〜4話から6話〜
天涯孤独で悪い組織の奴らに誘拐され、奴隷生活を続けていた私。恐ろしい怪物に襲われたところを助けてもらい、白鷺魔法学園に連れてこられた。そこにいた、とある先生に魔法師の可能性があると言われる――。
<4話 白鷺魔法学園>
「え、……?!」
いきなり魔法師なんじゃない?、と言われた私。そもそも魔法師って何なのか分からないし、信じられるわけが無い。
「どういうことですか?この子が魔法師の家系なら、親に捨てられるなんてことあるわけ……。」
「いや、あるでしょ。親が死んじゃったとか、魔力が弱くて見放されたとかさ。」
(私は捨てられたのかな…?見放されたのなら孤児院に連れて行かれるわけが無いよね。)
「なるほど?あんまりよく分からないな。」
私も何がなんだか分かってない。
「それはひとまず置いといて、とりあえずみんな自己紹介して〜!それじゃあ俺はDNA鑑定しに行ってくるね〜。」
(DNA鑑定って血縁関係調べるやつだよね?)
「まったく、ほんとに自己中心的ね。いつになったら直るんだが。」
「自己紹介、だよね。さっきの会話で分かってるかもしれないけど…。私は名門魔法師の家系出身、美甘紅花。」
(名門……。すごいな。)
「俺は四宮橙輝。3年に兄貴がいる。」
(兄弟いるんだ。)
「改めまして、蔵田桂だよー。ちなみに僕は兄弟いないんだよね〜。」
(なんか1人だけテンション高いな…。さっきの先生みたい…。)
「えっと…、よろしくお願いします…。」
それにしても人数が少ない。まだいるのだろうか。
「ねぇ紅花、この子にシャワーさせて、綺麗な服を着せさせてもらえる?このままだとかわいそうだから。」
「分かりました。服ってどこにあります?」
「小さいサイズないと思うから、とりあえず中等部の制服が置いてあるところから上下持ってきて。あとで買いに行くから。」
たしかに私が着ている服はボロボロ。ところどころ破けているうえ、サイズが小さい。あそこに行ってからずっと同じのを着ている。換えなんてなかったから。
「はい。ありがとうございます。桂、調子乗ってないで持ってきて。私はシャワーさせてくる。」
「は〜い。はぁ、中等部遠いよ〜。」
―――私は3年ぶりに綺麗になった気がする。体中汚かったし、ボロボロだったから。
「紅花〜、持ってきたよ~!」
「ありがと。大きいけどワンピースみたいでなんかかわいい〜。」
そして、さっきの治療室に戻る。
「ねぇ、この子紅花に似てない?」
<5話 向日葵>
「え…?」
「なんで?」
「ほんとか?」
急にそんなこと言われて信じられる人がいるのだろうか。
「さっきはボロボロだったから顔があんまりよく分からなかったけど…。やっぱり似てるわよ。」
そう言って先生は『こっち』と手招きした。
「ほら、鏡の前に並んで立ってみて。」
―――えっ……?
自分の顔がどんなだったかなんて覚えてないけど、たしかに私は紅花さんに似ていた。
「たまたまなのかな〜?にしてはそっくり。紅花もそう思うでしょ?」
「私と同じ家系…?だとしたら天涯孤独になるなんてことないと思うんだけど。」
他のみんなも驚きを隠しきれない様子だった。
そうして私はみんなと一緒に教室に行った。
「ねぇ、紅花この子に名前付けてあげてよ。」
(名前……。)
「いや、待ってよ。名前付けてあげるのは良いとして、なんで私なの?」
「紅花にそっくりってことは親戚かもしれないし、僕達男だしさ〜。この子がいいって言ったらいいんじゃない?」
「そっかぁ。ねぇあなたの名前、私が付けていい?別に今すぐ決める必要もないんだけどね。」
今まで名前がなかったか、あっても知らなかった私。だから嬉しかった。
「はい。あの…、私の苗字分からないですよね?」
「まぁそれは井川先生がDNA鑑定しに行ってくれてるから、あとで分かると思うよ。」
(そっかぁ。DNA鑑定で私がどこの家系出身か分かるんだ……。)
「決めた。あなたの名前は『日葵』ね。」
「いいんじゃないか。ちなみに由来とかは?」
「向日葵だよ。太陽のような輝きがあって元気な子になってほしいから、かな。今までの人生はきっと辛かっただろうから、これからはちゃんと自分の人生を生きてほしいんだ。」
(日葵。私の名前かぁ。紅花さんすごいかわいい名前付けてくれたなぁ。ちゃんと私のこと考えてくれてる。嬉しいな〜。ふふふっ)
「紅花さん、ありがとうございます。私もここにいていいんだって。ずっと名前に憧れてたんです。だから、とっても嬉しいです。」
「そっかぁ、それなら良かった。家族を知らない、か。だったら私が家族だといいなぁ〜。そしたら日葵に家族ができるよね。私だけじゃなくて、紅愛もか。」
「紅愛……さんて誰、ですか?」
今間違いなく紅花さんは紅愛って言っていた。姉妹でもいるのだろうか。
「私の双子の妹。今ちょっと実家帰ってていないんだけど。あともう一人いるよ。あの人は今北海道に現れた憑魔をを倒しに行ってるはず。」
(北海道って遠くない…?そっかぁ。妹がいたんだ。)
―――コンコンッ
「入るよ〜。」
入ってきたのは鷲崎先生。
「どうしたんだ?鷲崎がわざわざ来るなんて。何かあったのか?」
「『先生』つけなさいよ。まぁいいわ。さっき学園長に相談してみたらさ、特別許可得たの。もし君が魔法師になる道を選ぶのなら、白鷺魔法学園に入ってもいいってよ。中等部でもいいけどね。」
中等部とは連絡通路を通って行く。とはいえ、それほど遠くはない。それは、魔法学園というだけあって色々な教室はあるが、生徒の数が少ないため、普通の教室はあまりないからである。
「今のところ身寄りもないし、魔法師の可能性が高い。だからここにいてもいいんじゃない?魔法師にならずにここにいてもいいし。孤児院に戻るのは嫌でしょう?」
私に用意された選択肢は3つ。1、魔法師になる。2、魔法師にならずにここで暮らす。3、孤児院に戻ってまた忌み嫌われる。
「私はどうしたいんだろう?」
<6話 家族>
当然、魔法師なんてなれる気がしない。あの怪物と戦うなんて絶対怖い。だからと言って孤児院に戻って忌み嫌われるのも嫌だ。と、なると2?
(いやいや、それはだめだ。みんなが命賭けて戦ってるのに私だけ普通に暮らすなんて……。ただでさえ助けてもらったのに。)
これでもし私が1を選んで、紅花さん達に恩返しができれば…。こんなちっぽけな私が誰かの役に立てれば…。今までの人生の意味を見つけられたら…。
(――生きてて良かったって思えるんじゃないの?)
「私は……、怖いけど誰かの役に立って恩返しがしたい。だから、魔法師になります…!」
「日葵は、すごいな…。俺が同じ状況だったらそんなことは言えない。」
別に私はすごくない。橙輝さんの方がすごいはず。
だけど私は、自分の思ったことを言えたことが嬉しかった。
「日葵ってこの子の名前?付けたの?」
「はい、私が。」
「いい名前ね。とってもかわいいわ。」
私もそう思う。自分の名前といえど、かわいい。
「ありがとうございます、華梨奈先生。日葵、魔法師になるのに必要なこと。まずは運動神経と体力とか、それから魔法師と憑魔の知識、かな、」
とは言っても、奴隷生活を3年間続けてきた私は、体力ならあるはず。運動神経の方は運動しないからよく分からない。
「とりあえず、外出て特訓。桂と橙輝、早く来なさい。日葵も、行こう。」
「は、はい……。」
「まだ朝のしごきの時間じゃねぇぞ。」
2人とも嫌そうな顔をしている。
「なんか言った?早く行くよ!」
次に行ったのは、外の運動場だった。
「まずは走ろっか。基礎体力向上は大事!」
「僕達も走るの?」
「当然でしょ。1人5周ね。終わった頃には井川先生も帰って来るよ。」
そう、今井川先生は私のDNA鑑定をしに行ってくれている。
「日葵、一緒に走ろうよ。ついてこれる?」
「はい。体力はあると思うので、大丈夫だと思います。」
「はじめ〜!」
1周、2周、――と紅花さんの後ろを走る。
私は予想通りほとんど疲れなかった。普段の酷い生活に比べれば、たいして苦にならなかったから。
「よし、終わり!桂と橙輝あと2周追加〜!」
(え…?)
「や、なんで?!」
「俺達だけなん?!」
「だらだら喋りながら走ってたから。はい、文句言わずに走る!」
なぜか知らないが、紅花さんに2周追加される2人。
「すごいね、日葵。全然息上がってないし。疲れなかった?」
「う〜ん、それほど疲れなかったですね。あっ!」
私の指指す方向を紅花さんが見る。そこにいたのは井川先生。
「ただいま〜!走ってるの?」
(相変わらずテンション高いな……。)
「そうです。それで何か分かりました?日葵のこと。」
「名前付けたんだ、いいじゃん。それがね〜。すごいことが判明したんだよ。」
この先生によるとすごいことが判明したらしい。
(なんだろう?)
「日葵は、紅花と紅愛の妹だったんだ。」
「えっ?どういうこと…?」
「私に妹は紅愛しかいなかったはず……。異母?」
私は紅花さんと紅愛さんに会ったことがあるってことなのだろうか。ても、そんな記憶はない。
「いや、正真正銘同じ両親の妹だよ。DNAが、紅花と紅愛と全く同じだった。」
(じゃぁなんで私は天涯孤独になったんだろう?親以外にもたくさん人はいるはずなのに……。)
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次回、〜7話から9話〜
ーあらすじー
紅花と紅愛の妹だと判明した日葵。
しかし2人ともそんな記憶はなく……。
謎に包まれた日葵の出生。
魔法師になる道を選んだ日葵はどうなる?!




