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魔物討伐遠征①

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

帝都ドルムント 大広場



「おい」


「何よ」


 翌日の朝――

 皇女付きの護衛として配属されたルミラとリーゼロッテには、さっそく召集がかかっていた。

 そして集合場所である大広場で、早めに到着したルミラはリーゼロッテに対面すると、開口一番に問いかけた。


仮宿(かりやど)に親父さんが来て、君をよろしく頼むと」


「あんたが煮え切らないからでしょ」


「陛下まで来られたんだがなんでだ」


「あんたが煮え切らないからでしょ」


 少しもルミラを見ることなく、強い口調で返すリーゼロッテ。

 もはや約束など関係なく、リーゼロッテがぷりぷりと怒っているのは明白だった。


 しかしルミラは指摘するのを諦めて、怒りが収まるのを待つことにした。

 さらに彼女の機嫌が悪くなるのは明白だったからだ。


「それに、皇女殿下のお付き希望だなんて」


「俺が希望したんじゃないんだが」


 そんなに怒らなくてもと、ルミラは心の中で嘆いた。

 上司の命令に背けるはずもないんだ、察してくれとも願った。


吸血鬼(ヴァンパイア)から守ったってどういうこと」


「初級魔術しか使えなくて、殺される寸前だっただけだぞ」


 リーゼロッテは一瞬はっと驚いた後、やがてじとりと非難の視線をルミラに向けた。


「可愛いもんね」


「君までやめてくれ」


 どうしてこうも皆が同じ反応なんだと、ルミラは思ったのだが――


「までって何よ」


 リーゼロッテの追及を受けて、まずいとルミラはすぐに頭を働かせ始める。


「なんでもない」


「まさか皇女殿下以外も毒牙にかけてんじゃないでしょうね」


「あまりの言いがかりに言葉が出ないんだが」


「よくそんなことが言えるわね」


 そこまで言い切ったリーゼロッテは、呆れるように言葉を続けた。



「目の前に既成事実がいるってのに」



xxx



「ルミラ様、お久しぶりです」


 集合時間の少し前に、護衛騎士団長であるゲルフと兵士達、そしてアンネリーゼが現れた。

 ルミラにとって、三年前に見知った顔ばかりで、ふと懐かしい気持ちが心に宿る。


「様……?」


 ――のだが。


 ルミラ君の正体は秘密だと、エーメリッヒから厳命されていたにも関わらず、ゲルフはつい敬語を使ってしまう。

 そのせいで、事情を知らないリーゼロッテはこれ以上ないほどにいぶかしむのだ。


「ゲルフ様」


 そのため、ルミラはじとりと視線を向けるが――


「さて、皆集まったようだな」


 ゲルフは何事もなかったかのように、整列する兵達に向かって言葉を続けたのだ。

 いくらなんでも誤魔化し方が下手すぎるだろうと、ルミラは心の中で嘆いた。


「本日より、我々は魔物討伐の遠征に向かう! アンネリーゼ皇女殿下、新人の二人に一言お願いします」


 託されたアンネリーゼは、誇らしげに一歩前にでた。


「おほんっ! まずは優秀な成績を修めた二人共が、私のお付きに希望したという事実を大変嬉しく思うわ!」


(どの口が言うんだか)


 ルミラとリーゼロッテは、心の中で突っ込みを入れた。


「オスヴァルト家は代々、次世代を担う者が魔物討伐に勤しんできたの。今の皇帝陛下も、各地に赴いて魔物討伐に勤しんでいたのよ。そして女である私も、例には漏れないわ」


「立派だな」


「あなたの心掛けに比べたらまだまだよ」


 アンネリーゼは優しく笑みを浮かべた。


「ところでルミラ君、乗馬の経験は?」


「あるけど」


「よし。リーゼロッテは勿論あるわね?」


「はい」


 そして――


 この後、アンネリーゼは皇女の特権を余すことなく使うことになる。



「ならよし! 今回は遠方になるから、馬を使うわよ」



xxx



「なぁ」


「何?」


「おかしくないか」


「何がよ」


「わかるだろ」


 出発するアンネリーゼ一向は、一言でいえば壮観だった。


 立派な鎧に身を包む兵達、美しい毛並みと逞しい筋肉の馬。

 そしてなんといっても、一際目立つのはアンネリーゼが跨る見事な白馬だ。

 数十人程度の規模ではあるが、誰が見ても立派な遠征部隊だと認めざるを得ないほどだった。


 ――のだが。


「なんで俺達だけ二人乗りなんだよ」


「私の身を守るのがあなたの仕事だもの」


 ルミラとアンネリーゼの馬上での行いだけは、本当に場違いだったのだ。

 前で手綱を握るルミラの腰に手をまわして、アンネリーゼは幸せそうに横顔を背中にぴたりと付けていた。


「だったら俺は歩きでも」


「それじゃ疲れちゃうでしょ。いざって時に私を守れなかったらどうするのよ」


「それに後ろは揺れるだろ」


「この方が都合がいいのよ」


 アンネリーゼは少しも譲る気はなかったのだ。


「視線が痛いんだが」


「彼女はそうでしょ」


 背後から、物凄い形相で睨み続けているリーゼロッテ。

 ルミラははらはらと気にしていたが、アンネリーゼは気にすることはなく、目の前の背中を堪能していたのだ。


「道行く人の視線もなんだけど」


「周知は必要でしょ」


「そんなものか」


 皇女殿下お付きの新人だと知らしめる必要があるのかと、ルミラは一人で納得した。


「ところでなんだが」


「ん?」


「今の俺は()()()()が出てこない為にも、"封魔の呪印"を強めにかけているんだ」


「そうなんだ」


 しばらくして、悪戯っぽくアンネリーゼは笑う。


「私と二人きりでいたいから?」


 可愛らしい、甘い声でアンネリーゼは一言。


「でてくると殺されそうなんだよ」


 しかし、全男子がころりと落とされるであろうアプローチにも、ルミラはまったく動揺しなかった。


「自分の身を守るのもあなたの仕事よ」


 望んでいた反応が得られず、アンネリーゼはがっくりと、ぶっきら棒に返した。


「それで?」


「ん」


「私を乗せた感想は?」


「馬が疲れないか心配だ」


 今度はそばにいたゲルフがはぁーっと、深く長い溜息をついた。

 同時に、同行する兵達までもがことごとくだ。


「大丈夫。この子は頑張ってくれるわ」


「そうなのか」


 そして――


 実りがまったくなかったアンネリーゼは、背中を堪能し直して精一杯の悪態をつくのだった。




「あなたと違って、空気を読むのは得意なの」

次回、拠点の町に辿り着いてあれやこれや、、、

明日9/18は、7時、12時、19時頃の豪華三本立てでアップします!


ここまでお読みいただきありがとうございます!

【作者の励み】【モチベーションアップ】になりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

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