凶禍の呪術師と大英雄レギナ
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
それから俺達は、町に向けて歩いた。
しかも俺の右腕は黒翼の女の子、サタンと名乗った女の子に、きゅっと組まれた状態でだ。
何度離れてくれといっても、「だめだ、これだけは譲れんよ?」と可愛く言われてしまい、仕方なくそのままにしている。
いやもう、なんていうか、ドキドキが止まらないんだけどな……
「そういえば! 自己紹介がまだだったよね! 私はこのベルスタルージュ帝国の第一皇女、アンネリーゼ=オスヴァルト! こう見えて、可愛いだけじゃなく【剣姫】のスキル認定を受けているのよ?」
色々と考えが浮かんでいるうちに、隣を歩いていたお姫様が突然そう口にした。
そうだ……この子はお姫様で……、って!?
「け……【剣姫】だって……!? 【剣士】系統スキルの中でも、【剣神】や【剣聖】に次ぐ、相当上位のスキルじゃないか! そりゃすごい……ですね」
そうだ、そうだよ、この子の服装を見ろよ、ルミラよ!
どう見ても高貴な身分の、立派な白い鎧に包まれた女の子だろうが……。
そう考えると、さっきまでの俺の無礼な口調は大丈夫だっただろうか……?
そんな風に不安になった俺は、慌てて言葉尻を丁寧に変えた。
それから恐る恐るお姫様に視線を送るが――
「ふふっ、敬語は不要よ。貴方も私と同じくらいの年齢だろうし、いいでしょ?」
ほっ……気にしていないようで何よりだった……。
「わ、わかった……」
危ないな……本当に注意しないと……。
「それに……【凶禍の呪術師】の貴方には到底及ばないわ」
やっぱり、またその話か……
そうだ、少しでも【凶禍の呪術師】について、知っていることを教えてもらわないとな。
「その話なんだけど……教えてくれないか? アンネリーゼが知っている、【凶禍の呪術師】について」
――しかし。
すぐには、お目当ての情報に辿り着くことはできなかったのだ。
「その前に、"大英雄レギナ"の話をすることになるけれど、いいかな?」
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「"大英雄レギナ"……さっき言っていた、ベルスタルージュ帝国に古くから存在する言い伝えの……?」
「そうよ。"大英雄レギナ"……彼女も大昔に、【凶禍の呪術師】のスキルに認定されたと言い伝えられているわ」
えっ……!?
「ッ!? 大英雄が……【凶禍の呪術師】だって……ッ!?」
俺は目を見開いて、アンネリーゼを見た。
俺の反応をちらっと確認すると、アンネリーゼは得意気に語り始めた。
「えぇ、そうよ。【凶禍の呪術師】スキルの認定を受けた彼女は、最初は貴方の認識と同じく、呪われたスキルだと周囲の人々から悲しまれたらしいわ。彼女は魔術の腕も優秀だったし、将来を期待されていたから、その時のショックはなおさらのことだったみたいよ」
「他人事とは……思えないな」
本当に、俺にそっくりの境遇だなと思った。
もっとも……俺の場合は悲しまれることなどなく、すぐに追放されて厄介者扱いだったが……。
そして俺の言葉を聴いた彼女は、何か思うところがあったのだろうか。
にこりと優しい笑みを俺に見せた後、話を続ける。
「とにかくね? 彼女はショックを受けて立ち直れなくなってしまった。自分の人生はなんだったんだろうって。何のために魔術の修練に励んできたんだろうって。人々の役に立ち、悪しき魔物を討伐するために頑張ってきたのにってね」
やはり……俺の境遇に似てるな……。
メルノイス魔術学院で修練していた俺も、そうありたいと思っていた……。
「でもね」
――しかし。
「その日、彼女に追い打ちをかけるような出来事が起こった」
ここからが、俺に起こった出来事との大きな違いだった。
「魔王タナトスの襲来よ」
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「魔王……タナトスだって……!?」
魔王タナトス――歴代魔王の中でも、その残虐非道ぶりが特に甚だしかった魔王だ。
これはメルノイス魔術学院の歴史の授業で学んだ内容だった。
しかし、ベルスタルージュ帝国を襲ったことまでは知らなかった……。
俺が驚いているのを確認した後、アンネリーゼは更に話を続ける。
「ベルスタルージュ帝国は……どうやら、その頃から大国だったみたいだけど、強大な魔王タナトスの軍になすすべもなかったらしいわ。そのため、圧倒的実力を誇るタナトス軍に都市部まで侵略され、兵士達はことごとく蹂躙されていった」
なんてことだ……大国ベルスタルージュ帝国の力をもってしてもか……。
魔王タナトスは想像を絶するほどに、強大だったに違いない……。
「その時、レギナは思ってしまったらしいわ。自分が【凶禍の呪術師】に認定された途端に、魔王軍が襲来してしまった。こんなことが偶然に起こるはずがない。だからこそ、すべては"周囲の人間に凶事を招き、禍となす呪われたスキル"に認定された自分のせいだと」
ここまでの話を聴いて、本当に俺は他人だと思えないほどレギナに共感してしまっていた。
――だが。
「レギナは自責の念でいっぱいになって、苦しくて仕方なかった。自分のために、罪のない周囲の人達が殺されてゆくのがね。そして自分を呪った。こんな時に力になりたいがために、魔術の修練を怠らなかったのにと。そして【凶禍の呪術師】というスキル認定を受けてしまった自分に、一体何ができるんだと。――だからせめて【呪術師】ならば、己の命と引き換えに魔王を呪い殺すくらいの力をくれとね」
共感するにしても、ほどがあることに気付いた。
これではもはや、思考回路が同一人物じゃないかと、俺は思ったのだ。
「だけど、まさにその瞬間だったらしいわ。突然、凛とした女性の声が場に響いたと思えば、美しい黒翼の女の子が目の前に現れて――」
その瞬間だった。
何かに気づいたように、アンネリーゼが言葉に詰まってしまったのは。
そして同時に俺もそれに気付いて、声を失ってしまったのは――
――そうだ。
ということはもしかして……もしかして隣の可愛い、黒翼の女の子はまさか――
「――察しの通りよ。その時ほかでもない、この"神魔サタン"が"レギナ"と共に、タナトス軍を阿鼻叫喚の地獄絵図へと化してやったのよ」
次回は明日8/28にアップします!
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