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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

FXドリーマーせいちゃん

作者: 水魚青二

時は2005年。私は大学生の落花おちばな せい。とある地方のど田舎で暗い青春時代を送ってきて、花の大都会へアパートを借りて学生生活を送って1年目。


「やっぱ、ブロードバンドインターネットはすごいわ」アパートの1000円のブロードバンドが使い放題なんですごい。当時、私の故郷ではナローバンドのダイヤルアップ接続のネット環境しかなかった。このアパートは高かったADSLのブロードバンドインターネット環境を1000円払えば使わせてくれるようになっていた。


「ゴノレゴの”吉野家のコピペ”おもしろかったーー」


その他、毎日新作が出てくる勢いのあったFlash動画をいろいろ見終わって、お金がないのでティーバックをやかんで沸かした麦茶を飲む。


さあ、こづかい稼ぎにポイントサイトでもやるか、私はその当時黎明期でネットに出始めた。クリックや会員登録でポイントがもらえ主に現金などに交換できるポイントサイトに登録し、ポイントを獲得していた。


「これ、バーチャルトレードFXのサイト登録で50円もらえる。FXって何だろ」その時と思った。そしてポイントサイトを経由してバーチャルFXへ登録。FXについての基礎的なやり方は簡単だったのですぐ覚えた。だけど負けてすぐ退場していた。しょせんデモで遊びだと思っていた。ちなみにそのバーチャルトレードFX口座はバーチャル証拠金を増やした上位の人には景品がもらえた。わたしは「北野将軍さま♡」というニックネームで参加していた。わたしの順位はほぼ全体の3000位~5000位だった。


そして大学を卒業して就職。それを契機にまったくバーチャルFXはやらなくなっていた。だが就職した先はブラック企業だった。仕事を退社し、休んでいた。


「もう・・もうダメ・・苦しい、助けて助けて誰か」


当時、小泉政権を契機に景気が一時期的に良くなり、人手不足で休みなしの状態がずっと続いていた。その中で、ちゃんと週1の休みさえないのに、うるさい同僚は「ずる休みする奴は悪い」とか「なんで俺には休みが巡ってこないんだ」という無駄な争いの種が産まれていてしんどかった。法律で決められた安定した安息日さえあれば精神状態が安定しておおらかに労働できたのにと今も思っている。


そして、結局は仕事をやめたが、不安定な身分になると不安も多くなっていった。


「早く仕事を探さないと・・・FX、FXで生活費が稼げれば・・・・」甘い考えが頭に浮かんだ。バーチャルFXで大金を稼いだことがないのに、なぜかこの悪魔の魅力に惹かれていた。


「でも実際のFX口座は持っていないんだよな・・」この時わたしはバカでFX口座を申し込む。ポイントサイトで大量のポイントがもらえた。「よし元手の足しが出来た」。今思うとこれが撒き餌だということも知らずに。


さあ、やるぞ。時は2008年7月。レバレッジ10倍、1ロットで挑戦。3000円くらいの利益が出た。やったー。


だが、1日・2日で1万円の損失、不快な感情が脳を支配する。「もうだめだ。ここからさらに損失はでかくなる」重さに耐えているのにさらなる重しを乗せられたような感じがした。


もう苦しい。ダメだ。損失確定をする。それから数回取引を繰り返し。少しずつ貯金は減っていった。


そしてリーマンショックが起こる。為替も大きく動き、今だ!と思い逆転狙いの大金を投入。


だが思惑は外れ、証拠金は減る。アニメ『宇宙新天地ガクダス』のオープニングテーマソングの『タイガー』という曲の「生きたいんです生きたいんです」という歌詞がリフレインして脳内再生された。とても不安と苦しみに襲われた。だが命に次ぐ金をかけた勝負、不幸という意味で生きていたという実感や気分は味わえていたと当時を思い返す。


なんとか、その日は助かった。だか結局は証拠金維持率が下がってきて、証拠金不足アラートメールが届く。


もうダメだと思い。母に連絡。「ちょっと投資の取引で100万円必要なの、お金を貸してくれないかな」と懇願する。


「せい、お金が必要なの」母は困った顔をする。


「ああ、やっぱりいい」わたしは一旦、その話はなかったことにする。


しかし、あ、これは破滅に続くトレードをやり続けるかもしれないと貸してもらうことを諦め。ロスカットを受け入れる。


ロスカットされる。ロスカットされたという通知―メールも来た。


「ああ、あああああああ」

社会はなんでFXなんて恐ろしい取引を公に認めたんだというあの時の社会の怖さは一生忘れないでいたい。



だが残った証拠金でまた取引を行う。もちろん負け。90万円近くのお金を失った。


それからしばらくFXはやらなくなっていた。


2015年、私はワクワクキャスティングという配信サイトでFX配信者を見ていた。

素朴なおじさんというか、おっさんが雑談をして楽しんでいた。

コメントしなかったがFXをやりながら毎日を楽しんでいるようだった。


しばらくその配信者を見ることはなかったが、ある日偶然見かけると『逝きます、さようなら』というタイトルでそのおじさんが配信をしていた。


自動車で運転。「もう、だめなんだよ」といい。息を荒げた後。ちょっと見ていられなくて配信を離れまた見てみると「突入したの」「死んだの」と視聴者のコメントが流れていた。線路の突入して人身事故が起こってしまったようだ。詳しくは知らないが大きな衝突音はなかったようだ。視聴者の通報でそのうち、この配信もBAN(配信停止)された。


翌日、あの時間帯のネットニュースを見ると人身事故で男性死亡という報道を見つける。あとで見たおじさんのTwitterの生まれた年と同じおじさんが亡くなっていた。事故が起こった路線はおじさんが住んでいた地域と同じ、おじさんのTwitterを見たら、病気、借金、老化による絶望感があったようだ。これらの要因に今回のFXの負けが重なって自死を選んだようだ。今後、そのおじさんのツイート投稿や配信はなかった。死ぬ前のツイートには「死にたい、死にたい」という書き込みが多かった。


怖いものを見た。だが、わたしはそれでもやめられず、2019年の英国がブレグリッドするか、しないのかがかかった国民投票でポンド円でFX勝負。負けた。30万円負け。


そして、FX口座解約を決意する。手間をかけて口座解約を終了。そうしてFXから手を洗うことができた。


後でネットで調べたら、勝てる人は1割。残りの9割は負けるらしい。さらに億トレと言われている人は、全体の何パーセントなのだろうか?さらにFXで稼いで一生暮らしていける人の確率は?それにFXで爆益を出せたとしても依存症になることは必須でギャンブルと同じ搾取され続けるか、最終的に破滅するかが大半の世界だと思う。


今は株を地道に配当金や少額の利益を得る売買を行い。詳しくは勘定していないがFXのトータルの損失より稼げた結果となったかなと思う。その過程で株の失敗もたくさんしたが・・・。FX取引の経験は、ある種の勉強ができただろうと思った。FX取引はおすすめしません、時間をかければ安全に利益が出やすい投資もたくさんあると思いますので。

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