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平和の鐘  作者: 雌蛸
第2章:キングの葛藤
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死神の罪悪感-Ⅰ

暴走を始めるジョージ。一方、キングは魔術師から重大な秘密を打ち明けられていた。その内容とは――

 フランツ・デューラーは、国際線ロビーで地図を眺めていた。既にバンコク経由で香港へ渡る手続きを済ませてある。一度、日本へも渡った方が良いだろうか。エマとの約束もある。フランツはその頭脳をフル回転させて、今後の動きをシミュレーションしていた。


 考え事をしている合間にも携帯電話が鳴る。フランツは電話を取ると笑顔を浮かべた。


 「フランツさん、今回はネタの提供ありがとうございました。すごい反響ですよ!」


 「いや……我々のような金の亡者の間では定説なんだよ。ソビエトが教団イブの庭設立に関与している話はね」


 電話の主はマスコミのプロデューサーであった。今回、キングの介入によって失敗に終わった連邦ビル爆破テロ。その結果を利用して、マスコミが食いつきそうなネタを流して攪乱(かくらん)を図ったフランツ。彼は予想を超える反応へ満足すると共に、さらなる警戒を強めていた。


 香港へ渡る前にもう少し種を()いておくか。

 

 「ステファン大統領もこの件には関与していると?フランツさん」


 「いや、限りなく白に近いグレーだろう。あの男では金儲けにならない。これも我々の間での定説だ。それよりも、同じ共民党のオリヴァー州知事なんだがね」


 「州警察がどうもおかしい。そうではありませんか?フランツ・デューラーさん」


 突然肩を叩かれたフランツは、さりげない仕草で通話をそのままにしておいた。だがしかし、後ろから現れたもう一人が無情にも通話ボタンを切ってしまった。


 「初めまして。私、中央情報局のホワイトと申します。こちらはブラック」


 ホワイト――州警察にいた刑事は、中央情報局の手帳を開示しつつブラックを紹介した。携帯電話を取り上げたブラックが笑顔を向ける。ホワイトは煙草に火をつけると、所在なさげに頭を()いた。


 「州警察の件は私たちも存じております。しかし、どうしたもんか……フランツさん。貴方にはソビエト工作員の嫌疑(けんぎ)がかけられています」


 「なるほど。やはりオリヴァーか。彼はどの程度まで司法を掌握(しょうあく)してるんだ?」


 「ここは自由の国です。解釈の問題ですが、詮索(せんさく)を嫌う自由もあるんでしょうなあ。我々も仕事ですので。どうかご同行願えませんか」


 ホワイトがくゆらす煙草を見つめていたフランツ。ここで抵抗するのは分が悪い。覚悟を決めた彼は、お好きにと肩をすくませた。

 




 「キング!」


 「良かった、ルーカス。歩けるようになったんだね」


 キングが人身売買部門エデンから救った子供たち。彼らはアジアンタウンの診療所で寝たきりだった。しかしエマとフランツによって国から保護され、高度医療のお陰で劇的な回復を果たしていた。


 看護師がはしゃぎ回る子供たちを笑顔でたしなめる。


 「走るのはまだダメよ。先生から言われたでしょ」


 「チェーッ!心配しすぎなんだよ。ご飯、全部食べてるじゃんか!」


 人の肉に手を出してしまった子供が口を尖らせる。彼は感染症の治りが悪く、最も予後が悪いと言われていた。廃棄(ハイキ)と呼ばれ、その命を落としかけていた子供たち。ここでは大切に扱われているのだろう。医療チームとの信頼関係が軽口(かるくち)からこぼれ落ちている。


 キングは看護師と目を合わせ、お互いに微笑み合った。


 「ねえキング。僕、考えてることがあるの」


 キングの膝に頭を乗せていたルーカスが、指をしゃぶりながら真剣な眼差しで訴えた。


 「名前があるの、僕だけなんだ。みんなにもあったらいいなって」


 「……素晴らしい事だよ、ルーカス。君の名前は光っていう意味なんだ」


 「僕が光?すごいや」


 「僕にも名前つけてよ、キング!」

 

 人の肉に手を出してしまった子供が駆け寄ってくる。彼の意志がここにいる子供たちを生かしてきたと言っても過言ではない。倫理の垣根を越えてでも生き抜こうとした強い意志。その壮絶な悪夢はキングによって消し去られた。しかし、彼はこれからも強くあり続けるだろう。


 「君はとても強い子だからね。イーサンって言うのはどうだろう。強いっていう意味があるんだよ」


 「僕の名前、イーサン……」


 イーサン。生まれ変わった彼が、顔を(ほころ)ばせて名前を噛み締める。その様子を見ていた子供たちが次々とキングを囲んだ。自分たちもとせがんでくる。キングはその一人一人に時間をかけて名前を授けた。


 「ずっと楽しみにしてたんですよ、この子たち。キングさんから名前をもらうんだって」


 「そうだったんですね。彼らはこの後どうなるんですか?」


 「当面はこの病院でという話です。一番、安全ですから」


 看護師が窓の外を見やる。人権活動家たちが病院の入り口を陣取って、人身売買の非道を訴えていた。そんな彼らをネタにするマスコミも絶えることなく群がっている。


 『マスコミや国家を最大限に利用する』そう提案してきたのはフランツだ。キングはフランツに感謝しつつ病院を後にした。永遠に会うことがなくなるかもしれない子供たちの幸せを願って。


 キングはヨシュアを討つべく、病院の屋上で死神の姿になった。白いマントが日の光を浴びてはためいている。彼は斜視を動かしながら、アンナに手渡したポケベルの位置を探った。


 「奇襲(きしゅう)をかけるつもりであれば、お止めになった方が宜しいかと」


 「魔術師」


 キングの頭上で魔術師がシルクハットを太陽の光に反射させていた。いつものようにステッキをくるりと回している。


 「ただいま私は、ヨシュアの所へ出入りが出来ません」


 「いつから……まさか、()()を殺した日から?」


 「ええ。あの死神は死んでからの方が厄介ですな。正しく死神の鏡ですよ、まったく。どうです、キング。私と少し作戦会議をしませんか」


 魔術師が頭上を浮いたまま、その手を差し伸べる。キングが手を取った瞬間、二人はひっくり返したジグソーパズルのようにその場から姿を消していった。





挿絵(By みてみん)





 州都市部にある高層ビル。()()の忘れ形見と化した要塞が守るキンドリー邸の一角、ヨシュアの執務室。そこでは、もう一体ある『()()()()()()()()()()』の特定が行われていた。


 ヨシュアが呆れ気味にファイルを放り出す。


 「『()()()()()()()()()()』の親は子供を作るのが趣味なのか?18年で22人ってどういう事なんだ、一体」


 「集落を管理してたスネークもあの世だしな」


 州警察を使って人身売買部門エデンのボス、スネークを処刑したのはヨシュアだ。オリヴァーから嫌味を言われたヨシュアはうんざりとした顔で、ソファーに足を投げ出した。


 「エデンのボスならスネークの前にもいたでしょう、父さん」


 「何を言ってるんだ、お前は。死んだから補充したに決まってるだろう。そんな簡単な理屈も分からんのか、バカ息子め」


 「ハイハイ、私はバカです。貴方とよく似たんでしょうよ」


 「親子ごっこしてる暇があったら、ステファンに直接聞いた方が早いだろう」


 部屋の隅で(たたず)んでいたジョージが生気のない声でボソリと呟く。ジョージは未だ、ヨシュアとキングの父親はステファン大統領だと思い込んだままだ。その設定とていつまで持つのか。どこを向いても頭痛の種だらけ。流石のヨシュアもこめかみを揉まずにはいられなかった。


 「ステファンが私に()()()()をやらせている話はしただろう、ジョージ。自らの手は汚したくないんだ。そういう男なんだよ、彼は」


 「キングは愚かだな。そんな男でも父親という血の方が大事だったんだろうか……待てよ、血?」


 次の瞬間、ジョージは二人の前に移動していた。どうやっても幽霊にしか見えない身体を不規則に揺らしている。彼の周囲を冷ややかな風が吹き始めていた。茶番もここまでか。ヨシュアとオリヴァーは自然と両手を挙げていた。背筋を冷や汗がひっきりなしに流れる。


 ジョージの目が人間とは思えない動きをさせながら、何かを探し始めていた。「血、血、血、血」ブツブツと口走るジョージ。ボロ雑巾のような風貌(ふうぼう)も相まって、どう贔屓目(ひいきめ)に見ても狂気の具現化(ぐげんか)としか形容が出来ない。


 「オリヴァー。お前は、ステファンから人体実験に加担させられた」


 「――……あ、ああ。ステファンはリスクを避けたがる性質(タチ)でね」


 「そうか、大変だったな。ヨシュア、お前とオリヴァーは生物学上の親子だぞ。知ってたか?」


 「……薄々……ステファンとは似ても似つかないし」


 「なら、尚更キングは愚かだな。ステファンを本当の父親だと思い込んでるんだから」


 どんなトンデモでもいい。都合の良い解釈をしてくれて助かった。二人は安堵のあまり(つば)を飲み込まずにはいられなかった。思わず喉仏を鳴らしてしまう。その音を聞いていたジョージが、あらぬ方向を見つめながら再び(ひと)()ち始めた。


 「ああ……そうか。血だよ、血。この匂いには覚えがあるぞ。()()とかいうヤツの匂いもした。クロエと同じだ。アイツがもう一体の『()()()()()()()()()()』だったのか」


 「――……ジョージ?」


 「もう一体は、トロイの女だ……姉貴を殺したのもあの女だな。血の匂いがこびりついてた……思い出したぞ」


 二人はまたしても凍り付いていた。これで何度目だろうか。もう一体の『ブラックダイアモンド』が判明したまではいい。だがレイラに姉ユカリ・モリシタを処分するよう指示したのは、他でもない()()()()ヨシュアだったからだ。しかもジョージの身体には依然、()()が錬金していった武器が張り付いたままだった。


 ヨシュアは本能で身の危険を感じていた。


 死神ですらない。()()の力が覚醒しただけのジョージが最も危険な存在だ。今の彼こそがブラックボックス。()()()()の取引も通用しない。敵意を向けられたが最後、間違いなく殺される。


 「……レイラとか言う女はキングと随分、仲が良いんだな。どこまで俺をコケにすれば気が済むんだ!キングの野郎!」


 興奮したジョージの鼻から大量の血が流れ始めていた。満足に治療もせず貧血で顔を真っ青にした彼は、本来ならば立っている事すら出来ない筈だった。だがそうはならず、ひたすらに「血、血、血、血」と口走っている。口角(こうかく)からは血を含んだ赤い泡を吹いていた。


 せわしなく動き続けていたジョージの眼球が突如、ひっくり返って白目を()いた。


 「……みつけたぞ……」


 (おぞ)ましい笑顔を浮かべたジョージ。彼は、血の乾きを癒やすために執務室から姿を消していった。ヨシュアたちにはとことん興味がないのだろう。去り際、()()が錬金した武器を軒並み落としていった。


 「……アレを本当に飼い慣らす事が可能なのか?ヨシュア」


 「やるしかないでしょう。死にたくなければ父さんも協力してください」


 二人は内臓からこみ上げてくる疲労にぐったりとした表情を浮かべていた。力が抜けてソファーにその身を預ける。オリヴァーは葉巻を取ろうとしたが、手が震えて無理だった。ヨシュアも膝が震えて足に力が入らない。


 とりあえず、偽親子の芝居はもう必要ない。


 キンドリー親子は、たったそれだけの事で祝杯を挙げたい気分になっていた。





挿絵(By みてみん)





 キングと魔術師は廃墟と化した劇場を訪れていた。予め用意をしていたのか、劇場には電気が通っている。スポットライトを浴びながら軽やかに飛び跳ねる魔術師。その隣でキングが足取りを合わせた。


 「貴方は俊敏(しゅんびん)ですがパワーに欠けますな、キング。大鎌を扱うのは大変でしょう」


 「骸骨男の持ってた武器がコレだからね、仕方ないよ」


 「どうです?手合わせしながら話をしませんか」


 魔術師はステッキの(つか)から刀を抜くと、フェンシングのように構えた。応じたキングも重心を低く取り、大鎌を構える。


 魔術師が手招きして「こちらへどうぞ」と合図を送ってくる。先手はキングだ。


 キングが大鎌を振るうと見せかけて、武器を軸に身体を回転させる。着地する寸前に、てこの原理で刃を低く振った。が、どうしても武器の動きが鈍くて見切られてしまう。


 魔術師は大鎌の刃を足で踏みつけると、チッチッチッと指を横に振った。


 「以前、武器を取られそうになった事をネガティブに捉えてますね?取られたら取り返せばいいではないですか」


 魔術師は言い終わるやいなや、刀で大鎌の刃を跳ね上げた。その勢いたるや。あまりの力にキングの身体は()にしがみつくので精一杯になっていた。


 「北風と太陽ですよ、キング。楽しんで身を任せ、踊るように戦うのです」


 キングは飛ばされながら大鎌に身を預けると、マントに武器をしまい込んだ。そして遠くで丸まったかと思うと、ボールのように劇場内を跳ね回り始めた。


 もっと自由に。もっと踊るように!


 時折、大鎌が顔を(のぞ)かせては不規則に魔術師を狙ってゆく。

 

 その様子を眺めていた魔術師が革靴を鳴らしてリズムを取り始めた。スピーカーから『雨に唄えば 』が流れ始める。ミュージカル映画で有名な曲だ。


 曲に合わせて二人はただ、戦闘を楽しんだ。


 I'm singing in the rain/僕は歌う 雨の中で

 Just singing in the rain/ただ歌う 雨の中で

 What a glorious feelin'/なんて素敵な気分

 I'm happy again/幸せがこみあげる

 

 音楽に心を委ねたキングが積極的に大鎌を振るい始めた。不思議な事に、普段はその大きさと重さに苦労しか感じないこの武器が羽のように軽い。大鎌の()に乗ったキングは、スケボー要領で魔術師の上半身を攻めた。


 大げさに驚いた魔術師がすんでのところを避けていく。


 「楽しいよ、魔術師!今ならヨシュアを討てそうだ」


 「結界の問題がまず1つありますな。()()の血が流れている貴方でも、居場所を認識出来ないのでしょう?」


 「そうなんだ。住所を知ってるのに、僕にはその場所を認識出来ない」


 「()()が厄介なのは死後の想定をしていた事です」


 「彼女は自身の死をトリガーに結界の強化を図ったのか」

 

 「さよう。もっとも、人間であれば結界内を出入り出来るのは変わらないようですが」


 「人間を巻き込みたいからそんな事をしていったのさ。()()はそういう死神だよ」


 「おや。一頃(ひところ)に比べて、随分と前向きになったんじゃないんですか?キング」


 I'm laughing at clouds/雲を見て笑ってる

 So dark up above/頭上の暗い雲を

 The sun's in my heart/太陽は僕の心にあるのさ

 And I'm ready for love/愛する準備はできてる

 

 二人は武器を空中で交換させると、揃ってステップを踏み始めた。スポットライトが心の高揚を映し出すかの如く照らし出す。キングは、ステッキをくるりと回しながら笑っていた。


 「人間と死神のハーフであれば殺せる、というのも確実ではないんだよね?魔術師」


 「ええ。いかんせん前例がありませんからね。過去に能力を譲渡された人間はいましたが」


 「能力を譲渡された人間は()()()()を殺せるの?」


 「そちらに関してはまず無理でしょうな。第一、()()()()を殺そうという発想がなかったんですよ。今まで」


 スポットライトを階段に見立てて飛び跳ねるキングの下で、魔術師がシルクハットを回転させる。ハットに足元から吸い込まれていったキングが、劇場の入り口に姿を現していた。


 Let the stormy clouds chase/嵐の雲よついて来い

 Everyone from the place/みんなここへ来い

 Come on with the rain/雨も来ればいい

 I've a smile on my face/僕はずっと笑顔さ

 

 曲が終わり、舞台が暗転して幕引きを迎えた。ライトを一身に受けたキングが、ゆっくりと階段を降りてゆく。ライトは一転して舞台へ。キングは舞台を目指して軽やかに劇場を駆け抜けていった。


 「魔術師?」


 幕の向こう側は相変わらず舞台が暗転したままだ。


 「キング。今日、貴方に話したかったのは能力の譲渡についてです」


 「能力の譲渡?」


 「ええ、死神にも寿命があるのをご存じでしたか」


 今まで聞いた事のない魔術師の真剣な声に、キングは怪訝な表情を浮かべていた。幕を上げても舞台は真っ暗なままだ。ふいに舞台奥のライトが一斉に(またた)きだしてキングは目をすぼめた。


 舞台中央では、魔術師が逆光を浴びながら宙を浮いていた。コミックのラスボスよろしく両手を広げている。


 「キング。最初に会った時の話を覚えていますか?」


 「刑務所で会った時の話かい?覚えてるよ」


 「貴方は過去を改ざんできる能力を持つ死神を探していた」


 「ああ。でもそんな能力は都市伝説だと言ったのは魔術師、君じゃないか」


 今度は舞台のライトが一斉に落ちた。キングは光の残穢(ざんえ)に軽い眩暈(めまい)を覚えながら、暗闇の中を一歩一歩進み始めた。歩みは徐々に早くなり、それと共に身体も宙を浮き出してゆく。


 「死神は嘘つきです。基本を忘れてはいけませんよ、キング」


 暗闇に慣れたキングが舞台の上にひらりと舞い戻ってくる。その瞬間だった、ピンスポットが魔術師を照らし出したのは。彼は手に仮面を持っていた。


 いつも仮面が張り付いているようとしか形容が出来なかった、魔術師の顔。はたしてそれは、本物の仮面であった。

 


 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかし、過去を改ざんするためには大きな代償が伴います」


 

 キングは魔術師の姿に愕然(がくぜん)としていた。顔があるはずの場所には、ぽっかりと穴が空いて何もない。魔術師は()めていた手袋も脱ぎ捨てた。手があるはずの場所にもやはり、何もなかった。


 今までの会話は全て直接、脳に語りかけられたもの。


 「この力は、自身の身体を代償とすることでしか使う事が出来ません。そして私は、ついに力を使い果たしてしまった」


 「……寿命は、後どのくらいなの?魔術師」


 レイラたちを見送った時に魔術師が放っていた「最後の仕事」という言葉が(よみがえ)る。あれは聞き間違いなどではなかった。


 「能力を譲渡すれば数十分。放っておいても長くて一週間でしょう。キング、この力は強大です。だからこそ貴方に譲渡したい。この力でどうか……アンナを救って欲しい」


 キングは魔術師がとうの昔に失った顔。ぽっかりと空いた暗闇へと手を彷徨(さまよ)わせていた。


 いつからか、心のどこかで魔術師に理想の父親を重ねていた。


 ある日突然、訪れた終幕でしか気づけないこともある。キングは(あふ)れくる涙に口をつぐんだまま、何度も魔術師の顔へと手をやっていた。


 

 

 ーつづくー

 

※こちらは公募作品となります。非公開機能が実装されていないので、なろうさんでの連載は第2章までとさせて頂きます※

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