74話 最終話
ふわふわふわ。
私はお空の上を飛んでいた。
なんだろう?
一体何がどうなったのかな?
ルヴァイス様は大丈夫?
一緒にいてくれたレイゼルさんは?
私があたりを見回すと、そこは一面真っ白な場所でレイゼルさんが手を振ってくれた。
レイゼルさん!!
私は嬉しくて「あー」って言いながら抱き着くの。
レイゼルさん無事だった!? よかった!! 本当によかった!
私がそう言うとレイゼルさんは優しく微笑んでくれた。
嬉しい戻ってきてくれた、会いに来てくれた! もうこれからはずっと一緒?
私が言うと、レイゼルさんは首を横に振る。
――力を使いすぎました、これ以上はこちらの世界に留まることができません――
え……
――また、必ず会いに来ます。それまではここで待っていてくれますか?――
レイゼルさんの言葉に私は頷いた。
『絶対会いにきてくれる?』
――はい。必ず。次に会うときはすべてをお話できると思います。
ソフィア様、一つだけお聞きしてもよろしいですか?――
うん!
――いま、幸せですか?――
レイゼルさんの言葉に私は笑顔になる。
幸せだよ。 大好きな人と婚約して、好きな事をさせてもらえてる!
レイゼルさんとの約束ももう少しで果たせそうなの!
レイゼルさんに紹介したいな!
ルヴァイス様はとってもいい人で、優しくて、かっこよくて、私の事を大事にしてくれるよ、とっても幸せ。
ほかのみんなもいい人ばかりなの!! きっとレイゼルさんとも仲良くなれると思う!
私がそう言うとレイゼルさんはすごくうれしそうに微笑んでくれた。
レイゼルさん。
――はい?――
レイゼルさんは私のお父さま?
私の問いにレイゼルさんは微笑んでおでこにキスをしてくれた。
◆◆◆
「わーわー」
歓声があたりを包み込む。
あれから季節は廻り私は18歳になった。
足元には聖獣に戻ったクロムが一緒にいてくれる。
私の【錬成】の力で聖獣に戻ったのはいいのだけれど、かわいい小型犬くらいの大きさになっちゃったの。助けたお礼に私の守護獣になってくれたんだ。
私は白いウェディングドレスを身にまとって一歩広場にでると、たくさんの国の竜人さんたちが歓声をあげてくれた。
今日は私とルヴァイス様の結婚式。
竜王国の王都の神殿でいま私たちは結婚式を開いている。
神殿の広場に出ると、お父様が待っていてくれて、私の手をとって一緒に歩みだす。
お父様に手をひかれて、ルヴァイス様の待つ祭壇まで歩くんだ。
ありがとうってにっこり微笑んだら、お父様も微笑んでくれた。
お父様――レイゼルさんはエルフの皇子だった。
魔王との闘いで、かろうじて勝ったのだけれど、魔王がお父様を道ずれにしようとした。
必死で抗って殺されずにはすんだのだけれど地上に落ち記憶と力の大半をなくしてしまったの。
天上ではお父様は死んだと思われていて誰も迎えに来なかった。
お父様が助かったのはたまたまだった。魔族が地上に降りて何かやろうとしているからとそれを偵察していたエルフがお父様を見つけた。
魔族の狙いはお父様を殺す事だった。エルフたちは気づいてなかったけれど魔族はセスナの炎を使ったデイジアを通じてお父様の生存を知って殺しにきた。
それを追いかけてきたエルフによってお父様は助け出されたけれど、魔族に負わされた傷で意識のないまま天上へと運ばれた。
その時お父様に意識はなくて、エルフたちに私の存在を教えることのできないまま、治療室で治療を受けていたんだって。
それでもお父様はペンダントを通じて私を守っていてくれた。
意識体になって私のそばにずっといてくれていた。
そして一年前治療が終わって私のところに来てくれたんだ。
ルヴァイス様と結婚するって伝えたら本当に喜んでくれて嬉しかった。
こうして結婚式に家族として参加してくれたんだよ。
他の家族は――姉のデイジアと竜神官達は魔獣を復活させた罪で、お母様はお父様を殺そうとした罪でそれぞれ竜人とエルフに裁かれたんだ。
どうやって裁かれたかはお父様は笑って「ソフィアの気にすることではないですよ」と話してくれなかった。ここに来ることはないと思う。
ここまでいっぱいいろいろな事があって。
辛いことも、痛いことも、苦しいこともあったけれど。
お父様に会えて。
ルヴァイス様に会えて。
王宮の人たちに優しくしてもらって研究所の人達とも仲良くなれた。
だからすごく幸せだよ。
お母様とお姉さまには愛してもらえなかったけれど、いっぱい愛をくれる人が今はいてくれる。
「幸せになるんだよソフィア」
祭壇のアーチの前につくとお父様が微笑んで、手の甲にキスをしてくれて、私は頷いた。
そしてアーチでお父様と別れて私は一歩一歩階段を歩くの。
祭壇の前に司教とそこにいてくれるのは――私の大好きな人。
すべてにおいて自信のなかった私をいっぱいほめてくれて勇気をくれた人。
愛される言葉なんて知らなかった私にたくさんの愛の言葉をくれた人。
私のことを本当に大事にしてくれて守ってくれようとした人。
頼もしくて、とっても強くて、頭がいいけれど――すぐ一人ですべてを背負い込んでしまおうとする人。
私の大好きなルヴァイス様。
「行こうソフィア」
そう言って微笑んで私に手を差し出してくれた。
祭壇に到着した私の手を今度はルヴァイス様がとってくれて、一緒に歩きだす。
「本当に私でよかったのか?」
ルヴァイス様がこんな時になってまでそんなことを聞く。
ダメだよこういうときにそんなことを聞いたら。
ルヴァイス様の肩にとまっていたキュイが「キュイ」って怒って、足元で一緒にちょこちょこ歩いてたクロムも「がうっ」って鳴いた。
怒られて、ルヴァイス様が困った顔になるのがかわいくて、私はにっこり笑って「あー」って微笑んだ。ルヴァイス様でいいのじゃないの、ルヴァイス様じゃなきゃ嫌なの。
魔獣だったクロムを【錬成】で戻して、いろいろ処理して国が落ち着いてきた頃、一度ルヴァイス様に婚約を解消しようって言われたことがあった。
もう私にはエルフの後ろ盾もある、だれもソフィアを傷つけることもできない。
これからは自由に生きろって言われたんだ。
だからその場で婚約を解消したの。
今度は、政治的目的でも、私を守るためでもなく、本当に好きになって婚約してもらえるようになるってルヴァイス様に宣言して。
ルヴァイス様を振り向いてもらえるように、知識も教養もちゃんと身に着けて、ルヴァイス様を助けられるようにちゃんと力も身に着けるって。
私が泣きながらそう言ったらルヴァイス様はその場で抱きしめてくれて、その場でまた婚約を申し出てくれた。
嬉しかった。すごく。本当に。
ルヴァイス様にとって、婚約は仮初でしかなかったかもしれないけれど。
私にとっては大好きなルヴァイス様との大事な婚約。
それが仮初じゃなくて本当になれたんだもの。
そしてこうして今がある。
ルヴァイス様にとってはまだ私に対する同情であって恋愛ではないかもしれないけど。
でも大丈夫。頑張るよ。
絶対素敵な奥様になって、演技じゃなくてもちゃんといっぱい好きって言ってもらえるくらいの素敵なお嫁さんになってみせるから。
守られるだけじゃなくて、ちゃんとルヴァイス様のつらい時に一緒にいて支えてあげることのできるような素敵なパートナーになるからね。
エルフの大神官の前につくと、ルヴァイス様が私のベールをとってくれた。
エルフ語で愛を誓いますかと言われた後、私とルヴァイス様はそれぞれ愛の言葉をつげ口づけを交わした。
ほんの数秒の軽い口づけ。
「愛してるよソフィア」
そう言ってくれるルヴァイス様の表情はとっても優しくて、私は涙がこぼれそうになる。
ありがとう、ルヴァイス様。
私と結婚してくれて。
私も大好き、ルヴァイス様。
私は微笑んでもう一度口づけを交わす。
聖女になる夢のほかにもう一つ素敵な夢をくれてありがとう、ルヴァイス様。
大好きなルヴァイス様を支えていける素敵なお嫁さんになれますように。
★これでラストになります!! 最後までお付き合いありがとうございました!★
誤字脱字&ポイント&ブックマーク本当にありがとうございした!!
この後ソフィアとルヴァイス様は普通にラヴラヴ暮らしていくと思います!!
無自覚らしいですがルヴァイス様はもう普通に溺愛してます!はい!
物語に最後までお付き合いいただき本当に本当にありがとうございました!
もし面白かったと感じましたら最後に評価&ブックマークを頂けますととっても嬉しいです(*๓´╰╯`๓)♡テヘヘ
お付き合いいただき本当にありがとうございましたー!!