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18話 馬車


「何もあそこまで喧嘩を売る必要がありましたか。

 黙って連れてきてしまえばよかったのに」


 馬車の中で銀髪の男性、テオさんがため息まじりに、私を助けてくれた黒髪の男の人――ルヴァイス様に言う。

 お母さまとルヴァイス様が言い争ったあと、私はそのまま竜人の人たちに囲まれてとっても豪華な馬車に案内されたの。

 そして馬車にのせられてだいぶ神殿から離れたところでテオさんがため息をついたんだ。

 いま私はルヴァイス様の隣に、テオさんはルヴァイス様の前に座っている。


 私はこれから竜王国に向かって、レイゼルさんとしていた研究を竜王国でしていいんだって。

 ルヴァイス様は私の【錬成】の力を高く評価してくれるって言っていた。

 夢みたいでうれしいけれど、お母さまと神殿にあんなことして平気なのかな?

 

 私も心配になってルヴァイス様を見た。

 私の事をアルベルトから庇ってくれたのも、私が悪いのではなくてお母さまとデイジアが悪いって言ってくれたのもすごく嬉しかった。

 だっていままでだって、私は悪い事を何もしていないのに、いつもやってもいない事を押し付けられて責められたから。

 私を庇ってくれたのは、おばあさまが死んでからはルヴァイス様だけだもの。


 でもそれでルヴァイス様に迷惑がかかってしまうかもと思うと素直に喜べない。


「ふんっ。あちらの事情など知るものか。今頃勝手にもめているだろう。

 それに【セスナの炎】の件をこちらが知っていると威嚇しておけば、嫌がらせでソフィアに対して妙な噂を流したりしてくることもできない。

 あちらとて神殿外に情報が漏れるのは恐れているだろうからな」


 私の隣に座ったルヴァイス様がそう言うの。


 そっか、変な噂を流したら今度は【セスナの炎】について公にしてやるという脅しも含めていたんだ。すごい!

 私は慌てて紙に『ありがとう!うれしかった!』って書いたらルヴァイス様は微笑んでくれた。


「約束したはずだ。そなたは私が守ると」


 ルヴァイス様の言葉に嬉しくなる。

 初めて会ったときはよくわからない人だと思ったけれど、ルヴァイス様はいい人。

 私の研究を手伝ってくれるんだって。

 ありがとう、ルヴァイス様。研究がんばるよ。

 私は嬉しくてうなずいた。



『もしレイゼルさんが生きていたら会いに来てくれる?』


 私は馬車に揺られながら、紙に書いてルヴァイス様に質問した。

 聖王国から馬車を走らせてもうだいぶたっていた。

 出たときは太陽は上のほうだったのにもうだいぶ沈んできた。

 ルヴァイス様がレイゼルさんも探してくれてるって教えてくれたんだ。


「ああ、もし生きていているならば、私とソフィアの婚約を知って竜人の国に様子を見に来るだろう。

 その時我々の手で保護する。心配しなくていい」


 ルヴァイス様が言うには誰を選ぶか内緒にしてデイジアと婚約するとおもわせぶりな行動をとったのは私とルヴァイス様の婚約の噂を流すため。

 ここまで大々的に噂が広まってしまえば、私とルヴァイス様が婚約したのを人間の世界にも発表しないといけなくなるから。

 もし返事を保留しないで私とすぐ婚約すると決めてしまえば、神殿はリザイア家と竜王の婚約そのものを隠匿しただろうって言っていた。


 私が竜人の国でルヴァイス様の元にいるって、どこかで生きているかもしれないレイゼルさんに情報がいくように行動したっていっていた。

 もし生きていて、聖王国に掴まるのを恐れて姿をあらわさないのだとしたら、竜王国に来てくれるかもしれないから。


 レイゼルさんはエルフの可能性があるから、ルヴァイス様達も保護したいんだって。


 【錬成】の力はエルフしか使えない力らしいんだ。

 そしてエルフは大昔に地上から去っていて本来なら地上にいるはずのない種族だっていっていた。

 レイゼルさんは記憶をなくしたエルフで、そして神殿に保護され、私のお母さまと私を生んだ。

 

 だから私もエルフのレイゼルさんの血を引いているから【錬成】が使えるってルヴァイス様は見ているみたい。

 やっぱりレイゼルさんは私のお父さまだった。


 どうしてあの時聞くことができなかったんだろう。

 もし聞いていたら――魔獣盗伐なんかに行かないで一緒にいてくれたのかな。

 勇気をだしていたら、未来はかえられたのかな。

 そう思ったら少し涙がでてきてしまい、私は慌てて涙をぬぐう。


 そうしたら


「大丈夫だ。エルフは強大な力の持ち主だ。

 たとえ記憶がなくなっていたとしても、危機にはちゃんと自己防衛能力で逃げ延びた可能性は高い」


 そう言いながらルヴァイス様が頭をなでてくれて、私は嬉しくて頷いた。 


 そうだ。きっと生きてるはずだよ。

 帰ってきてくれるって約束したもの。

 また会えたらちゃんとこのペンダントを返すんだ。

 そして今度こそお父さまなのか聞いみる。もしお父さまだったらお父さまって呼ぶんだ。


 私はレイゼルさんから預かったペンダントをぎゅっと握りしめる。


 私はこれからルヴァイス様の婚約者として竜王国に行ってルヴァイス様のお妃さまになるの。


 竜王国のお妃さまになれば、お母さまやデイジア達も私に手出しできなくなるから 竜王国で【聖気】のいらない植物の研究がいっぱいできる。


 どうかレイゼルさんに私とルヴァイス様の婚約の情報がうまく伝わりますように。

 そして竜王国にきてくれますように。


 私は神様に向かってお祈りする。


 レイゼルさんが来てくれるまでルヴァイス様がしている研究施設で研究頑張るよ。

 いっぱいいっぱい研究を進めてレイゼルさんに褒めてもらうんだ。


 どんなところだろう。

 研究所がちゃんとあって研究できるなんて夢のよう。

 レイゼルさんも設備があればって言っていたから、きっと研究所を喜んでくれると思う。


「あー」


 楽しみだねってキュイに話しかけたらキュイも「キュイー♪」って言ってくれた。


 ありがとう。ルヴァイス様。私を連れ出してくれて。

 お母さまやデイジアにちゃんと私は悪くないっていってくれて、私の研究を認めてくれた人。

 そして仮初だけど私と結婚してくれる人。

 私にいっぱいの夢をくれる人。

 ルヴァイス様の期待に応えるために聖気のいらない作物の作成がんばるよ。





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