凶禍の呪術師、町の住人から大歓迎を受ける
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
突然、勢いよく開かれたドア。
するとそこには、先ほど飛び出したヨーゼフさんと、壮年のガタイのいい立派な男性が一人いた。
「あ……貴方様が、"大英雄レギナ"様の生まれ変わりですか……?」
こっ……この人が町長なのだろうか……?
コルネリウスさんっていうのか……。
しかも、相当急いできてくれたのだろうか?
二人とも、息が上がっているな……。
「えーと、一応そうらしいです……。ルミラ=アルカディアと言います……」
俺がそう控えめに自己紹介すると――
「おほんっ! コルネリウス?」
アンネリーゼが、凛とした声で一言。
「あぁッ!? アンネリーゼ皇女殿下! 申し訳ありません! 真っ先にご挨拶すべきだったのに……!」
アンネリーゼに声をかけられたコルネリウスさんはすぐに謝罪する。
そりゃそうか……皇族だもんな……。
「いーよ。"大英雄レギナ"の生まれ変わりが現れたんだもの。貴方がそれどころじゃないことくらい、わかってるつもりよ」
対するアンネリーゼは少しも気にしていない様子で、それでいて何故か誇らしげだ。
「こっ……皇女殿下のご配慮、感謝いたします……ッ! ところで……ルミラ様の隣の……見事な黒翼の魔族はやはり……?」
「その通り。ルミラ君に神魔召喚された"神魔サタン"よ。いまだ"大英雄レギナ"しか成し遂げたことのない神魔召喚を、ルミラ君はいとも簡単にやってのけたのよ?」
「ちょ……俺の意思で召喚したわけじゃ……!」
俺が否定しようとしたまさにその瞬間だった。
突然コルネリウスさんは、はっとした驚きの表情を見せた。
その後、すぐに入口のドアへと振り返り――
「皆の者! 本物だぞ本物! 本物の"大英雄レギナ"様の生まれ変わりだ! それも伝説の"神魔サタン"も一緒だ!」
コルネリウスさんは大声でそう外に呼び掛けた。
「あぁ神よ! 本当にありがとうございます!!」
それから再度、コルネリウスさんは振り返って俺に礼を言った。
しかも――涙を浮かべながら、その場で土下座をし始めたのだ。
いやいや! 俺は神様じゃない……ッ!
それに、この町に貢献したのは俺じゃなくて"大英雄レギナ"なのに……ッ!
「やっ……やめてくださいコルネリウスさん! それに俺は何もしていない……し……ッ!?」
だからこそ、すぐに土下座をやめてもらうように伝えるのだが――
――ドタドタドタッ!!!
「――ッ!?」
その後、勢いよくぞろぞろと家に入ってくる人達に驚いて、中断してしまったのだ。
xxx
「うわっ! こ、こんなにたくさんの人が……!?」
なっ……! なんだっていうんだ一体……!
家に入ってきた人の数はざっと三十人ほどだ。
しかも外にもたくさんの人々が待機しているようだった。
だが何故か……何故か皆が大泣きしている……ッ!
それも両手を合わせて、擦りながら拝んでくるし……ッ!
ほんとに……ほんとになんなの……ッ!?
そのため俺は何が何だか分からず、ひどく混乱する。
「い……生きているうちに、"大英雄レギナ"様の生まれ変わりの方にお会いできるなんて……ッ!」
「あぁ……俺はたとえ、明日死んだとしても悔いはないぞ……ッ!」
「あまいわね……私は今でも大丈夫だわ……ッ!」
「隣は伝説の"神魔サタン"よね……!? アンネリーゼ皇女殿下に負けず劣らずの、絶世の美少女だわ……ッ!」
次々感謝の言葉を述べる町の人達。
うっ……生まれ変わりの俺にさえ、ここまでありがたがるなんて……ッ!
"大英雄レギナ"が、いかにこの町の人達にとって偉大だったかはわかるが……!
「はははっ! やめいやめい、皆の衆っ! そんな本当のことを言うでないわっ!」
おろおろしている俺とは対照的に、ドヤ顔で胸を張るサタン。
相変わらず可愛いけどさ……お前こんなに感謝されるの、畏れ多くないかッ!?
「み……皆さん、"大英雄レギナ"にものすごく思い入れがあるんですね……?」
そう思った俺は、恐る恐るそう尋ねるのだが――
「思い入れなんてレベルじゃないですよ!」
「"大英雄レギナ"様が施して下さった呪術結界のおかげで、俺達は安心して暮らしていけるんだ!」
「ダークドラゴンの群れに襲われかけた時がありました! しかし呪術結界に触れた途端、奴らすぐに腐食死してましたぜ!」
「あー、あったよなそれ! そのおかげで奴らわけもわからず、すぐに尻尾をまいてあたふた逃げてったよな! ざまぁみろってんだ! 俺達の"大英雄レギナ"様の力を、存分に思い知っただろうよ!」
「アンネリーゼ皇女殿下が討伐しに行ってくださった吸血鬼でさえも、私達の町には怖気づいて近づけなかったんだから!」
「そうだ! だからこそ、"大英雄レギナ"様の生まれ変わりである貴方に会えたことが、皆嬉しくて仕方ないんだッ!」
「そっ……そうですか……」
町の人達のあまりの熱気を目の当たりにして、俺は居心地が悪くなってしまう。
だってさ……?
俺は金無し、家無し、行くあて無しの三拍子揃った情けない存在だぞ……?
それが、こんな歓迎を受けていいのか……?
「あぁ、吸血鬼の討伐なんだけどね? 私じゃなくて、こちらのルミラ君がばっちり腐食死させて討伐してくれたわよ? 恥ずかしながら、私達の絶体絶命の危機を救ってくれたのよ。ルミラ君が【凶禍の呪術師】だと知ってからの吸血鬼の命乞いときたら、そりゃもう大爆笑モノだったわよー?」
お、おい!
火に油を注ぐな、アンネリーゼ!
しかもそれは俺じゃなくて、サタンがやったことだろうが!
「な、なんと! 我らのアンネリーゼ皇女殿下を助けて下さったのか! それに吸血鬼、いい気味ですな! やはり【凶禍の呪術師】様のおかげで、我らの幸せは永久に続く! そうだろ? 皆!」
「当たり前じゃない! 今日はルミラ様の大歓迎会にしましょ!」
「朝までどんちゃん騒ぎ確定だな! とっておきの酒も開けねぇとな!」
「そうだそうだ! こんなに幸せな日はないからな!」
あぁ、やっぱり……!
てか、どうすんだよッ!?
俺は生まれ変わりといっても、一人では何にもできない、成人すらしていない子供だぞッ!?
吸血鬼を倒したのだって、すべてサタンのおかげだし……ッ!
そこまで驚きと居心地の悪さを感じた俺だったが――
この後、まったくの杞憂に終わることになる。
そしてアルカディア家を追放された俺を、この町の住人は本当に温かく慰めてくれるのだ――
次回は明日9/3にアップします!
ここまでお読みいただきありがとうございます!
作者の励み・モチベーションアップになりますので、少しでも面白い・続きが読みたいと感じていただけたならばブクマ・評価【特に評価は是非!】の程よろしくお願いいたします!




