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千と八人の転生者  作者: 紗琉瑠
第一章 【終わりの始まり】
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親友

 母が眠りに着いてから数十分が過ぎたが、セイジは依然と母が眠る前から動かなかった。いや、動けなかった。


「母さん…」


 テレビから流れる緊迫したニュースには目もくれずにじっと母の傍に居たら。

 突如母の周りから光が現れた。


「な、なんだ?」


 母は光輝いて粒子のようなものに変わっていく。

 セイジはどうする事もできずそれを唖然と見ていたが、やがて母の面影が無くなっていき遂には光と共に消えてしまった。残ったのは母が着ていた衣類だけだ。


「母さん…?何が…」


 訳がわからない。

 どうして消えたんだ?

 セイジは戸惑いながらも母の死と母が消えた現象について考え始めるようになった。


「粒子になって消えるなんてまるでファンタジーじゃないか…」


 普通そんな事は有り得ない。死体が消えるなんて今まで聴いたことないし。

 地割れから化け物が出てくる事といい、死んだ人が消える事といい、なにか物凄い事が起こっているような…


「ファンタジーな世界になったとか…?ま、まさかね」


 セイジは今の現象とニュースで見聞きした情報から推測するが余りにも突飛な発想すぎて訳がわからない。


 もし仮にファンタジーな世界になったとして…母を生き返らせることが出来るなんて事は有り得ないだろうか。

 少し光が見えた気がしたが、現状なにをどうすればいいのか分からず結局落ち込んでしまう。


 ブルブル


 携帯に着信が入った。

 こんな時に誰だよと、内心思いながら携帯の画面を見てみると(コウ)と表示されていた。


「コウ!」


 すぐに手に取り携帯を耳に当てた。


「あーもしもし?聞こえるか?すまん、こっちも今帰ってきた所でよ」


「うん!聞こえる…無事でよかった」


 コウの声をきいてなんだか涙が…


「大丈夫か?」


「俺は大丈夫。コウの方こそ大丈夫なの?」


「嘘つけ…声震えてんぞ。俺は大丈夫だから心配すんな。何かあったのか?」


 コウとは付き合いが長いからすぐに嘘なんてバレてしまう。


「母さんが…」



 セイジは涙を流しながら事の顛末をコウに話した。

 コウはまじか…と言いながらも俺の話を最後まで聴いてくれた。


「そうか…セイジの母ちゃんが…でも粒子になって消えたってどういうことだ?」


「それが俺もわかんないんだ」


「確かにファンタジーみたいな話だが…」


 コウは冒険とかファンタジーが好きでよくその手のゲームをやっているからその手の話題には詳しい。

 コウなら何かわかるんじゃないかと思ったけど…


「やっぱり母さんはもう…」


「いや、まだはやいぞ」


 コウはまだ、希望はあると言って話してくれた。


「確かに粒子になって消えるなんてゲームみたいだ。ゲームだったら復活する事ができるから、もしかしたら…希望はあるかもしれん」


 そう言ってコウは俺も自信はないが、といいつつファンタジーゲームで知り得た知識を俺に教えてくれた。

 復活するアイテムだったり復活の魔法といった、非現実的なことを詳細に語ってくれた。


「今の段階じゃ、それがどこにあるのかとか本当に存在するのかとかはわからねえが。可能性はある」


「可能性があるなら俺はそれにかけてみるよ」


「あぁ。塞ぎこんで何もしないよりかはマシだ」


 コウにはいつも助けて貰ってばかりで本当に頭があがらないな…


 可能性は低いけど母さんを生き返らせる事ができるかもしれないという希望が見えたんだ。俺はそれを探してみることにする。


「俺の目標は決まったけど…コウの方はどうするの?」


「何言ってんだ?手伝うに決まってんだろ。まあ親父のとこに行こうか連絡したらよ」


  「「あぁっ?俺より恋人とかダチの心配しとけや」」


「って言われてよ。まあ親父は結構頑固だからな、大丈夫だろ。てか俺恋人居ねえし」


 さすがコウのお父さんだな…

 子は親に似るっていうか…いや、コウはそれにプラスしてアホがついてるからこっちの方が酷いか。


「今外でれねーしなー」


 そう。言い忘れていたがコウは今一人暮らしなのだ。

 俺と同じで兄弟も居ないしお父さんと二人暮しだったみたいだけど、高校に入ってからは自立しろやって言われて今絶賛ボロアパートで一人暮らしをしている。


「外って結構やばいの?」


「やべえなんてもんじゃねえぞ?そこらじゅうから煙あがってるしな」


「うわぁ、そっちはそんなにやばいのか」


 コウの住んでいる所は学校の近くにあるコンビニの近所だから、結構人通りが多い場所だ。


「セイジんとこはどうなんだ?」


「こっちは鈴虫が鳴いてるよ」


「なんともないってことな」


「いやまあ…」


 俺が住んでいる所は一軒家で、隣の家もそこそこ遠いからあんまし騒ぎとかは聞こえてこないし見えないのだ。


「うーん、まずは合流したほうがいいよな?そっちはまだ安全だろうし俺がそっち向かうか」


「でも外には人を襲う化け物みたいなのがいるんでしょ?大丈夫なの?」


「任せろ!そんなもん俺の神剣で叩き割ってやるわ!」


「え?神剣って…」


 やっぱりコウはアホだ。

 中学生の時に修学旅行で買った木刀でなんとかなると思っているあたり筋金入りのアホだ…


「まあネットを見る限りだと、人を襲う化け物?みたいなやつらは倒せない事はないらしいぞ」


「え?そうなの?」


「今見てたんだけど、頭を叩き割ってやれば倒せるらしい。というかこいつら倒したら粒子になったって書き込みとかあるぞ…」


「え?あの化け物も死んだら粒子になるの?」


 それは…母さんと同じ、か。

 なんともまあ不思議な事がおきているものだ。


「みたいだな…。ただまあ噛まれたら確実にこっちは死ぬらしいがな!ハハッ!」


「コウ…ばいばい」


「いや噛まれねえよ!?」


 こんな絶望的な状況でも冗談が言えるコウは本当に凄い。

 落ち込んでいた俺を励ましてくれているのが何となくわかる。

 コウには敵わないね。

シリアスはきらいです

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