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千と八人の転生者  作者: 紗琉瑠
第二章【始まりの冒険と精霊】
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願いと神秘

前話の内容を少し変えました。

 何事もなく未開の森で一夜を過ぎた。

 うさちゃんに起こされることも無く、朝を迎える。


 「いてて」


 木に持たれかかって寝ていたせいで身体が痛い。

 取り敢えず魔物に襲われる事が無くて良かった。


 にしても。


 「ここどこだろう…」


 我武者羅に走って来たので来た方向が全くわからなかった。

 ここからどっちの方向に行けば戻れるのか、そもそも戻って行ったとして皆は無事なのか。


 そんな事を考えながらお腹が空いたので朝食として干し肉と石パンを食べる。


 まずはこの森から出なくては。

 ルードの街まであと馬車で二日程だった筈。

 なら馬車の所まで戻って、歩いてルードの街まで行くしかない。


 だが戻ろうにも方角がわからなかった。


 「うさちゃん、馬車があった場所わかる?」


 「キュー」


 わからないですよね。

 参ったな。

 適当に進む訳にも行かないし…


 これからどうするか考えていたら、森の奥から茂みを掻き分けて魔物が現れた。


 「ゲギャッ」

 「ゲギャッゲギャッ」


 あ、見つかった。

 どうしよ。


 魔物はゴブリンだった。

 手には木の棒を持っている。

 それが三体。


 ゴブリンとはいえ俺が倒せる相手ではない。

 なので逃げる事にした。

 方向はゴブリンとは真逆。

 こっちの方向で戻れるのかとか、一瞬頭を過ぎったが今はゴブリンから逃げる事を第一に考える。


 逃げた。

 後ろから追ってくるゴブリンの鳴き声を背に、森の茂みを掻き分けて逃げる。


 途中、何度も木の枝に引っかかってかすり傷を負うが、それでも構わず走り続けた。


 ゴブリンも足はあまり速くないのか何とか逃げる事に成功した。


 「はぁはぁはぁ」


 流石に五歳の身体で走るのはキツかったが、小さいお陰かゴブリンも俺の事を見失った様だった。


 こんなの死んでまうわ!

 今は何とかゴブリンから逃げる事が出来たけど次はそうとも限らない。

 足の速い魔物に見つかったらそこで終わりだ。

 俺に戦う力何てないし、スキルも戦闘系ではない。

 魔法も治癒魔法しか使えないし、固有スキルも召喚魔法だけ。

 うさちゃんを召喚しているとはいえうさちゃんも戦う能力何て殆どない。

 正しく絶対絶命。


(戦闘系のスキルが良かったなー)


 そう思うのも仕方のない事だった。


 あれから一日中歩いた。

 幸いにもうさちゃんのお陰で魔物が近くにいる時は隠れてやり過ごした。


 遠目に四本腕がある熊の様な魔物が居た時は死んだと思ったけど。


 日も暮れ出した頃。

 声が聞こえた。俺を呼んでいる声だ。

 最初は誰か居るのかと思って探したけれど、見つからない。

 気の所為かと少し気落ちしてまった。

 でも何となく呼ばれて居るような気がして。

 当てもなく歩いていく。


 湖を見つけた。

 森の中にぽっかりと空いた空間に佇む湖は綺麗で。

 夕日に輝く湖はとても神秘的で。


 とても落ち着く場所だった。


 飲水も確保出来るし、魔物も寄り付かなそうなとても神秘的なこの場所で一晩を過ごそうかな。


 普通なら魔物は水辺に多く生息しそうな物だけれど、ここはそんな感じが全くしなかった。


 「ごめんねうさちゃん」


 「キュ?」


 「俺がこんなに弱いばっかりに」


 「キュ…」


 五歳の俺が何を言ってるんだか。

 普通はそこまで責任をおう必要はない。

 なのにも関わらずガラクさんが怪我をして、テイルズさんとソートさんに逃がしてもらって。

 俺は思ってしまったんだ。


『強くなりたい』と。


 強く無ければ誰も守る事はできないし、冒険者になる事だって出来ない。

 旅とか冒険なんて以ての外だ。

 まずは自分の身を、いや。

 自分の身だけじゃない、他の手の届く人達を守れるぐらいには強くなりたい。


 「強くなって冒険とか旅がしたいなぁ」


 初めは奴隷。

 そしてセトさんに買ってもらって。

 でも固有スキルを持っているから国に狙われて。

 違う国に行ってやっと自由になれると思ったのに。


 たった二体の魔物に絶望のどん底に落とされて。


 それでも夢は諦めきれない。

 約束したんだ。

 旅をして冒険をして。

 どんなに絶望的な状況でも。

 笑って乗り越えるって。

 母さんと約束したから。


 「うさちゃん、今日は寝よっか。こっちおいで」


 食事は取らなかった。

 残り少ない食料を消費したく無かったのもあったけど、お腹が空いていなかったから。


 「キュ」


 疲れた。

 うさちゃんを抱き締めて俺は眠りに着いた。








 「♪〜♪♪〜」


 歌が聞こえた。

 とても綺麗な透き通る様な歌声。


 ん…


 何だかとても寝心地がいいな。

 頬を撫でられた。


 くすぐったい。


 うさちゃんかな?

 全く。


 そして目を開けると人が居た。


 「あ…」


 「おは」


 誰この人。


 「お、おはよう」


 取り敢えず挨拶をされたのでこちらもしておいた。


 その人は銀色の髪と銀色の瞳をしていた。

 肌は真っ白で、顔はこの世の人とは思えない程、綺麗に整っている。


 今俺はその人に膝枕をされていた。

 うさちゃんを抱いたまま。

 てかまだ寝てるし。

 何呑気に寝てんだこの兎。


 取り敢えず膝枕は申し訳無いので頭を上げようと思ったらガッシリ掴まれた。



 「やっと会えた」


 やっと会えた?どういう意味だろ。

 てか離せ!



 「え、えと。誰ですか?」


 「ルナリア。君は?」


 ルナリアさんね。もう離してくれないのでこのままでいいや。


 俺の名前か。

 俺の名前は…


 「俺に名前はないよ」


 何となくこの人には嘘をついてはいけない様な気がしたので正直に言ってしまった。


 「ない?」


 「うん…」


 「そう…じゃあ私がつけてあげる」


 は?

 いやいや。

 名前は大切な人から付けてもらいなさいってセトさんに言われてるし。


 「いや。名前は大切な人につけてもらうから大丈夫です…」


 「私は大切じゃない…?」


 「いやそういう訳では無いけど」


 何で泣きそうになってるの!?

 俺が泣かしたみたいじゃないか。


 「じゃあ付ける」


 ………



 「えと…はい」


 負けた。

 そんなうるうるした目で見られてどうやって断れと言うんだ。


 「んー」


 悩んでいるみたいだ。

 頼むから変な名前にしないでください。


 「リアム。君はリアム」


 リアム?

 ほー。中々いい名前じゃないか。


 「由来は?」


 「私の名前からとった」


 「そうですか」


 「君は特別だから」


 特別?何がだろ。


 「リアム」


 「何ですか?」


 「む…敬語だめ」


 なんでだよ。

 この人もセトさんと同じ事言うんだな。


 「わかった」


 「リアム」


 「なに?」


 「歌は好き?」


 歌?いやまあ別に嫌いではないけど…

 どっちかというと好きかな?

 でも何でこんな質問してきたんだ。


 「好き…かな?」


 取り敢えず好きと言っておいた。


 「じゃあ歌ってあげる」


 そう言ってルナリアは膝枕をしながら歌ってくれた。

 この美しい湖で歌うルナリアはとても綺麗で、まるで女神様が祝福しているかの様だった。



 「♪〜♪♪〜」


とても安らぐ歌声で俺は再び眠りに着いた。



 いつまで寝てんだこの兎。


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