エヴァリーデでの歓迎
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「着いたわ。ここが私達が拠点にしていたエヴァリーデよ。とりあえずこの町の名医、ヨーゼフの家に行くわ」
辿り着いた町はそこそこに大規模だった。
夜だからはっきりとは見えないが、立派な家が多く、綺麗な街並みが広がっているように見えた。
いやしかし、これが町の規模なのだろうか……?
ロスタリフィーエ帝国の都市部と比べても、遜色はないぞ……?
「随分と立派に、繁栄している町だな……」
言われるがままに俺とサタンがアンネリーゼ達についてゆくと、そこにはひときわ大きな一軒家が建っていた。
それから一息ついた後、アンネリーゼはその家の扉をコンコンと二回ノックした。
「ヨーゼフ? 遅くにごめんなさいね、アンネリーゼよ」
「はい! 今開けますぞ!」
すると夜間であるにも関わらず、十秒とたたずに、中から洒落た姿の老人が出てきた。
「ひっ……姫様! それにゲルフ様! なんという、おいたわしいお姿……ッ!? さぁさぁ、中のベッドで横たわってくだされ!」
ヨーゼフと呼ばれた老人は、すぐに兵士の背中に担がれたゲルフさんをベッドへと案内した。
それからというもの、老人である見た目に似合わず手際よく、ゲルフさんの傷を確認してゆく。
「夜分にすまないわね。応急処置はしてあるわ。傷はそれほど深くなかったし、命に別状はないと思うけれど……念のため、胸からお腹にかけての傷の具合を見て欲しいのよ」
「もったいなき、ありがたきお言葉……ですが、どうかお気になさらず! 皇族であるにも関わらず、吸血鬼退治に率先して向かってくださったアンネリーゼ皇女殿下には、エヴァリーデの住民は皆頭が上がりませんわい! さて、エヴァリーデの名医ヨーゼフの役割、余すことなくまっとういたしましょうぞ!」
そうして白衣を腕まくりして、張り切っているヨーゼフさんだったが――
「……ま、退治したのは彼らなんだけどね」
「彼ら……ッ!?」
アンネリーゼの言葉に動作を止めてしまう。
それからヨーゼフさんは、視線の先の俺とサタンを見て、目を見開いて驚愕するのだ。
「なっ……! なんと美しい黒翼……ッ! まっ……まさか皇女殿下は、魔族を手なずけてしまわれたのか……ッ!?」
「ふふっ、違うわよ。私じゃなくて、隣の彼の魔族よ」
――だが。
ヨーゼフさんが本当に驚くのは、これからだったのだ。
「――それもただの魔族じゃないわ。驚かないでね? 彼女は最高位の"神魔サタン"、そして隣の彼は"大英雄レギナ"の生まれ変わりよ」
xxx
「………………………………は?」
う……うわぁ……。
ごっ……ご年配の方に言うことではないが……。
すごい……なんというか……間の抜けた顔だな……。
おそらく……ヨーゼフさん史上、最上位にランクインする出来だろうな……。
俺は失礼にも、そんな想像を膨らませるが――
「す、すみませぬ……アンネリーゼ皇女殿下……。儂ももう年で、耳がおかしくなっとるんでしょうなぁ……。本当に、申し訳ない……。もう一度……おっしゃっていただけませんか……?」
ヨーゼフさんは少しも表情を変えずに、いまだ間の抜けた顔でそう言葉にした。
いや……てかそろそろやめて! お洒落なご老人がしていい顔じゃないから、本当に!
そうしておかしさに耐えきれず、もう少しで不謹慎にも笑ってしまいそうな俺だったが――
「"神魔サタン"と"大英雄レギナ"の生まれ変わりだ、ヨーゼフよ」
ベッドに横たわっていたゲルフさんが突然声を出したため、なんとか事なきを得たのだった。
「ゲルフ! 傷の具合はどう!?」
「ご心配には及びません、アンネリーゼ皇女殿下。皇女殿下が施して下さった応急処置のおかげで、大した事態にはなっておりません。ありがとうございます……」
「そう……よかったぁ……!」
心底、安心したようにはぁーっと、長めに息をついたアンネリーゼ。
しかし……安堵した顔もやっぱり……可愛いなぁ……。
「我が主?」
そして気のせいだろうか……?
俺の右腕をとるサタンの手に力がこもっている気がする……ッ!
いや、やっぱ気のせいじゃないわこれ! てか、痛い! 痛いからやめて!!
「とっ……ところで……やはり、儂の耳はおかしくなってしまったのだと思います……。私にはやはり、そちらの方々が、"神魔サタン"と"大英雄レギナ"の生まれ変わりだと聴こえたものですから……」
ふ、ふむ……。
どうやらヨーゼフさんは、アンネリーゼに加えてゲルフさんの言葉も、やはりいまだ信じられていないようだ……。
まぁ、確かに聴こえた内容が突拍子なさすぎるから、しかたはないと思うが……。
だって、なぁ……?
ただの若造で無名のこの俺を、あろうことかこの国の大英雄の生まれ変わりだと、それもお姫様のアンネリーゼ、護衛騎士団長のゲルフさんのような高貴な身分の方々が口にするのだから――
「その通りだぞ、ヨーゼフ。我らはこちらの方々に助けられたのだ。私達が吸血鬼に後れを取って、絶体絶命でいるところを、ルミラ様が"神魔サタン"を召喚して、吸血鬼を腐食死させて救ってくださったのだ」
「やっ……闇の住人である吸血鬼を……腐食死……ッ!? そっ……そんな馬鹿な……ッ!? もっ……もしや……、それでは……まさか、この方は本当に……!?」
「あぁ。ベルスタルージュ帝国の伝説の守り神、"大英雄レギナ"と同じ【凶禍の呪術師】のスキル持ちでいらっしゃる」
――しかし。
ここまで丁寧に説明されたヨーゼフさんはようやく、二人の話が嘘ではないことを理解してくれた。
だからこそ俺は、ひとまず安堵するのだが――
「こっ……これは夢か……!? い……生きているうちに……"大英雄レギナ"様の生まれ変わりを……畏れ多くも儂如きがお目にできるとは……! なんたる……なんたる幸せ者なのじゃ儂は……ッ! こうしてはおれんッ! 町の皆にも伝えてまいります!」
――この後、町の人々から受ける熱烈な歓迎に比べれば、本当につかの間の安堵に過ぎなかったのだ。
次回は明日8/31にアップします!
ここまでお読みいただきありがとうございます!
作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!