宮廷魔術師採用試験④
【評価】を……、【評価】を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
そして一般受験組全員がそれぞれの定位置に着き、開始の合図を待った。
それから全員が首から"精霊加護のペンダント"を下げているのを、現地の試験官達が確認して回り――
「始め!」
ついに、戦いの火蓋は切って落とされたのだ。
「ハハハッ、悪いな! まずは分不相応な君を、一発で退場させてやる! "神聖なる剛槍"!」
「おぉ! いきなりメドルフが大技を繰り出したぞ!」
まさに開始の合図後、すぐのことだった。
メドルフは真っ先に詠唱を施し、天空に大きな剛槍を出現させたのだ。
あまりの大技に、他の一般受験生は驚いて身動きが取れなくなり、観客も全員目を奪われていた。
そして遠く離れたルミラに向かって、思い切り投げつけた。
しかもその速度はぎゅんぎゅんと上がり続けて、ルミラを襲う――
「――来たれ、"煉獄の凶刃"」
――しかし。
絶体絶命であるはずのルミラは、ほんの少しも動揺する素振りを見せなかった。
その代わりに、静かに"武装創造"と呼ばれる詠唱を施して、漆黒に染まった剣を手にするのみだ。
(詠唱が遅すぎるッ! それに【呪術師】系統の"武装創造"などで防げるものか! 武装ごと砕け散れ!)
――だからこそ。
この瞬間、メドルフだけではなく誰もが終わりだと思ったはずだ。
もはや"神聖なる剛槍"を防ぐ方法などないと。
避けるにしても、どうにも反応できる速度ではないと。
【呪術師】系統の"武装創造"などで、防げる代物ではないと。
――だが。
完全におしまいだと、誰もが思った、本当に一瞬のことだった。
その場にいた誰一人として、何が起こったかなど理解できなかったのだ――
「――――――――――ッ!?!?!?」
――先ほどまで遠く離れていたはずのルミラが、一瞬にしてメドルフの懐まで飛び込んでいる光景になど。
「隙だらけだぞ、【大聖魔術師】サマよ」
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――ズバッ!
「がッ、があああああああああああああ!!!」
誰もが何が起こったのか理解できずに、言葉を発せず驚いている中――
ルミラの"煉獄の凶刃"で斬り付けられたメドルフの悲鳴だけが、会場にあがった。
しかもメドルフの身体は青白い炎に包まれて火達磨状態になり、当の本人はあまりの苦しみにのたうち回っているのだ。
そしてついには――
メドルフの首に下げられた"精霊加護のペンダント"は――無常にもぴしっと音をたてて、砕け散ってしまったのだ。
「まずは【大聖魔術師】一つ――」
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「なっ……!? 馬鹿な、【大聖魔術師】のメドルフがやられた……ッ!? それも奴は、どうやって間合いを詰めた……ッ!?」
周囲の受験生は、いまだ先ほどの光景について説明がつけられなかった。
彼らが唯一できたことと言えば、情けないことに何が起こっているのか分からず、ただただルミラとメドルフを見比べて佇むのみだったのだ。
「どうした? 早く俺の"精霊加護のペンダント"を破壊したらどうだ?」
「――――――――ッ!?」
だからこそ、ルミラの軽い挑発にすら、彼らは心底恐怖した。
何故だ、そんなことあるはずがない、奴の"武装創造"の性質から考えるに、【呪術師】系統のスキル持ちのはずだ。
しかしそうであるならば、【大聖魔術師】であるメドルフの身を包む"魔術障壁"すら、突破できるはずはないのにと、彼らは必死に思考を巡らせるが――
「まっ……まぐれだ! まぐれに決まっている! あろうことか【呪術師】風情が、粋がるな!!」
ついには説明がつかず、思考停止に陥ってしまったのだ。
「まずはお前から退場させてやる! 目障りな【呪術師】が!」
そして、集団で襲いかかれば奴を黙らせることができると、最も短絡的な行動にでるのだが――
彼らはルミラとのあまりの格の違いにこそ、真っ先に気付くべきだったのだ。
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「たっ……大変です、大変なんです! エーメリッヒ様!」
一人の試験官が、これ以上ないほどに慌てて採用試験総監督のエーメリッヒの下に駆け寄った。
その顔には、まるで化け物でも見たかのような驚愕の表情を浮かべてだ。
「騒々しいぞ。一般受験組の選抜で何かあったのか?」
それでも、歴戦の古豪であるエーメリッヒは少しも取り乱すことはなかった。
自分はベルスタルージュ帝国にとって、大事な宮廷魔術師採用試験の総監督に任じられた身だ。
立派に役目を果たしてこそ、大恩ある皇帝陛下に顔向けできるものだと、彼は立派な考えを持っていたからだ。
「そっ……それが……!」
――しかし。
そんな彼も、部下の試験官からのあまりの衝撃的な発言を、静かに聴き流すことはできなかったのだ。
「一般受験組は、一人を残して全員脱落です……ッ! たった一人の……たった一人の【呪術師】スキル持ちが、一般受験組を一人たりとも残さず、失格させました……ッ!」
次回は明日9/6までにはアップします!
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