〜7話から9話〜
『DNA完全一致』が発覚した紅花と日葵。だがしかし、2人には共会った記憶がない。同じ家系の同じ親元に生まれたはずの姉妹に会った記憶がない理由とは――――
<7話 とある教師の憶測>
「日葵が天涯孤独になった理由?そこまでは分からないかった。けど…。」
「けど、何ですか?もったいぶってないで言ってください。」
「これはあくまで俺の憶測に過ぎないのだが…。日葵は生まれてすぐ誰かに引き取られて、その引き取り人が消息を断ったんじゃないか、と。」
確かにそうだとしたら私が姉である紅花さんと紅愛さんを知らないことに納得がいく。だけど私が誰かに引き取られたなんてことあるのだろうか。
(それに引き取り人が消息を断った?)
「あ、あのっ…。じゃぁ私は、誰かに引き取られた後に孤児院に行ったってことなんですか?」
「分からないよ。けどさ、日葵を引き取れたってことは、親族か権力があるかだょねぇ。まぁやっかいだね。」
(親族…?ということは美甘家の人?)
「可能性は?どっちの方が確率高いんだ?」
「橙輝じゃん。やっと終わったの?」
「終わったも何もアンタのせいだろ。」
「アンタのせいとは、随分と理解してないようで、私はあんた達のことをしっかり考えて―――。」
いかにも長そうな話が始まった。
「それよりどういうことなんだ?日葵が紅花と紅愛の妹って。」
「それは…。私もよく分からない、です。」
「それはあとで俺が説明するからいい。とりあえず日葵のことは調べておく。みんなは教室戻ってていいよ。色々教えてあげて。」
魔法師と憑魔、私が今まで知らなかった世界。だからきっとたくさん覚えないといけないことがあるのだろう。
「先生、もう昼練終わりにする、と?」
「そういうこと。たとえ魔力が強くて、体術いけても知識ゼロだったら勝てないでしょ。」
(なるほど。)
「俺が戻って来る時には制服できあがってると思う。」
「早くないですか?というか制服って学校で作る物なの?」
そう、普通の学校ではそんなことはない。だがしかしここは魔法学園、そんなこともありえるのだ。
「この学園には色々な部屋があるの。だから裁縫を専門とする部屋もあるってこと。もちろん、専門の人もいるわ。」
井川先生の代わりに紅花さんが答えてくれた。
「そういうこと、そういうこと。まぁ他のことも3人が教えてくれるよ。俺ちょっと休憩。じゃあまた〜」
「僕が言うのもなんだけど、あの人自由奔放だね。」
(それは私も思う。暇人なのかな?)
「アンタ達もだけどね。周りがやばい奴しかいないと感覚麻痺しそう。日葵はあんな風にならないように気を付けてね。」
「はい。でもそれはそれでいいんじゃないですか?たまには楽しく過ごすのも大事だと思いますけど。」
「ほら、紅花。日葵もそう言ってるぞ。だよな、桂。」
「橙輝の言う通りだよ。さすがに僕達をあの先生と一緒にするのはやめてほしいな。」
(そういうつもりで言ったわけじゃないんだけどなぁ。)
「そうやってすぐ調子乗る。まったく、日葵もあいつらのこと甘やかしたらだめよ。」
――教室に戻る。私の知識上の学校の教室はもっとたくさん机とイスがある。ここはその3分の1ないくらい。
それもそのはず、ここの生徒は中等部、高等部あわせて20人いるかどうかぐらい。
「日葵はとりあえずここ座って。紅愛の席だから問題ないでしょ。」
たぶん人生で初めてイスに座ったのでは、と思う。
「ありがとうございます。」
「あ、そうだ。これ言おうとして忘れたの。敬語使わなくていいよ。仮に記憶がないとしても姉妹なんだからさ。私だけじゃなくて、2人にも敬語使わなくていいよ。」
(そっか。会ったことないけど正真正銘の姉妹なんだよね。私にも家族がいたんだ。)
「じゃあ、お姉ちゃん!えと…、私は、お姉ちゃんみたいになりたい。そして、お姉ちゃんが私を助けてくれたみたいに、私も誰かを助けたい。分からないことたくさんあるけど、頑張る…。から、よろしくお願いします!」
<8話 取り憑かれた悪魔>
「『お姉ちゃん』か。なんか昔の紅愛みたいだね。今はもうそうやって呼んでくれないけど――。」
「話遮ったね。ごめん。じゃあ日葵、これからよろしくね。」
「うん!」
「紅花、それはもういい。本題入ろうぜ。」
そうだ。本題。私のこととなんか魔法師の話。
「日葵が昔から見えてたのは『憑魔』っていうとある魔王的な奴に怪物に変えられた生物なんだ。人間以外にも動物だったら何でもいいらしい。身体のどこかに核が填められているよ。」
(あの変なのが『コア』なんだ…)
「憑魔にも強さがあって、填められている核の色が黒に近いほど強い。」
逆をいえば透明は雑魚ということになる。
「なる…ほど…。じゃあその憑魔ってやつと戦うのがお姉ちゃん達だと?」
「そういうことだ。桂の説明でよく理解できるな。魔法師はこの学園以外にもいるが。」
「橙輝よりはマシな説明できるわ。なめんなよ。」
「その歳して事あるごとに張り合うのやめなさいよ。日葵も無視していいわ。それで、日葵の生まれの話だっけ。井川先生によると私と日葵は姉妹らしいね。ん〜、日葵は見た目5、6歳ぐらいだから私の10個下?」
「そうなるんじゃね?僕もそれぐらいに見えるよ。」
正直私も私の年齢を知らない。まぁ、3年ぐらい孤児院にいて、3年ぐらいあそこにいたから6歳ぐらいだろう。
「お姉ちゃんは10年前私を見たことないの?」
「ないね〜。というかそんな噂すら聞いたことないよ。」
(お母さんが隠してたとしても噂ぐらい聞くよね?)
「そんなことあるんだ…。もしかして私はお母さんの不倫相手の子ども?」
「日葵、それはない。さっきの井川の話聞いてたのか?DNA完全一致だ。もし不倫相手の子どもなら、完全一致はしない。」
「そっ…か。じゃあなんでだろ?」
―――「よっ!どうどう〜?なんか結論出た?」
「い、井川先生…。速くないですか?何かありました?」
つい聞いてしまった。いや、いくらなんでも速すぎる。何かあったなら尚更だ。
「いや〜、新たに色々と分かったもんで、ちゃちゃ〜っと帰って来たというわけだ。」
「「「「………。」」」」
沈黙。誰も、なんとも言えない。私みたいな子どもが言うのもなんだが、本当にふざける先生にしか見えない。チャラけすぎである。
「はいはい、みんな揃って変な目で見なくていいから。で、とりあえず黒板見てね〜。さっき俺が頑張って板書したから。」
板書内容を簡単に言うと、生物が憑魔になる段階というのか、方法。
エルスピリクトと呼ばれる悪い奴らが、自ら作った核を生物に填める。そうすると生物は自然と憑魔になる。その核の作り方はエルスピリクトしか知らないらしい。
「その憑魔になった生物は他の生物には見えなくなる。不思議だよね~」
(え……?たしかに私もそう思ってたけど、あの時――。)
「先生、魔法師以外の人が見えることってないんですか?」
「いい質問〜!それねぇ、今言おうとしてた事なんだよね~。」
「いちいち間を空けるから分かんなくなるんですよ。だいたい、先生の話は意味が分からない。混乱しないように、肝に銘じておいてください。」
まったく、その通り。流石お姉ちゃん、である。
『正直、意味分からない。説明が下手。』とでも言いたい。
「はいはぁ〜い、分かった。結論言うとあとでね。今すぐ知る必要はない。知るのにタイミングって大事じゃん?でねぇ、憑魔は人を食うんだよ。たとえ憑魔になる前が草食動物だとしても、ね。無論、他の生物も食うけど。」
(そうかもしれないけど、この人が言うと違う気がしてくる。)
「不思議…。でも、例えば小さいうさぎが憑魔になったとすると、小さいから人を襲うなんていくらなんでも無理じゃないですか?」
(憑魔になると大きくなるとか?でも、そんな事はねぇ…。)
「いや、憑魔は幽霊みたいな感じだからうさぎだったとして、まるでそのままというわけではないんだ。凶暴になるし、力も強くなる。魔法らしきものを使う奴も出てくる。」
「なる、ほど?」
「まぁ、いずれ分かると思うよ。百聞は一見にしかず、だよ。」
<9話 切り札>
(百聞は一見にしかず、ねぇ…。とは言え、もう憑魔なら何度か見ているんだけど。)
正直言うと、一生見たくない。でも、魔法師になると決めたのだから。今更、後戻りなんてしない、絶対に。
私はこんな自分の存在価値を示す為に、お姉ちゃん達に恩返しをする為に、助けを求める人や苦しんでいる人を助ける為に、魔法師になるんだ。
「あのー、私もう憑魔何度か見てますよ。オオカミみたいな憑魔も見たことあるし。」
そう、私が一番最初に見たのは獣だった。牙があって目つきが恐かった。この世にこんな生物がいるなんて知らなかった。
(そもそも生物なの?幽霊っぽいけど。)
「まぁ、そうなんだけどね〜。でも怖くて目反らしてたでしょ。ちゃんと見るのも大事。」
私は一瞬固まる。
(うっ……。なんで分かるの…?)
「ははは〜っ、図星ねぇ〜。」
「煽ってます?」
疑問形にする必要なかった。完璧に煽っている。
「5、6歳のガキ相手によく煽れるな。まぁ、自身も5、6歳のガキということか。」
なるほど、と頷く橙輝さん。こっちの方が煽っている気がする。
「橙輝もよく教師相手に煽れるね。なめんなよ。俺強いからね。」
やっぱり、この先生はやばい。
「煽ってる張本人に言われたくねぇ。自画自賛は良くないですよ。」
「こういう時だけ敬語使うよね。」
それには私も驚いた。橙輝さんが敬語を使うイメージが沸かない。実際使ってないと思う。
「はぁ〜。こんなふざけた奴らに囲まれて本当に私、可哀そ。」
(お姉ちゃんってこんなこと言うんだ。)
「何か言った?、紅花。」
「別に、何も。」
「いや、言ったでしょ。まぁいいや、とりあえず基礎的なこと覚えてもらったら、実戦だね。」
「先生、私って強いと思いますか?」
一度聞いてみたかった。ふざけで言ったのだろうけど、自称『強い』に聞いてみるのもいいかと思ったのだ。
まぁ、自身の強さを知っておくのは大切なことだ。あと、魔法師と言うのだから魔法とかも使うのかもしれない。考えられないけど。
でも身に起こることが非現実的すぎて今ならたぶん受け入れられると思う。
「俺は〜、日葵は強いと言うか、何か特殊だと思うんだよね。」
「何で?」
さっきまで静かだった桂さんが聞いている。
私も同感。強いならまだしも、『特殊』とは何だ。
「ん~……。たぶんね、理由不明ではあるけど、日葵は美甘家から消えた。おそらく強さにしか興味ない彼奴等にとって日葵は切り札だったんだ。」
「え??」
「たぶん他の人とは違う特殊な何かを持ってるんだろうね。」
「ん??」
いや、理解できない。この人は何を言っているのか。そもそも特殊な何かと言われても、ね。
「ま、あとで外出て特訓ついでに日葵の魔法の系統とか色々調べよ。」
「系統…。よく分からないです。」
「あとで授業するからとりあえず忘れて。で、さっきさらに調べて分かったことなんだけど――。」
(何だろう?やっぱり私は捨て子だった、とか?)
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次回、〜10話から11話〜
ーあらすじー
井川がさらに調べて分かったこととは――?
魔法系統や魔法陣など、日葵が知らないことも判明。
そして遂に日葵は任務へ向かう!




