美少女達の受難
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「ねぇ」
「何だ」
「何で逃げたの」
翌日の早朝――
まだ朝食も済ませていなかったルミラの仮宿に、リーゼロッテは押しかけていた。
しかも、その顔にいかにもな作り笑顔を張りつけてだ。
そしてリーゼロッテは、ルミラの至近距離まで詰めてから、有無を言わさない返答を待っていたのだ。
「怒るのは禁止のはずだろ」
しかし、ルミラは気押されながらも答えをはぐらかしてしまう。
行きたくて行ったわけじゃないと言えば、さらに怒るのは目に見えていたからだ。
「どこが怒ってんのよ」
「鏡を見てくれ」
なんでいつもこうなるんだ、勘弁してくれと、ルミラは心の中で強く願った。
「私って魅力ないの?」
「全男子の憧れだ」
「違うじゃん」
リーゼロッテはじとりと、非難の視線を向けた。
彼女にとっては当然だった。
他の誰でもない、目の前の一人さえ憧れてくれれば良かったのだから。
「俺は特殊なんだ」
「何それ」
そこまで話したルミラは、はぁと溜息をついてからさらに一言だけ口にする。
「全男子の憧れだらけで、感覚が麻痺してるんだ」
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ベルスタルージュ城 謁見の間
「実に美しく、立派に育ったものだ」
「ありがたきお言葉です」
広く、豪華な装飾が一面に施された一室。
上段にはベルスタルージュ帝国の皇帝、皇后、そしてその娘が椅子にかけている。
下段には、昨日宮廷魔術師として採用された受験生達が、二人ずつ謁見を許されていた。
そして今は、最後に謁見することになったリーゼロッテとルミラの順番だった。
「エーメリッヒを圧倒したとか」
リーゼロッテに優しく微笑んでいた皇帝、ベルフ=オスヴァルトはルミラへと視線を送る。
「花を持たせていただきました」
「いずれにせよ見込まれたことには変わりあるまい」
そして先ほどと同じように、ベルフは満足そうな笑みを浮かべた。
それは彼の隣の皇后、エリザ=オスヴァルトも同様だった。
さらには、隣に腰かけるアンネリーゼもそうだったのだが――
この後、父親の言葉がきっかけで、またもやひと悶着起こってしまうのだ。
「しかし、なかなかにお似合いだな」
「私もそう思うのですが、なかなかです」
二人をじっくりと交互に見比べて、ベルフは意味ありげにそう一言。
対するリーゼロッテは、凛として言葉を返した。
そして肝心のルミラはというと、まったく理解できていなかったのだ。
その結果、宮廷魔術師の立派な白装束のことを言っているのだと、見当違いも甚だしい結論をだしてしまう。
「彼女はともかく、私は呪術師なのでどうかと」
だからこそ、ルミラの一言でベルフとエリザは思わず笑ってしまった。
それはルミラの隣のリーゼロッテも例外ではなく、呆れたように笑ってしまったのだ。
「苦労しますね、リーゼロッテ」
「おっしゃるとおりで」
エリザはリーゼロッテに心底同情して、そう一言口にした。
もっとも、いまだルミラは何一つとして理解できていなかったのだが。
そしてその事態に――
「お父様」
もう一人の見目麗しい美少女までもが、我慢ならなかったのだ。
「彼は昔、私を吸血鬼から守ってくれたのです」
「なんと」
「君のような人が危機に晒されて、助けないはずがあるかと」
「本当に、男の鑑だな」
いくらなんでも脚色しすぎだろと、ルミラは心の中で突っ込んだ。
「と、ところでアンネリーゼよ」
「はい」
「お前も負けず劣らずにお似合いだぞ」
娘からも同様の空気を感じ取ったベルフは、精一杯気遣ってそう一言。
対するアンネリーゼは、ようやく少し機嫌を戻して言葉を返す。
「しかし、私も手を焼いているのです」
「なんと、お前までもか」
「だって」
しかし悲しいことに、それもほんの一時に過ぎなかったのだ。
「この状況でも、まるで気付いていないんですから」
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「ルミラ君」
「何でしょう」
ルミラにとって、まったく訳が分からなかった謁見の間での出来事から、本当にすぐのことだった。
エーメリッヒが血相を変えて、ルミラに会いに来たのは――
「陛下直々に、君の配属を皇女殿下付きにしろと命令を受けたのだが」
「そりゃまた何故」
「心当たりはないのかね」
「ないですね」
悲しいことに、本当にルミラは自覚がなかったのだ。
そんなルミラを見て、これ以上は埒が明かないと判断したエーメリッヒはむぅと唸り、難しい顔をした。
「それと」
「まだ何か」
「何故かシュレーゲル公からも、君と娘を同じ所属にして欲しいと」
「"第七階級位"の宮廷魔術師は俺とリーゼロッテだけでしょう」
本来ならば、成績優秀者が固まらないように、ばらけて配属されるのが常だったのだ。
それはルミラも知っていたからこそ、エーメリッヒにそう返したのだ。
だというのに、よりによってトップの二人が同じ所属、それに実力者ばかりの皇女殿下の下に配属など、前代未聞だった。
「だから困っているのだよ」
そして心底恨めしそうな顔で、エーメリッヒはルミラを非難する。
「罪作りな男だな、君は」
「身に覚えがないんですが」
「いい加減にしたまえ」
そして彼女達の言葉を代弁するように、ついにエーメリッヒは口にしたのだった。
「だからこそ、困っているのだよ」
次回、魔物討伐遠征&またもやルミラがやらかします……。
次回は明日9/17までにはアップします!
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