終わりの始まり
今日は夏休み前で期末テストも近いので皆、部活は休みだ。
いつも部活がない日はセイジかコウどちらかの家で遊ぶか、駅近くまでいって何をするでもなく遊ぶのだけど、今日は家の用事があるとかでコウとは別れた。
テストも近いので今日はどこにも寄らずにそのまま帰宅した。
「ただいま」
ただいまとは言ったものの返事はない。
母は夜遅くなると言っていたので家には誰も居ない。
ちなみにマミーと俺との二人暮しだ。父は俺が幼い時に交通事故で他界した。だから父も居ないし兄弟も居ないのでたまに寂しいとは思うけど母1人で育ててくれた恩があるので母には感謝をしている。
夜ご飯は昨日の残りのカレーがあるのでそれを食べてくれと言われている。カレーは何処のご家庭でも2日は続くよね?
流石に三日目まで来ると飽きちゃうけど。
セイジの部屋は2階だ。
階段をあがったすぐの所に部屋がある。
部屋で勉強をしていたら地震だろうか。
僅かな揺れを感じた。ほんのわずかな揺れだったので気の所為かもしれないと思ったけど。
念の為、勉強の手を止めて警戒する。
少ししても何も起きなかったので警戒を緩める。
(今の地震かな?昨日も地震あったみたいだし最近多いな)
少し不安になりながらも、今日はもう勉強は終わりにしてゆっくりしようと1階のリビングまで降りてきた。
時計を見ると18時を少し過ぎた辺りだったので夜ご飯にする。
リビングにはテレビが置いてあって台所と近いのでカレーを温めながらテレビのニュースを見ていた。
「〇〇市で昨日未明、小学5年生の〇〇 〇〇君が行方不明になり捜索が…」
「〇〇県では昨日の地震での被害は軽傷者が127名、重傷者が13名、行方不明者が…」
3日ほど前もこの近くで行方不明者が出たって話だったけど昨日も行方不明者がいるのか。最近多くて不安だ。事件に巻き込まれてなければいいけど…
「緊急地震速報です。」
(ん?また地震か、やっぱりさっきのは地震だったかな)
「〇〇県で今日18時7分にマグニチュード7.2の揺れが観測されました」
「津波の心配はありませんが余震が続く恐れがあるので…」
まさかの自分が住んでる県だった。
そんなに揺れてなかったと思うけど…地区によって違う?そんなことあるのだろうか。
依然として緊急地震速報が続くニュースに不安を覚える。
母に連絡して無事かどうか確認しなくては。
母の職場は家から駅が2つほど超えた辺りにあるのでまだ近い方だけど…大丈夫だろうか。
母に携帯のSNSでメッセージを送ってから、コウにも安否確認の連絡をした。
余震の可能性もあるから避難の準備をして返信を待つが2人共なかなか返事が来ない。
取り敢えず余震すら全くないのでニュースを見ながら少し冷めたカレーを食べる。
カレーを食べながら携帯で念の為避難場所を調べていたら。
「そ、速報です」
ガヤガヤとニュースキャスターの後ろで慌てたように人が行き来する中、速報を伝える声は戸惑っているのか少し震えているようにも思えた。
(また何かあったのかな?)
「昨日〇〇県で地震の影響で地割れが発生した穴から、ひ、人が出てきたと報告がありました」
(人?落ちてしまった人が救助されたとかだろうか?)
「そ、それが…地割れから出てきた人が近くに居た人を襲っていると報告が…」
「ま、また隣の〇〇県でも地割れから出てきた大型犬に襲われるという被害が相次いでいます」
(人が人を襲っているって… 大型犬におそわれる?)
何を言っているのか意味が分からなかった。
ニュースキャスターさんもよくわかっていないのか、しきりにカメラでは見えない所で小声で誰かと喋っているみたいだった。
「た、ただ今入った情報によると…全国で地震が相次いでいると…地割れも地震と同じくして発生しているそうです」
全国で地震が発生していてニュースキャスターの人も大分焦っているみたい。
「地割れがある場所には絶対に近づかないでください」
「自衛隊が出動するとの報告がありました、くれぐれも地割れには近づかないよう…」
自衛隊まで出動するのか。なんだかやばい事態になってる。
全国で地震と共に地割れが発生しているって…
『ただいま、電話に出ることができません』
「くそっ」
母に電話をかけているけど全く繋がらない。
そろそろ暗くなる頃だからもう帰宅の途中だとは思うけど…
母は車で出勤していて運転中だから出れないということも有り得る。
コウからも全く連絡ないし、どうすればいいんだろうか。
2人共無事であることを願いながらニュースを見ていた。
SNSの情報によると地割れはセイジが通っている学校のすぐ近くに出来たらしい。
少し経って、全国で地震が相次いでひっきりなしに地割れから出てきたナニカによって人々に被害が出ていると報道されていた。
1時間を過ぎても帰ってこない母に心配で電話を何回もかけるが…無慈悲にも機械音声だけが鳴り響くだけだった。