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25話 ジャイルさん

 


『うまく出来なくてごめんなさい』


 私の部屋に戻るなり、私は紙に書いてルヴァイス様に渡した。


「いや、こちらも申し訳なかった。

 母親を連想させる行為はやめるべきだった。

 ソフィアのおかれた境遇をあらかじめ調査していたのに配慮が足りなかった」


 そういってルヴァイス様が私をぽんっとお部屋のベッドにおろしてくれる。


「申し訳ありません。

 ルヴァイス様は女性様の扱いに慣れていないため、以前の番夫婦の行動を再現することにばかりに集中してしまいまして。

 配慮が足りなかった事をルヴァイス様にかわり、謝罪させていただきます」


 と、今度はテオさん。


「……何もいまここでそれをばらす必要があるか」


 ルヴァイス様がひきつった笑顔でテオさんに抗議している。


「ルヴァイス様は忠実に再現しようとしすぎです。

 今までひっそりと一人で暮らしてきたソフィア様には公衆の面前であのような少々行き過ぎかと」


「わかっている。余裕がなかったのは謝ろう。

 ……だがソフィアには申し訳ないが今回のことはかえってよかったかもしれん。

 そなたを人目に触れさせないようにする理由ができた」


 そういってルヴァイス様が立ち上がる。



『理由?』


「人なれしていないため、最低限の人間としか接触させないことにすると宣言しておく。

 番を溺愛している竜王の命には逆らえぬ。

 竜神官達にはあれだけ見せつけておけば充分だろう」


『番って凄い』


「竜人は番夫婦が仲睦まじくしている間は神に祝福を受けると信じている。

 国政さえおろそかにしなければ、だれも文句は言えぬだろう」


 そんなことを話していたら、いきなり部屋の衣装のクローゼットがばんって開かれた。


 私が慌ててそちらを見ると、 


「その子が錬金術の力を使えるっていう聖女か!??」


 赤髪の利発そうな若い男の人が私の部屋のクローゼットから出てきた。


 え!? え!? クローゼットから!?


 私が驚いてルヴァイス様とテオさんをみると二人ともあきれたような顔をしただけで、警戒している様子はない。

 竜王国ではクローゼットから人がでてくるのは普通なの?


「ジャイル。まだお前は呼んでないはずだが」


「呼ばれたか呼ばれてないかなんて問題ない!

 この子の作っていたとテオが送ってくれた作物!!

 従来の作物の10分の1の【聖気】で育つんだ、これがどれほど偉業かわかるか!?」


 赤髪の男の人はクローゼットからでてきたとたん、ルヴァイス様の前に私の作った植物の鉢を差し出した。

 そっかルヴァイス様、畑やおうちにあった植物もってきてたんだ。私がまじまじみていると


「わかっている。だからこの子を迎え入れたのであろう」


 ルヴァイス様がため息まじりにいった。


「というわけで早速研究室……っていてっ!?

 何するんだよ!?」


 ジャイルさんが私の手を取ろうとすると、ルヴァイス様がジャイルさんの手をひねりあげる。


「テオこいつをつまみ出せ」


「なんでっ!?」


「こんな小さな子を休憩もなく働かせるつもりか?

 まだ昨日ここについたばかりだぞ。ここでの生活に慣れるほうが先だ」


 ルヴァイス様がジャイルさんをテオさんの方に放りなげると、テオさんも「かしこまりました」と微笑んで、ジャイルさんをまたクローゼットに押し込みはじめた。


「やめろぉぉぉぉ」って悲鳴が聞こえるけれどテオさんは笑顔で足でガシガシしていた。


 え?え?いいのかな?


 私はルヴァイス様とテオさんの顔を交互にみてしまう。


「気にするな。こちらの生活にある程度慣れたら紹介する。

 それまではあそこからのルートは閉じておくから安心していい」


 ルヴァイス様が微笑んだ。


 竜王国はクローゼットも行き来できるんだね。竜王国はやっぱりすごい。


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