38話 ご褒美
研究がはじまって3ケ月後。
「ルヴァイス様。ソフィア様のおかげで研究はかなり進んでいると報告を受けています。
品種によっては実用化に向けて外の畑で栽培する段階に進むそうです」
ルヴァイス様と二人で食事中。
ルヴァイス様の隣に控えていたテオさんがルヴァイス様に資料を渡す。
「ほう、それは…この二十年間遅遅として進まなかった研究が、たった3ヶ月でそこまで進むとはソフィアのおかげだな」
『そんな事ないよ!ジャイルさんやラボの人達が凄いから!私一人じゃ絶対無理だったもの!』
そう書いた紙を見せたらルヴァイス様が笑ってくれて
「ソフィアは何かやりたい事はないのだろうか?」と、言ってくれる。
『やりたい事?』
「ああ、研究は確かに大事だが時には気分転換も必要だろう。
どこか行きたい所などあれば気晴らしに行ってみたらいい。
あまり外に出かけた事もないのだろう?」
お出かけ?
『うん!行ってみたい!』
「どこか行きたいところは?」
そう言われて私は考えた。
レイゼルさんと暮らしていた頃は街に行ってみたかったような気がする。
絵本で子どもが遊んでいる絵に凄く憧れた。
街で歩いてみたい。
昔ねレイゼルさんと約束してたの。
いつか大きくなったら神殿から外出許可をもらって街にお出かけしようって。
美味しい食べ物を買って一緒に食べてお洋服を一緒に買うの。
私のお洋服を買って、レイゼルさんのお洋服は私が選んであげるっていうお約束。
私はそれをルヴァイス様に説明したら、急に悲しくなってきた。
もうここに来てかなりたつのに、いまだにレイゼルさんは来てくれない。
やっぱり魔獣に殺されちゃったんじゃないかって不安になる時がある。
「……では私でもかまわぬか?」
無意識にレイゼルさんにもらったペンダントをいじっていたら、ルヴァイス様が肩に手をおいてくれた。
顔にでちゃったみたい。ルヴァイス様が心配しちゃうから気をつけなきゃ。
私はうんって大きくうなずいた。
***
「あら、可愛いらしいですよソフィア様」
平民の動きやすい服装にしてもらって、私はくるりと一周した。
そうしたらクレアさんが褒めてくれるの。
でも顔はいつもの顔じゃない、変装の魔法がかかってるんだ。
今日は可愛いピンクの髪の毛。
ちょっと嬉しいな。
私がレイゼルさんと約束した城下町を周りたいっていったら、平民の恰好をすることになったの。
貴族の人が平民街に行くことはないんだって。だから変装。
「準備はすんだか」
扉を開いてルヴァイス様が入ってくる。ルヴァイス様もいつものお顔と違う。
髪の毛も魔法で短く見える、茶髪の人になっているんだ。
『できたよ!』
紙に書いたら、ルヴァイス様がそれはよかったと、紙を取り上げて、木板をくれた。
石膏と木版、これはレイゼルさんと暮らしていた時使っていたことがある、何度も消しては書けるやつ。
「平民に紙は貴重品だ。木板のほうが自然だろう。しばらくはこちらで我慢してくれ」
と、言われるの。
私はうんうん頷いた。
「姿を消して護衛させていただきますが、くれぐれもお気をつけて」
テオさんが言う。テオさんの肩にはキュイが「キュイー!」って頑張るときのポーズをしていた。
キュイがテオさんの姿を魔法で消してくれて一緒についてきてくれるんだって。
キュイってそんな事もできたんだね。
「テオ、私は自分で自分の身は守れる。
何かあった場合迷わずソフィアを優先しろ。
私もそれ前提で動く」
「はっ。かしこまりました」
ルヴァイス様が言っていて、クレアさんが「お嬢様は本当に大事にされていますね」って耳打ちしてくれた。
嬉しくて私はうんうん頷いた。
やっぱりルヴァイス様はカッコイイ。










