凶禍の呪術師VS神聖魔術師③
「"禍神"……それに、"七獄の神魔"だと……ッ!?」
ルミラの言葉に驚愕するエーメリッヒ。
そんな馬鹿な、神魔など、いくらなんでも召喚できるはずがないと考えるが――
「――な、何ッ!?」
まさに、その瞬間だった。
――ズズズッ……!
「あ……あれは……ッ!」
先ほどエーメリッヒが"天魔"召喚を施した際に作り出した渦より、更に大きな渦が現れる。
最初は白い肌が姿を見せる。
次に扇情的な衣装に身を包む、女性らしい美しい肢体。
「我が主」
それから見事な黒翼を携えた美少女が、渦より露わになったのだ。
「あ……あぁ……ッ!?」
「そんな……そんな馬鹿なッ!? 人間が……"神魔"召喚を成し遂げるなど……ッ!?」
エーメリッヒは、彼女が纏う魔力量から察して、それが"神魔"であることに気付いた。
当然にザフキエルもだ。
「"神魔"召喚ッ!? そんなまさかッ!?」
「"神魔"召喚って……かつて大昔に"大英雄レギナ"様がやってのけた……伝説の……?」
観客席も、ざわざわと再度ざわめき始めた。
――だが、それはまだ序の口だった。
何故なら――
先ほどのザフキエルを遥かに超える魔力を纏った"神魔"が、それも七体も同時に現れたのだから。
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「なっ……七体同時召喚……ッ!?」
「私は……夢を見ているのかね…………?」
次々と登場する、超絶美少女の神魔達。
もはやこの場に驚愕していない者など、誰一人としていなかった。
夢幻であると言われれば、素直に納得してしまうほど――
それほどまでに、幻想的な光景を目の当たりにしたのだ。
だが――
「よくも――ッ!」
彼女達からでた第一声に、全員がぽかんとしてしまう。
「よくも、"封魔の呪印"を施してくれたなッ!」
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「……………………は?」
その場にいる全員が、ルミラを含めてあっけにとられてしまう。
「なんといういけずなのじゃ、我が主はッ! おかげでこのルシファーの力をもってしても、出てこれんかったではないかッ!」
「我が主よっ! あんまりだっ! あんまりではないかっ!!!」
「い、いや……」
召喚された神魔達は、ことごとく主であるルミラに不満の表情を浮かべる。
だからこそ、ルミラはたじろいでしまう。
「我が主……私が添い寝できずに、寂しくはなかったのですか?」
「馬鹿な。マモンよ、我が主は私のようなぐらまらすぼでぃにこそ、魅力を感じておられるのだ」
「アスモデウス! あんたみたいなエロ女、我が主が好みのはずないでしょ! この可愛らしいレヴィアタンにこそ、我が主は御執心なのよ!」
「あの……今、戦いの最中だから……ね?」
勝手に口論を始める神魔達に、ルミラは困惑していた。
「まったく、お子様ばかりね。いいかしら? 我が主はこの"神魔一のクールガール"、ベルフェゴールこそがお気に入りなの」
「そのナイチチでよく言うわよ。我が主はこのベルゼブブのきょぬうが好きなのよ。分をわきまえなさい!」
しかし、ついにはルミラも我慢の限界が来る。
「分をわきまえるのはお前達だ! 見ろ、戦いの最中なんだぞ!」
「…………ん?」
ルミラの声で、一斉に彼女達はエーメリッヒとザフキエルを見る。
しかし、しばらくすると――
「――で? 今夜の添い寝は、いつも通りじゃんけんで決定でよいか?」
またもや一斉に、口論の続きをし始めるのだ。
「望むところだ。だが私は慈悲深い。お前らに先行を譲るから、はやく手をだせ」
「アスモデウス、それは後出しというやつだっ! 我の目は誤魔化せんぞっ!」
「む。そうとも言うな」
「そうとしか言わないわよ!」
敵前で緊張感がなく、わーきゃーと喚く美少女達。
そんな様子を見て、ザフキエルは「今なら、術者ならばやれるか?」と考えて――
――ダッ!
素早く駆けて不意の一撃を入れようとする。
――が。
バシッ!
「随分と、大胆なことをするな?」
「なッ――!」
長い銀髪の美少女、ルシファーに大剣を軽々と、片手で止められてしまう。
その後、大剣はシュウウっと音を立てて、見るも無残に腐り果てたのだ。
「己の分際をわきまえるがよい、ザフキエル」
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――ドガァッ!
「ぐがぁッ、があああああああああああああああッ!!!」
まさにその瞬間だった。
ルシファーはザフキエルの鳩尾に、痛恨の肘鉄を喰らわせた。
ほとんど予備動作がなかったが、ザフキエルの苦しみ方を見れば、驚異的な破壊力なのだと誰もが理解できた。
――サァアアア……
そして大ダメージを受けたザフキエルは、光の粒子となってこの場から完全に消え去ってしまったのだ。
「ザフキエルを一撃か……。君は天界の"元"最高位の熾天使、ルシファーなのだろう? 姿形がまさにそれだからね」
一部始終を見ていたエーメリッヒが、自身を納得させるように口を開いた。
「もはや、そうであるに違いない」と、確信しながらだ。
「ル、ルシファー……!? それじゃまさか……ッ! 隣の瓜二つの、見事な黒翼の女の子はもしや……ッ!?」
観客席の人々も、エーメリッヒと同じく、気付いたようだった。
「そして――"大英雄レギナ"様と共に、ベルスタルージュ帝国のために戦ってくれた"神魔サタン"よ」
次回、エーメリッヒが最後の意地を見せる……ッ!
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