宮廷魔術師採用試験②
【評価】を……、【評価】を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「よし! これより宮廷魔術師採用試験を始める!」
一際立派な装飾が施された衣服に身を包む魔術師が、高らかに宣言する。
声を聴いた受験生達は「いよいよか!」と気合いを入れ始めた。
彼らにとっては当然のことだろう。
己の人生が懸かっていると言っても過言ではない採用試験なのだから――
「指定受験組はこの広場で待機! 一般受験組は今から闘技場に移ってもらう! これから配布する"精霊加護のペンダント"を5人分破壊すれば本選に進むことができる! 当然、破壊されてしまった者は、その時点で即不合格だ!」
そこで一旦、試験官の魔術師は一区切りにした。
「それと念の為に言っておくが、致死ダメージを受けたとしても心配はいらん! 一度は"精霊加護のペンダント"が身を守ってくれるからだ! 安心して戦いに挑め!」
指定受験組――それは大貴族の嫡男、嫡女や、ベルスタルージュ帝国の各魔術学院の主席クラスに与えられる特待枠だ。
彼らは高貴な身分、もしくは優秀な成績を収めた者達であり、未来のベルスタルージュ帝国を担う者達であるから、予選が免除されているのだ。
一般受験組――それは受験資格に制限はなく、誰でも試験を受けることができる枠だ。
ただし、厳しい予選を勝ち上がり、十分な実力を示してから本選に進むことになる。
そのため、結局は真の強者のみが選ばれるということだ。
「おい、そこのお前!」
そして、一般受験組が"精霊加護のペンダント"を試験官から配られている最中だった。
「随分と大袈裟な恰好だな、オイ? まさか本当に、【呪術師】か【闇魔術師】系統のスキル持ちか?」
ニヤニヤと下品に笑いながら、黒のローブに身を包む、いかにもなルミラに声をかけた人物が一人。
そしてその傍らには、一際立派な白を基調とした装束に身を包む男が佇んでいた。
(――明らかに、見下されているな)
そうルミラは感じたが、仕方なく短く返答する。
「【呪術師】系統だが」
その瞬間――
「ぶははははっ! 聴きました!? 笑い死にさせる気かってんですよ、メドルフさん! コイツ、【呪術師】系統のスキル持ちの癖に、この試験を受けに来たらしいですよ!」
ルミラに声をかけた男は耐え切れず、大声でルミラを馬鹿にしながら笑った。
そしてメドルフと呼ばれた男もぷっと吹き出した後、見下した顔でルミラへと口を開いた。
「記念受験かい? 君、この試験会場を見てみろよ? 各国の【聖魔術師】系統のスキル持ちで溢れているのが目に入らないのか? 【呪術師】系統のスキル持ちなど"カモ"になることくらい理解しているだろう? 一般受験組でも、宮廷魔術師の採用試験はレヴェルが違う。ましてや、【呪術師】系統のスキル持ちなど、恥をかくのが関の山だというのに」
メドルフの言う通りだった。
周囲の受験生の服装から察するに、教会で祝福済みの装束、防具に身を包んでいることは明らかだった。
つまりは、【聖魔術師】系統のスキル持ちばかりということだ。
だからこそ常識的に考えれば、相性が最悪の【呪術師】系統のスキル持ちなど、試験に挑戦するだけ無駄ということが簡単に理解できたのだ。
「筋金入りの馬鹿なんじゃないですかね? 恰好からして、俺ら【聖魔術師】系統のスキル持ちに狙ってくれって言ってるようなもんですもん!」
付き添いの男は再度、心底馬鹿にしたようにルミラを見下した。
「まぁ、とはいえ一般受験組は誰でも受けられるからな。時間の無駄なのにご苦労なことだ」
メドルフも同じようにルミラを見下して、踵を返してその場を去って行った。
それから、ざわざわと周囲が話し始めたのだ。
「アイツが噂の、隣国のヴィルヴァニア王国公爵家嫡男、メドルフ=ミュンゲンか……。なんでも、【大聖魔術師】のスキル認定を受けているとか……」
「しかも"聖獣召喚"までやってのけるらしいぞ」
「こりゃ奴と対峙する前に、さっさと5つ"精霊加護のペンダント"を破壊しないとな……」
そして周囲の人間までもが、ルミラを見下すような視線を送った。
予選は誰のでも構わず、5つの"精霊加護のペンダント"を破壊さえすればいい。
だからこそ、少しでも苦労しない弱そうな相手から狙うのがセオリーだ。
実際にその通りであるし、間違ってはいなかったのだが――
肝心の狙う相手が、あまりにも間違いだったのだ――
「――そっくりそのまま返すよ、"カモ"諸君」
次回は本日9/5の午前中にアップします!
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