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千と八人の転生者  作者: 紗琉瑠
第二章【始まりの冒険と精霊】
30/54

ゴブリン

 ガタンゴトン…

 ガタンゴトン…


 馬車に揺られながら乗客の人達は世間話をしている。

 横は布が無いので辺りの風景を眺めていた。

 今は畑がある場所を馬車でゆっくりと走っている。

 遠くの方では農業をしている人達が見えた。


 こんな朝早くにご苦労さまです。


 今、石で出来た道路の様な場所を走っている。

 この道路、石が押し固められた様に出来てるけど、どうやって作ったんだろ?横幅も馬車が二台は通れるぐらいのスペースがある様にも見えるし。

 これも魔法だったりするのだろうか。


 そんな事を考えていると、俺の横に座っている十歳ぐらいの男の子が話しかけてきた。

 男の子の隣にはお父さんが居るが、朝も早いので寝てしまった様だ。


「俺、ガイって言うんだ。君は?」


「俺は…」


 困ったな。

 名前が無いって言ったら変に思われるだろうし…

 取り敢えず適当に答えとこうか。


「アトラ」


 ごめんアトラ。咄嗟に思いついたのがこの名前だった。

前世の名前か迷ったけど何となくアトラの名前が出た。


「君何歳?」


「ごさい」


「なんで一人なの?」


 なんで、ね。

 まあ親に捨てられて奴隷になった俺が、セトさんに買い取られて今正に逃亡中の身。

 とは言えないので。


「サンクトの街に親戚の人が居るからそこにいくんだ」


 そう言っておいた。

 まあサンクトの街に行ってもすぐに街を出るつもりなので関わるのはここだけだと思うし。



「そうなんだ。一人で行くなんてすごいね」


「まあね」


「五歳って事はスキル授かったんでしょ?何のスキルだったの?」


 む。この子ぐいぐい来るな。

 まずは人のスキルを聞く前に自分のスキルから言いなさい!

 と言ってやりたかったが、気まづくなるのは嫌なので素直に答える。


「【鍛治】だよ」


 ごめんアトラ。


「へえー。僕は【斧術】なんだー」


 と自慢してきた。

 斧術ね。まあ確かに戦闘スキルなので冒険者とかになりたい人にはいいスキルだと思うけど。


「すごいね」


 ま、適当に褒めとこ。


「でしょ!俺、もうすぐで十歳になるから冒険者になるんだ!」


「おー。がんば」


 ふむ。やはり子供は冒険者に憧れるものなんだな!

 俺も冒険者に早くなりたいし。


 そんな風に談笑しながら馬車を走らせていく。


 護衛のローブを被った女性は、誰とも喋らず無口だ。

 人見知りなのかな。



 そうして幾分時が過ぎた頃。

 馬車が急に止まった。


 話し疲れて、俺もガイも船を漕いでいたので少しびっくりした。


 な、なんだ?


 馬車が急に止まった事で他の乗客も慌ただしくなってくる。



「セナ、ゴブリンだ。三匹だから俺が片付ける。お前は乗客の護衛をしててくれ」


 そう言って御者の隣に座っていた剣士の冒険者がローブを羽織った女性、セナと言うらしい。に声を掛けてきた。


「わかったわ」


 セナは男の冒険者に返事をして馬車から飛び出す。


「貴方たちはここに居なさい」


 そう俺たち乗客に声をかけてきた。

 馬車から降りて護衛する様だ。



 ゴブリンって言ってたよね?

 ゴブリンって言えばファンタジーじゃ定番の魔物。

 人目見てみたいんだけど勝手に馬車から降りる訳にはいかないし。


 取り敢えず、待機してゴブリンの死体だけでも見れないかと少し期待する。



 三分ほど経った頃、男の冒険者が乗客の俺たちに


「終わったぞ。剥ぎ取りが終わったら馬車を出す」


 そう言ってきた。


「セナ、お前も手伝え」


「えー。ロイ一人でやってよ。汚れるの嫌だし」


 男の剣士はロイって言うのね。

 てかセナさん手伝ってあげろよ。


「お前は…まあいい」


 いいんかい。

 あれか?惚れてるのか?リア充か?

 女の子には甘いってやつね。はいはい。


 そしてロイはゴブリンの剥ぎ取りに行ったらしい。

 何を剥ぎ取るのか知らないけど。

 そんな事よりも。



「ちょっとトイレいっていい?」


 そう、セナさんに話しかける。


「あんまり遠く行かないでよ」

 

「はーい」


 トイレという名目でゴブリンを人目見たかったのだ。


 馬車から降りるとそこは原っぱの様な場所で、道路も石から土に変わっていた。

 土は綺麗に押し固められていて道幅はさっきと同じぐらい。

 いつ土に変わったんだ?気づかなかった。


 遠くには山があって緑が生い茂っている。

 太陽は丁度真上にあるので時間はお昼ぐらいだろうか。


 そして、道路の脇らへんでゴブリンの死体が三つあった。

 死体の傍で何やらナイフを取り出して剥ぎ取りをしているロイの様子が分かる。

 少し遠いけど、何とか目に収める。


 ふむふむ。

 やっぱり想像した通りの姿をしている。

 緑の肌に、少し遠くて見ずらいけど顔も気持ち悪い顔なんだろうな。

 背は俺より少し高いぐらいかな?横になってるから推測だけど。

 確か、ラビットはF級下位の魔物だった。

 なのでゴブリンはG級中位ぐらいの魔物だろうか?


 俺一人でも倒せないだろうな。

 まあうさちゃんとなら可能性は…ないな。

 うさちゃん絶対イチコロだな。


 その後、トイレをちゃっかりとしつつ、うさちゃんを出そうか悩んでいた。


 出すなら今だよね。

 今まではセトさんや他の人が周りにいたので召喚できなかったけど、今は一人だ。


 なので今のうちに召喚してうさちゃんを皮の鞄の中に入って貰えばいいかなと思っているんだけど…

 うさちゃんがちゃんと静かにしてくれるだろうか。


 うさちゃんの存在がバレると色々と面倒臭いのであまり表に出したくなかったんだけど。

 うさちゃん寂しがり屋だし、召喚してやらないとすぐに拗ねるのだ。

 だからなるべく一人の時は召喚してあげてるのだけど。


 取り敢えず召喚してうさちゃんに鞄の中なら外に居られるよと伝えてみよう。

 嫌なら帰還してもらう。


「【召喚】」


『召喚』と発した後、原っぱの地面に銀色の魔法陣が現れて銀色の光をほんのり出しながらうさちゃんが召喚される。


「キュッ」


 よっ!

 って言われた。


 いや、挨拶なんだろうけどさ。

 何かうさちゃんがやると変なんだよね。

 そういえばうさちゃんは雄なのか雌なのか気になって聞いた事があるんだけど、どちらでもないらしい。

 まあ聖獣だからだろうけど。


「今、他の人と一緒に馬車に乗ってるんだけど、鞄の中に入って静かにしてくれるなら帰還せずに一緒に居られるよ。どうする?」


 そう言うとうさちゃんは。


「キュー…キュキュ」


 ふむ。これは

 えー… 仕方ないな。

 だね。


 何となくでしかわからないけど。

 多分そう言ってる。


「ちゃんと静かにしててよ?バレたら串肉にされちゃうよ」


「キュキュ!?」


 めっちゃ焦ってた。

 冗談だよ。



 多分。




 そんな感じでうさちゃんを鞄の中に入れる。

 うさちゃんは手乗りサイズなので、鞄の中に入れるには入れるけど、革製だから少し居心地が悪いかもしれない。


 それでも帰還はされたくないのか黙々と鞄の中に入ってくれた。


 これでもしめちゃくちゃ強い魔物が襲ってきても透明になってやり過ごす事が出来るね。

 まあ透明になれるのは三十分だけど!

 因みにまだうさちゃんは『幻影魔法』のスキルはこの認識阻害という実質、透明魔法。しか使えない。



「もどりました」


「じゃあ出発するよ」


 トイレから戻った。

 再び馬車が走り出す。


 ガタンゴトン…

 ガタンゴトン…



 ゆっくりと、しかし歩くよりも早い速度で土の道路を走る。

遠くの方では鳥が鳴いており、時折見える緑溢れる山はとても大きかった。



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