表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/33

女心を早く知るべきだった男

評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)

「やっと、意識してくれたね」



 花開くような、誰もが見惚れる笑顔を見せるアンネリーゼ。

 突然の事態がいまだ飲み込めず、呆けたようにぼーっとしているルミラ。

 そして、一瞬の予想外の出来事に、時がとまったように動かなくなる神魔達とエーメリッヒ。


「……あのさ」


 やがて沈黙を破ったのは、渦中の人物であるルミラだった。


「何?」


「初めて?」


「うん」


「言うまでもなく、今のことだぞ」


 念のため、ルミラは確認をとるが――


「そうだって言ってるよ」


 返ってきたのは、どう考えても間違えようのない言葉だった。

 だからこそルミラは、心の中で頭を抱えたのだ。


「なんで?」


「どうかしたの」


 心底不思議そうに、アンネリーゼは首を傾げる。

 対するルミラは、馬鹿な、そんな簡単にくれていいのものではないだろうにと、更に言葉を続ける。


「大切なんじゃないのか」


 だが――


「あなたね」


 この後の、あまりに単純明快な解答に、流石のルミラも赤面してしまったのだ。

 


「大切だからこそ、でしょうが」



xxx



「おい」


「何」


 ルミラがどうしようもなく、赤面して固まっている中――

 一部始終見ていたルシファーは心底不機嫌そうに、アンネリーゼへと言葉を続ける。


「今のは我ら"七獄(しちごく)の神魔"への、宣戦布告でいいな」


「どうかな」


 対するアンネリーゼは、少しも悪びれる様子はなかった。

 本当に淡々と、短く返していくのだ。


「我が主は、初めてだったのだぞ」


「ふーん」


 ルシファーの言葉を聴いた途端のことだった。

 口角をにぃっと上げて、アンネリーゼは悪戯(いたずら)めいた上目遣いでルミラを見上げる。


「私のために、とっておいてくれたんだ」


 ――だが。 


「そういうわけでは」


 絶対の実力を身に付けたルミラも、そっち方面はまだまだ未熟だったのだ。

 だからこそ、可愛らしい女性の言葉にも正直にこたえてしまったのだが――


「やっぱり」


 しかし意外なことに、アンネリーゼは少しもがっかりすることはなかった。

 それどころか、これ以上ないほどに、満面の笑みを浮かべてしまう始末だったのだ。



「あなたって、まだまだ子供ね」



xxx



 それからアンネリーゼは、「そろそろ合格者達に顔を見せなきゃ」と、エーメリッヒと共にあっさりと去っていった。

 ルミラにとっては当然に、まるで予期せぬ嵐の如く過ぎ去った出来事だったのだが――



「さて、邪魔者もいなくなったことじゃ。弁明をきこうか」



 残念ながら肝心の、過去最大級の大嵐はいまだ滞在中だった。


 「好き放題やるなら、せめてこの状況をなんとかしてから行ってくれ!」と、ルミラは心の中で叫んだ。

 

 何故ならば、本気で怒っている美少女というのは実に恐ろしいものだからだ。

 そしてそれは、圧倒的な強さを誇るルミラも決して例外ではなかったのだ。


「不可抗力かつ、身に覚えがないものをどうしろと」


 しかしそんな内心を隠しながら、ルミラはルシファーの詰問に対して、努めて冷静に返す。

 そうだ、弱みを見せてはならない、堂々としなければと、精一杯の虚勢を張ったのだ。


「サタン、本当にそうなの?」


 いつも快活なベルゼブブも、怒気を孕んだ言葉でサタンに問う。


「初級魔術しか使えんのに、吸血鬼(ヴァンパイア)の前にでて命を張っておったな」


「それか」


「それだな」


「言い逃れできないほどの重罪ね」


「なんでだよ」


 しかし怒気を孕んでいるのは、出会った頃からずっと好意的だったサタンですらも、例外ではなかった。


 つまりは、もはや誰一人としてルミラの味方などいなかったのだ。


「可愛かったからか」


 じとりと、非難の視線を向けるアスモデウス。


「馬鹿な。言いがかりはよしてくれ」


「私達も全然負けてないと思うけど」


「おっしゃるとおりだ」


「身体の方なんて、特にそうだと思うが」


「それもおっしゃるとおりだ」


「愛の深さも、全然負けてる気がしませんけど」


「はは、俺は果報者だな」


 レヴィアタン、アスモデウス、マモンから次々と非難されるルミラ。

 

 そして彼女達の詰問を、のらりくらりと、なんとか返してゆく。

 本当に、どうしようもなく必死だったのだ。


「……………………」


「な、なんだ」


 しかし、無言でじとりと七人から睨まれて、どうしても取り乱してしまった。


「人間じゃないと、嫌なのかしら」


「馬鹿な。そんなはずがあるか。お前達はもう少し鏡を見た方がいい」


「やはり重罪ね」


「だからなんでだよ!」


 俺にどうしろというんだと、今度はルミラが彼女達に非難の視線を向けるが――

 

「我が(あるじ)よ」


「な、なんだ」


 それは今の彼女達には、()()()()()()()()だったのだ。


「アンネリーゼも言っておったが、責任は重大だぞ」


 そこまで言い切ったルシファーは、ルミラへとゆっくり近づいてゆく。

 

 一歩、二歩と、そして最後には密着するほど近くまで歩み寄る。

 それから至近距離で、ルミラの顔をじっと見つめるのだ。


「ル、ルシファー……?」


「なんだ、知らなかったのか」


 しかし、それからだったのだ。

 

 もっと早くに女心を学んでいれば良かったと、ルミラが後悔するのは――




「我らは酷く、嫉妬深いんだ」

次回、新たな女性とのトラブルが……ッ!

次回は明日9/14中にアップします!


ここまでお読みいただきありがとうございます!

【作者の励み】【モチベーションアップ】になりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おやおやァ? 随分と修羅場ってますねェ? いいですかルミラ君。ハーレムとは女の子にモテモテになる羨ましいモノだけではありませんよ? 修羅場の渦中に立たされ、夜の相手でミイラになるか腹上死する…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ