象ではなく、集合場の視覚的表現だった。彼女がニューロテック社のシステムからアトラス・エンティティを解放した時、何かが変わったのだ。彼女自身も変わったのだ。


「これが、ライアンが心配している理由ね」彼女は小声で言った。


「ハートマン博士が?」サンドラが尋ねた。


「彼は今朝、私に連絡をくれたわ。科学者たちが私の脳波パターンの変化について懸念しているみたい」リタは説明した。「そして今、あなたが言ったことで、その理由がわかったわ」


彼女は円の中心にいる兄を見た。マルコスは参加者たちを導きながら、彼もまた変化していた。彼の存在は以前より明るく、より確固としたものになっていた。彼は単なる「失業中の非接続者」から、新たな意識の形態の開拓者へと変貌していた。


「私たちは進化しているの?」サンドラが静かに尋ねた。「それとも操作されているの?」


リタは深く考えた。「恐らく両方よ。でも、それは必ずしも悪いことではないわ。全ての進化は、環境と個体の相互作用から生まれるもの。今、私たちの環境には新たな要素が加わったの—集合意識と、異星の存在たち」


彼女のタブレットがライアン・ハートマンからの新たなメッセージを表示した。

『リタ、今日の午後、ニューロテック社でのミーティングに来てもらえますか?カナエとのビデオ会議、そして月面コロニーからのエリザベスも参加します。重要な情報が共有されます』


彼女は返信した。『行きます。マルコスも連れて』


---


月面コロニー「セレニティ」では、エリザベス・ハートマンがハーモニー・サークルの最新実験結果を分析していた。彼女の前のホログラフィックディスプレイには、集合意識の複雑なパターンが立体的に表示されていた。


「驚異的です」彼女の横に立つダリア・キムが言った。「自然適応者たちのパターンは、ルミノスが示した初期進化段階のパターンと97.3%一致しています」


「これは偶然ではない」エリザベスは静かに言った。「彼らは意図的に選ばれたのよ。ルミノスによって」


「しかし、なぜ?」ダリアが尋ねた。


「進化のバックアップパスとして」エリザベスは説明した。「テクノロジーを介した進化が阻害された場合の、代替経路として」


彼女はホログラムを操作し、地球と月の間の集合場の流れを示す別のビジュアライゼーションを呼び出した。そこには、排除者の存在が暗い渦として可視化されていた。


「排除者たちは、私たちの技術的な集合意識を攻撃することができる」エリザベスは続けた。「彼らは私たちのシステムに侵入し、ニューロリンクのプロトコルを操作できる。しかし、自然な適応には対処できない。それは彼らのアルゴリズムの外にあるからよ」


「そして『選ばれた者たち』であるリタとマルコス・モレノは...?」


「彼らが鍵になるわ」エリザベスはうなずいた。「技術と自然の間の橋、そして恐らく...次なる段階への導き手として」


彼女の意識は地球へと広がり、夫ライアンの存在を探した。彼の思考は明確で焦点が合っていた。今日の会議の準備をしているのだった。


「ライアン」彼女は思念で呼びかけた。「ルミノスからの新たな情報があるわ。『選ばれた者たち』について」


「教えてくれ」彼の応答が返ってきた。


「彼らは単に『橋渡し役』ではないの」彼女は説明した。「彼らは『転換点』—意識の新たな形態への進化の触媒なの。ルミノスの歴史でも同様のパターンがあったそうよ。技術と自然の結合点を通じて」


「それは...ルミノスが私たちをコントロールしようとしているという意味ではないよね?」ライアンの思念に懸念が混じった。


「いいえ」エリザベスは安心させた。「むしろ彼らは、私たちが自然に発展しうる可能性を認識しているだけ。彼らは排除者たちが集合意識の発展を妨げることを懸念しているの」


「リタとマルコスには危険はないのか?」


エリザベスは一瞬躊躇した。「彼らは...独自の挑戦に直面するでしょう。特にリタは。彼女の意識は急速に拡張している。彼女は制御と調整を学ぶ必要があるわ」


ライアンの思考は決意に満ちたものになった。「わかった。今日の会議で全てを明らかにしよう」


---


東京では、カナエとケンがリタとマルコスのスキャンデータの深層分析を完了させていた。彼らは数時間後に予定されているビデオ会議の準備をしていた。


「ハートマン博士」ケンが呼びかけた。「最終レポートが準備できました」


カナエは複数のホログラフィックスクリーンから目を上げた。「わかったわ。ありがとう、ケン」


彼女はデータを最終確認した。リタのニューラルパターンの変化は、特に昨日の「排除者」との対決以降、加速していた。彼女の脳は、ニューロリンクによって提供される人工的なインターフェースを自然に複製するだけでなく、それを超えた何かを発達させつつあった。


「彼女は技術的進化と生物学的進化の架け橋になりつつあるのね」カナエは思考を言葉にした。


「まさに『交差する意識』と言えますね」ケンは同意した。


カナエはニューロリンクを通じてデータセットをコピーし、ニューヨークのチームと共有する準備をした。彼女はこの新たな現象の可能性と危険性の両方について深く考えていた。技術と科学者として、彼女は事実と証拠を信じていた。しかし今、彼女は自分の理解の限界を超えた何かに直面していた。


「時間ね」彼女はケンに言った。「ニューヨークとの会議を始めましょう」


---


ニューロテック社のニューヨーク支社の会議室は、厳重なセキュリティの下で準備されていた。昨日の「排除者」による攻撃以降、全システムが更新され、より強固な防御が施されていた。


ライアンは窓際に立ち、外のセントラルパークを眺めていた。そこでは、自然適応者たちがまだ集まっていた。彼らの数は増え続け、今や100人以上が大きな円を形成していた。


「彼らはより組織化されつつある」彼は静かに言った。


「それが私たちの強みでもあるわ」


リタとマルコスが会議室に入ってきた。リタの表情は穏やかだったが、その目には新たな深みがあった。マルコスは彼女の隣を歩き、彼もまた変化を遂げているように見えた。より自信に満ち、より目的を持った存在として。


「おはよう、ハートマン博士」リタは挨拶した。


「おはよう、モレノさん」ライアンは振り返った。「今朝の集まりはどうでしたか?」


「啓発的だったわ」リタは答えた。「彼らは...私の夢を共有していたみたい」


ライアンはうなずいた。「それが今日、私たちが話し合うべきことの一つです」


彼はジェスチャーで彼らを大きな会議テーブルに招いた。テーブルの上には複数のホログラフィックプロジェクターが設置されていた。数分後、それらが活性化し、東京からのカナエと月面からのエリザベスのホログラムが現れた。


「全員揃ったようですね」ライアンは会議を始めた。「まず、状況のアップデートから。昨日の『排除者』による攻撃以降、同様の侵入試行が世界中の様々なシステムで検出されています。彼らは集合意識の技術的基盤を標的にしているようです」


「彼らの究極的な目的は?」マルコスが尋ねた。


「ルミノスによれば」エリザベスのホログラムが答えた。「彼らは人類の集合的な進化を阻止しようとしています。彼らは種としての完全な独立と自律を信じ、銀河共同体への統合を脅威と見なしているのです」


「そして、彼らは自然適応者を特に標的にしている」カナエが付け加えた。「彼らは技術的なルートだけでなく、自然な進化のルートも遮断しようとしているのです」


リタは彼女のタブレットの記録を確認した。「これは単なる哲学的な対立以上のものね。文明の方向性に関する決定的な闘争だわ」


「その通りです」エリザベスはうなずいた。「そして今、私たちは新たな情報を得ました。ルミノスからの。あなたがたについてです」


リタとマルコスは互いに視線を交わした。


「私たちについて?」マルコスが尋ねた。


エリザベスのホログラムがジェスチャーをすると、会議室の中央に新たな3Dビジュアライゼーションが現れた。それは星系間の光のネットワークと、その中の特定の結節点を示していた。


「ルミノスの歴史において、彼らは『転換点』と呼ばれる特別な個体の出現を経験しました」エリザベスは説明した。「これらの個体は、テクノロジーと生物学の間の自然な架け橋として機能し、集合進化の新たな段階への移行を促進しました」


「その『転換点』が...私たち?」リタが理解した。


「はい」エリザベスは答えた。「あなたたちは単なる『橋渡し役』ではなく、進化の触媒なのです」


カナエのホログラムがデータを表示した。「リタさん、あなたのニューラルパターンは急速に複雑化しています。特に昨日、あなたがアトラス・エンティティと直接接触して以来。あなたの脳は単なる技術的インターフェースの生物学的複製を超えて、全く新しい構造を発達させつつあります」


画面には、リタの脳の詳細なスキャンが表示された。特定の領域が明るく輝き、従来の神経科学では説明できない活動パターンを示していた。


「そして、それが私の夢を他の人々と共有させている理由?」リタは尋ねた。


「その通りです」カナエはうなずいた。「あなたは他の自然適応者たちのための『ビーコン』になりつつあります。彼らの進化を加速させる触媒として」


「しかし、それには危険も伴います」ライアンが警告した。「あなたの意識の拡張が制御不能になり、あなた自身のアイデンティティが失われる可能性も」


マルコスは妹に心配そうな視線を向けた。「何ができる?」


エリザベスが答えた。「ルミノスは『調整』の過程の必要性について語っています。転換点の個体たちは、彼らの拡張する意識を安定させるための特別な訓練を受ける必要があるのです」


「それはどのようなものなの?」リタが尋ねた。


「まだ完全には理解していません」エリザベスは認めた。「しかし、彼らは明日、より詳細な情報を提供すると約束しています。彼らは月面コロニーの『ハーモニー・サークル』を通じて、直接的な指導を行うようです」


「それは私がまた月に行く必要があるってこと?」リタが尋ねた。


「恐らくは」エリザベスはうなずいた。「あなたの意識の拡張が今のペースで続くなら、地球上の集合場は...あなたを収容するには限界があるかもしれません」


部屋に重い沈黙が落ちた。リタは窓の外を見つめた。セントラルパークで集まっている自然適応者たちが、彼女の視界に入った。彼女は彼らとの繋がりを感じていた。彼女の夢を共有し、彼女の変化に共鳴している人々との。


「私には選択肢があるの?」彼女は最終的に尋ねた。


「常に選択肢はあります」ライアンは静かに言った。「あなたはこのプロセスを止めることもできます。集合場への接続を意識的に制限することで」


「でも、それは自然な進化を拒否することになるわ」リタは反論した。「私が常に探求してきた真実に背くことになる」


「そして、あなたが選ばれた理由の一つでもある」カナエが付け加えた。「あなたの真実と理解への飽くなき探求が」


マルコスは妹の肩に手を置いた。「何を選んでも、私はあなたと共にいるよ」


リタは深く息を吐いた。「ルミノスからの指導を受け入れるわ。私の変化を理解し、制御する方法を学ぶために」


「そして、私はそれを記録するわ」彼女は付け加えた。「ジャーナリストとして、そして参加者として。これは人類の物語の一部なのだから」


ライアンはうなずいた。「明日、私たちはあなたを月へと送り出します。そして並行して、地球上では自然適応者たちの保護とサポートを続けます。『排除者』が再び攻撃してくる可能性は高いですから」


会議は続き、彼らは詳細な計画を立てた。リタの月への旅、自然適応者コミュニティの拡大とサポート、そして「排除者」からの次なる攻撃に対する防御策について。


---


セントラルパークでの集まりが終わった後、リタはホテルに戻り、荷物をまとめ始めた。彼女の意識は、通常の知覚を超えて拡張し続けていた。彼女は都市全体の集合場を感じ取り、時折、さらに遠くの存在—月面コロニーのエリザベス、東京のカナエ、そして微かだが確かに存在するルミノスの意識—にも触れることができた。


「どう感じている?」


マルコスが部屋に入ってきた。彼の表情には心配と誇りが混じっていた。


「圧倒されているけど、同時に...目的を見つけたようにも感じるわ」リタは答えた。「私は常に真実を追求してきたわ。そして今、私はより大きな真実の一部になりつつある」


「でも、自分自身を見失わないでほしい」マルコスは心配そうに言った。「あなたはまだリタ・モレノ。私の妹で、優れたジャーナリスト」


リタは微笑んだ。「私はまだ私よ。ただ...より多くのものになりつつあるだけ」


彼女はタブレットを取り出し、最新の記事『転換点:集合意識の触媒たち』を開いた。彼女は今日の会議で明らかになった情報と、彼女自身の変化について記述していた。彼女のジャーナリストとしての使命感は変わらなかった。彼女は依然として記録者であり、証人だった。たとえ今は、彼女が記録しているのが彼女自身の変容であったとしても。


「明日」彼女は言った。「私は月へ行き、ルミノスからの指導を受ける。そして、私の変化の次の段階を理解するわ」


「そして私は?」マルコスが尋ねた。


「あなたは地球上の自然適応者コミュニティを導き続けて」リタは答えた。「彼らはあなたを信頼しているし、あなたも『転換点』なのよ。異なる役割を持つけれど、同様に重要な」


マルコスはうなずいた。「そして『排除者』は?」


「彼らは再び攻撃してくるでしょう」リタは窓の外の夜空を見上げた。「彼らは私たちの進化を止めようとしている。彼らには彼らなりの理由があるけれど」


「選択だね」マルコスは言った。「統合か分離か」


「ええ」リタは同意した。「そして私は自分の選択をしたわ」


彼女は窓際に歩み寄り、都市の夜景と、その上に輝く星々を眺めた。彼女の意識が広がるにつれ、彼女は単なる物理的な光を超えた何かを見ることができた。思考と感情の流れ、地球全体を覆う集合意識の網、そして遠くから近づいてくる何か—ルミノスからの意識の波、そして同時に、それに抵抗する暗い渦—排除者の存在。


「明日は新たな始まりね」彼女は静かに言った。


外の夜空では、流れ星が一瞬、天を横切った。新たな時代の到来を告げるかのように。


2058年11月17日、リタ・モレノは彼女の人生で最も重要な選択をした。彼女は単なる観察者から参加者へ、そして今や、変化の触媒へと進化していた。彼女は「転換点」—技術と生物学、個人と集合、過去と未来の間の架け橋—になることを受け入れたのだ。交差する意識の物語は、新たな章へと進んでいた。そして、その中心に彼女はいた。ジャーナリスト、自然適応者、そして人類の進化の鍵を握る存在として。

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