女心を早く知るべきだった男
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「やっと、意識してくれたね」
花開くような、誰もが見惚れる笑顔を見せるアンネリーゼ。
突然の事態がいまだ飲み込めず、呆けたようにぼーっとしているルミラ。
そして、一瞬の予想外の出来事に、時がとまったように動かなくなる神魔達とエーメリッヒ。
「……あのさ」
やがて沈黙を破ったのは、渦中の人物であるルミラだった。
「何?」
「初めて?」
「うん」
「言うまでもなく、今のことだぞ」
念のため、ルミラは確認をとるが――
「そうだって言ってるよ」
返ってきたのは、どう考えても間違えようのない言葉だった。
だからこそルミラは、心の中で頭を抱えたのだ。
「なんで?」
「どうかしたの」
心底不思議そうに、アンネリーゼは首を傾げる。
対するルミラは、馬鹿な、そんな簡単にくれていいのものではないだろうにと、更に言葉を続ける。
「大切なんじゃないのか」
だが――
「あなたね」
この後の、あまりに単純明快な解答に、流石のルミラも赤面してしまったのだ。
「大切だからこそ、でしょうが」
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「おい」
「何」
ルミラがどうしようもなく、赤面して固まっている中――
一部始終見ていたルシファーは心底不機嫌そうに、アンネリーゼへと言葉を続ける。
「今のは我ら"七獄の神魔"への、宣戦布告でいいな」
「どうかな」
対するアンネリーゼは、少しも悪びれる様子はなかった。
本当に淡々と、短く返していくのだ。
「我が主は、初めてだったのだぞ」
「ふーん」
ルシファーの言葉を聴いた途端のことだった。
口角をにぃっと上げて、アンネリーゼは悪戯めいた上目遣いでルミラを見上げる。
「私のために、とっておいてくれたんだ」
――だが。
「そういうわけでは」
絶対の実力を身に付けたルミラも、そっち方面はまだまだ未熟だったのだ。
だからこそ、可愛らしい女性の言葉にも正直にこたえてしまったのだが――
「やっぱり」
しかし意外なことに、アンネリーゼは少しもがっかりすることはなかった。
それどころか、これ以上ないほどに、満面の笑みを浮かべてしまう始末だったのだ。
「あなたって、まだまだ子供ね」
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それからアンネリーゼは、「そろそろ合格者達に顔を見せなきゃ」と、エーメリッヒと共にあっさりと去っていった。
ルミラにとっては当然に、まるで予期せぬ嵐の如く過ぎ去った出来事だったのだが――
「さて、邪魔者もいなくなったことじゃ。弁明をきこうか」
残念ながら肝心の、過去最大級の大嵐はいまだ滞在中だった。
「好き放題やるなら、せめてこの状況をなんとかしてから行ってくれ!」と、ルミラは心の中で叫んだ。
何故ならば、本気で怒っている美少女というのは実に恐ろしいものだからだ。
そしてそれは、圧倒的な強さを誇るルミラも決して例外ではなかったのだ。
「不可抗力かつ、身に覚えがないものをどうしろと」
しかしそんな内心を隠しながら、ルミラはルシファーの詰問に対して、努めて冷静に返す。
そうだ、弱みを見せてはならない、堂々としなければと、精一杯の虚勢を張ったのだ。
「サタン、本当にそうなの?」
いつも快活なベルゼブブも、怒気を孕んだ言葉でサタンに問う。
「初級魔術しか使えんのに、吸血鬼の前にでて命を張っておったな」
「それか」
「それだな」
「言い逃れできないほどの重罪ね」
「なんでだよ」
しかし怒気を孕んでいるのは、出会った頃からずっと好意的だったサタンですらも、例外ではなかった。
つまりは、もはや誰一人としてルミラの味方などいなかったのだ。
「可愛かったからか」
じとりと、非難の視線を向けるアスモデウス。
「馬鹿な。言いがかりはよしてくれ」
「私達も全然負けてないと思うけど」
「おっしゃるとおりだ」
「身体の方なんて、特にそうだと思うが」
「それもおっしゃるとおりだ」
「愛の深さも、全然負けてる気がしませんけど」
「はは、俺は果報者だな」
レヴィアタン、アスモデウス、マモンから次々と非難されるルミラ。
そして彼女達の詰問を、のらりくらりと、なんとか返してゆく。
本当に、どうしようもなく必死だったのだ。
「……………………」
「な、なんだ」
しかし、無言でじとりと七人から睨まれて、どうしても取り乱してしまった。
「人間じゃないと、嫌なのかしら」
「馬鹿な。そんなはずがあるか。お前達はもう少し鏡を見た方がいい」
「やはり重罪ね」
「だからなんでだよ!」
俺にどうしろというんだと、今度はルミラが彼女達に非難の視線を向けるが――
「我が主よ」
「な、なんだ」
それは今の彼女達には、あまりにも逆効果だったのだ。
「アンネリーゼも言っておったが、責任は重大だぞ」
そこまで言い切ったルシファーは、ルミラへとゆっくり近づいてゆく。
一歩、二歩と、そして最後には密着するほど近くまで歩み寄る。
それから至近距離で、ルミラの顔をじっと見つめるのだ。
「ル、ルシファー……?」
「なんだ、知らなかったのか」
しかし、それからだったのだ。
もっと早くに女心を学んでいれば良かったと、ルミラが後悔するのは――
「我らは酷く、嫉妬深いんだ」
次回、新たな女性とのトラブルが……ッ!
次回は明日9/14中にアップします!
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