新たな恋敵②
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
帝都ドルムント 大広場
――ザワザワ……ッ!
「おい、リーゼロッテ様が決闘なさるそうだ」
「相手の男はあいつか」
「あれだよな。"特別権限"試合で合格した一般受験組の」
ルミラの噂は、既に宮廷魔術師中に広がっていた。
スキル認定を受けたばかりなのに、一般受験生をことごとく脱落させただの。
そればかりか、あろうことか最高宮廷魔術師のエーメリッヒを完膚無きまでに倒しただの。
はたまた、認定されたスキルはよりによって【呪術師】だっただのと、できるだけ目立ちたくないルミラにとっては、どれもこれも迷惑極まりないものだった。
「任命式で、ご自分の後にあいつが呼ばれた時のリーゼロッテ様の顔ときたら」
「恐かったよなぁ」
そこまで耳に入ったリーゼロッテは、声のする方向の男子達をギンと睨みつける。
その結果、彼らはびくっと震えて、一斉に口をつぐんでしまった。
「可哀そうだと思わないのか」
リーゼロッテはルミラの言葉を無視して、向き直って構えをとる。
(よほど、ショックだったんだな……)
広場にて対峙する、"第七階級位"宮廷魔術師の装束に身を包んだ二人。
そして彼らを取り囲むように、観衆は次々と増え続けてゆく。
「覚悟はいいわね」
「なんのだよ」
「私の奴隷になるって話よ」
リーゼロッテは観衆を物ともせず、凛として一言。
対するルミラは、心底面倒くさそうに返す。
「飛躍し過ぎだろ」
「私に負ければ同じことよ」
「じゃあ、俺が勝てば君がそうなるのか」
「……変態」
リーゼロッテは真剣な表情だったが、どうしてもぼっと赤面してしまった。
「照れてる」「照れてるなぁ」「可愛い」と、周囲の人間は、努めて聴こえないように話す。
「想像力が豊かなんだな」
そんなリーゼロッテを気遣ったルミラはそう一言、なんとか擁護しようと試みたのだが――
「調子に乗り過ぎなのよ」
今のリーゼロッテにとって、それは完全に逆効果だったのだ。
「少しくらい、顔が良いからって」
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「始め!」
「さぁ、まずは小手調べッ……!」
そしてついに二人の決闘は始まった。
開始と同時に、リーゼロッテは詠唱を施そうとする。
――ダンッ!
――のだが。
「――ッ!?」
それは――
「なんだ」
あまりにも、一瞬の出来事だったのだ――
「目でも追いきれてないんだな」
"煉獄の凶刃"を装備して、ルミラが斬りかかるまでは――
――パリィッ!
「……は?」
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本当に一瞬の出来事だった。
ルミラ以外の周囲の誰もが、事態を把握できていなかった。
そして脳の処理がいまだ追いついていない間に、"精霊加護のペンダント"の砕け散る音のみが場に響いた。
「約束だぞ」
ルミラは一瞬で懐に潜り込み、ペンダントのみを破壊したのだ。
「もうぷりぷり怒るなよ」
「はっ……はぁッ!?」
放心状態で、信じられないとばかりにぽかんと固まってしまうリーゼロッテ。
「お、おい! 見えたか今のッ!?」
「いや、気づいたら振り抜いていた後だった……」
「だよな……」
周囲はようやく事態を把握しはじめる。
「こっ……!」
だが――
「こんなの、認められないわよッ!!!」
肝心のリーゼロッテ本人は、まったく納得していなかったのだ。
「正義を貫くんじゃなかったのか」
「い、一回勝負とは言ってないわ!」
もはや、リーゼロッテはなりふりなど構っていられなかった。
しかし、彼女にとって当然のことだった。
まさか実力を出すこともなく、何もできずに敗北していたのだから――
「早く帝都を見て回りたいんだが」
心底面倒臭そうに、ルミラは溜息をついた。
そして周囲の人間から"精霊加護のペンダント"を受け取り、リーゼロッテへと投げつける。
それからというもの――
――パリィッ!
「なッ……!?」
――パリィッ!
「なんでよ……ッ!?」
――パリィッ!
「どうして……ッ!?」
何度対峙しても、結果はまったく同じだった。
同じ映像を何度も見せられているが如く、次々とリーゼロッテのペンダントのみが破壊されてゆくのだ。
「あんた……的確に私のペンダントばかり狙って……ッ!」
「そりゃそうだろ」
そしてついに、リーゼロッテは我慢の限界を迎えてしまう。
つかつかとルミラの下へと歩いて、身体には一切攻撃しない理由を詰問するのだ。
――が。
この後の、ルミラの発言が非常にまずかったのだ。
「少しなんてレベルじゃなく、顔が良いからな」
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「なあ」
「何」
「帝都を案内してくれるんだよな」
「当たり前じゃない」
ルミラの隣を歩くリーゼロッテは、これ以上ないほどに上機嫌だ。
さっきまで自分を睨みつけていた人間とは、ルミラは到底理解できなかった。
だから女はわからないんだと、ルミラは心の中で嘆きながら言葉を続ける。
「どうみてもどこぞの大邸宅なんだが」
「皇族に次ぐ権力者の住まいよ」
ルミラが連れてこられたのは、とんでもなく広い敷地の大邸宅。
住んでいる人物の権力がいかに凄まじいか、嫌でも理解させられるほどだ。
「なんでまた」
「挨拶は早いうちにって言うでしょ」
「そういうもんなのか」
確かに俺は新参だし、ドルムントの偉い人に挨拶は必要なのだろうと、ルミラは自己完結した。
「それにしても、これは必要なのか」
「当たり前でしょ」
ルミラはリーゼロッテにがっちりと組まれた腕を指摘する。
対するリーゼロッテは、少し不機嫌で言葉を返した。
(なんでだよ、もう……)
またもや女心がわからなかったルミラは、先ほどからずっと気になっていたことを口にする。
「なぁ」
「どうしたの」
「さっきから、会う人会う人が君に礼しているように見えるんだが」
「そりゃそうでしょ」
「俺にも礼されるんだが」
「そりゃそうでしょ」
「そ、そうか」
まったく理解できなかったルミラだったが、これ以上聴くとまた怒りそうだと考えて質問をやめた。
――しかし。
「おい、流石に室内までは」
「そうしないと挨拶できないでしょ」
「いや、しかしな」
この後、ルミラは酷く後悔するのだった。
やはりもっと早くに、女心を理解しておくべきだったと――
「お父様連れてきました。私の"主人"になる男性です」
次回は明日9/16までにはアップします!
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