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12話 もふもふ竜


 レイゼルさんがいなくなってから、もういっぱい月日がすぎた。

 神殿の人たちは私に毎日その日の食事と気の向いたときに服や布を置いていくだけで、レイゼルさんの事を聞いても私を無視して帰ってしまう。


 魔獣盗伐がどうなったのかすら教えてもらえない。

 まだ魔獣を倒しているのかな? レイゼルさんはいつ帰ってくるんだろう。


 私は毎日毎日、畑のお世話をしながらレイゼルさんが帰って来るのを待っている。


――いつか一緒に【聖気】の要らない作物をつくりましょうね――


 そう笑ってくれたレイゼルさん。

 それが私とレイゼルさんの目標だから、私はレイゼルさんが帰ってくるまで畑を守って【聖気】のいらない植物をつくるんだ。


 そんな事を考えながら【錬成】の魔法を唱えていると


 ガサッ


 草の動く音が聞こえた。


 今日は神殿の人はもう食べ物を置いていったはず。

 もしかしてレイゼルさんが帰って来た?


 私が慌ててその方向を見ると


「きゅいー!!」


 出て来たのは、とっても小さいもふもふの竜だった。

 小さい竜は私の顔を見るなり嬉しそうによってきて、私の肩にとまってスリスリするの。


「あー?」


 私がわけがわからなくて、その子に問うと、竜の子は私をクイクイひっぱりはじめた。

 

 そして地面に落ちると、歩き出して、振り返りながらチラチラみるの。


 ……もしかしてついて来いってことかな?


 私がついて行くと竜の子は先に進んで私が止まると、その子も止まる。


 やっぱりついて来いって事なのかも?

 でも神殿に竜がなんでいるのだろう?

 竜は竜人の国にいるって聞いた事はあるけれど、人間の住む場所にいるはすがないのに。

 私が不思議に思ってついて行くと小竜の案内してくれたその先に、男の人が立っていた。


 逆光でよく見えなくて目を凝らすと、いたのは黒髪で長身の男の人。


 まるで絵本の中の王子様じゃないかと思うほどとっても綺麗な人。


「……そなたは?」


 つい、物陰から見ていたら、男の人に話かけられる。

 私は怖くなって竜の子を見ると、竜の子はその男の人の肩にちょこんと乗った。

 そっか。この人のペットだったんだ。

 どうしよう、あまり人に会う事はしたくない。

 一応神殿の人に見られてもいいように、全身に布を巻いて、見える部分は火傷しているように見える魔法がかかっているけれど、火傷が治っているのが、お母さまとデイジアにばれたらまた火に入れられてしまうかもしれない。


「あー」


 私はぺこりと頭を下げてそのまま立ち去ろうとする。


「ふむ。しゃべれないのか?」


 男の人が聞いてくる。私はコクコク頷いた。


「キュイー!」


 すると竜の子が、男の人に何か渡した。

 よく見ると私の家の庭にあったはずの苗。

 レイゼルさんに褒めてもらった【錬成】した作物からとった種から育てた大事な苗!!!

 なぜか小鉢にいれていた苗が小鉢ごともっていかれていた。

 やっと芽吹いたなかの一つなのに勝手に持ち出さないで!!


「あーーーー!!」


 私が慌てて取り戻そうとするけれど、男の人は困ったように私の頭に手を置いて私を止める。 


「これはそなたのものか?」


 そうだよ。レイゼルさんと一緒に作ったの。

 だからとっても大事な苗。

 お願い返して!

 ぽろぽろと溢れる涙が止まらなくて、一生懸命手を伸ばすと


「うちの子が悪い事をした。すまなかった」


 男の人が苗をかえしてくれる。


 よかった、かえってきた。私は受け取るとほっと胸をなでおろした。

 これ以上ここに居ては駄目。この作物は他の人に内緒ってレイゼルさんと約束したもの。

 この男の人にいろいろ聞かれる前に立ち去らなきゃ。

 私はそれを受け取ると、一礼して駆け出した。



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