壊滅
セイジの家から学校まで大体徒歩で四十分ほどだ。
今は家を出てすぐの人通りの少ない場所を二人で警戒しながら歩いているが、人っ子一人居ない道路沿いは少し不気味だ。皆、家に篭っているか避難所に避難したんだと思う。
家の近くにスーパーがあるので少し覗いてみたけど。
「やってないみたいだね」
「だな」
スーパーは外から見た感じ、シャッターが閉まっていてやっていないみたいだ。
困ったな、これじゃあ食料の補充ができないんだけど…
「最悪、食料が無くなったら勝手に入って取るしかなさそうだな」
「犯罪になっちゃうけど…仕方ないか」
「そんなこと言っていられる状況でもないしな」
警察も消防も繋がらない現状、助けを呼ぶ事もできないので食料は自分達でなんとかするしかないのだ。
避難所に行く事も考えたが。
避難所に行った場合、手がかりを探す事もできなくなると思うので避難所には行かない事にした。
「もうすぐコンビニだな」
たまに住民が避難しているのか、二人ほど遠目に歩いていくのが見えたけど、お互いに知り合いではなかったので会釈だけして去っていった。
コンビニもすぐそこといった所で人の話し声の様なものが聞こえてきた。
「誰かいるのか?」
「コンビニの所からだね」
少し遠い所からコンビニの方を二人で覗いてみると、複数人の人達がコンビニで何かをしている。
よく見るとその人達はバットとかを持ってコンビニの中を漁っていた。
歳は二十歳前後だろうか?
「あちゃー、ありゃ近づけねえな」
「五人いるね」
コンビニ内の食料を根こそぎ持っていくつもりなのか、大きな車の中に大量の食べ物や飲み物を詰め込んでいる。
「こりゃ、俺たちもうかうかしてるとやべえな」
「みんな考える事は同じだね…」
避難所に行っても助かるかわからない現状、自分達でどうにかするしかないのだ。
あの人達がやっている行為は犯罪だけど、もうそんな呑気なことを言っている場合ではない。
数分して車に詰め込み終えたのか、五人組は早々に車に乗って去っていった。
ただ量が量なだけに1回では運びきれていないみたいだ。
「どうする?」
「帰りに俺達も食料を持ってけるだけ持って行くぞ」
「今は地割れの方を優先だね」
「おう」
また五人組は食料を持っていくだろうから、こちらも早目に動かなくては無くなってしまいかねない。
今は地割れの方が優先だから、帰りにコンビニに寄って残っている分をリュックに詰め込んで帰ろう。
そしてコンビニを後にしたセイジとコウは学校まで歩いて向かう。
学校がもうすぐそこと言った所で、少し遠いが発砲音の様な音が聞こえてきた。
何発も撃っているのか、途切れること無く音が聞こえてくる。
「近いな」
「うん」
二人は警戒しながらも学校まで歩いていく。
「やっぱり校門閉まってるね」
「さすがにな」
二人は校門をよじ登って学校の敷地内に入る事にした。
意外と学校の校門は高さがあまりなく、柵も足が掛けやすくなっているので登りやすい。
不審者を入れない為の校門なんだろうけど簡単に登れちゃうよね。これなんの意味があるんだろ?
流石に玄関のドアは鍵が掛かっていたので周りの窓が空いていないか別れて探す。
「保健室の窓が空いてる。そっから侵入するぞ」
「おっけ」
運良く保健室の窓に鍵が掛かっていなくて入れたのでよかった。
最悪、窓ガラスを割るしかなかったし。
セイジとコウは学校に侵入し、屋上が繋がっている階段を登っていく。
屋上はいつも空いているので鍵は閉まってないはずだ。
「にしても…誰もいない学校はなんか不気味だよな」
「もしかしてコウ、ビビってる?」
「なわけねーだろ」
俺はめちゃくちゃ怖いけどね!!!
え?なに?めちゃくちゃお化けとか出そうなんだけど。昼間なのに…
不気味すぎて吐きそうなんだけど!?
「よし開けるぞ」
「おっけ」
屋上に出た二人は外の様子を見る。
そして唖然とした。
離れた所で煙が上がっているのが見える。それも複数だ。
火事の様にも見えるし、違う所ではめちゃくちゃデカい鳥?のようなものが飛んでいた。
「うわ、なんだあれ」
「めちゃくちゃ遠い筈なのに、普通の鳥のサイズに見えるって大分デカいよあれ…」
あんな鳥は見た事がない。あれも地割れから出てきた化け物だろうか。
にしてはデカすぎる。人が襲われたら丸呑みにされてしまいかねない。
「コウ、望遠鏡持ってきてたよな?」
「あ、あるよほら」
学校の屋上から見るにあたってリュックには望遠鏡も入れて置いたのだ。
コウは地割れの方を望遠鏡でじっと見ているみたいだ。
裸眼では地割れの方はあんまり見えない。
ただ地割れの大きさが尋常ではない事だけは確かだ。
地割れの近くにあった家は崩壊しているし、大きさも学校の体育館並にあるのがわかる。
「やべえな」
そう言ってコウは見た方が早いと言って望遠鏡を渡してくれる。
望遠鏡で地割れの方を見てみると、自衛隊の人達が大型犬?の様な生物や、人の形をした化け物を銃で撃っているのがみえる。
発砲音はあそこからみたいだ。
化け物達はそれ程強くないのか、銃で撃たれたらすぐに粒子になって消えていってる。
ただ地割れから際限なく出てくるのか自衛隊の人達も焦っているように見えた。
「このままだとまずいな」
そう。銃があるから今はこちらが有利だけど玉の数も有限だ。尽きればそこで終わりだ。
後は近接でやるしかない。
そうなったらもうジリ貧だろう。
こちらは噛まれたらそれまでだし。
「自衛隊がやられたら街の方に化け物がやってくるのも時間の問題だね」
「世界の終わりってか」
地割れの方を見てみたが、大分深いのかここからでは望遠鏡を使ってもよく見えない。
情報はあんまり無さそう。
地割れの中まで行けば何かあるのかもしれないけど、流石に無理だ。
一瞬で粒子になって終わりだ。
銃があれば…なんて考えるがあの数を相手にこちらは二人。
数で押されて終わりだ。
「一旦家に戻るか。あのままだといずれ化け物達がやってくる。それまでに食料を集めるぞ」
「そうだね」
そう話し合っていたら遠くから鳥の化け物が段々と近くに飛翔して来ているのが見えた。
「ま、まずいぞ!」
その巨鳥は自衛隊の方に向かっていき、銃を撃っていた自衛隊に突っ込んだ。
自衛隊は突っ込んできた巨鳥に銃を乱射するが全く効いている様子がない。
というかなにかバリア?みたいなものに弾かれている。
そこからは…蹂躙だった。
巨鳥が暴れ回り、人の姿をした化け物達にも襲われ死んでいく自衛隊。
戦線も崩壊していた。