強力な呪術結界
評価を……、評価を下さればやる気メガ盛りMAXです(欲しがりお化け並感)
「す……すごい勢いで飛び出していったな……」
「ほらね、ほらねっ! ねっ!? 言った通りでしょうっ!? この大国ベルスタルージュ帝国の全国民が貴方を歓迎するってね!」
アンネリーゼは「ほら見たことか!」と言わんばかりに、まるで自分のことのようにものすごく誇らし気だった。
しかし……このお姫様、はしゃいだドヤ顔までめちゃくちゃ可愛いなほんと……。
いや、しかしなぁ……?
やっぱりにわかにはまだ信じがたい、というのが俺の本音だ。
そしてひとつ、大きな疑問も浮かび上がっている。
"大英雄レギナ"は、それほどまでにベルスタルージュ帝国の"全国民"にとって、大きな存在なのだろうかと。
「しかし……"大英雄レギナ"は具体的に、この町に何をしたんだ? 彼女はベルスタルージュ帝国をサタンと共に、魔王タナトスの軍勢から守った。それから、闇の住人達は皆怯えて近づかなくなったっていうのも理解できる。しかし、それにしたって彼女のいた都市部以外は侵略を受けてもおかしくなかったんじゃないか?」
だからこそ、俺は自分を納得させるようにそこまで言い切った。
しかし、普通に考えれば当然の疑問であるはずなのだ。
ここは俺がロスタリフィーエ帝国から歩いて辿り着けたほどの場所なのだから、当然にベルスタルージュ帝国の都市部ではない。
だからこそ、闇の住人達にとっては、侵略の対象になりえるのではないか。
何故ならば、奴らにとって最恐を誇った"大英雄レギナ"がいないのだから――
――そしてそうであるならば、この広大なベルスタルージュ帝国全体で見れば、"大英雄レギナ"の恩恵を受けている人達ばかりではないんじゃないか……?
俺はそこまで疑問に感じていたが――
「我が主よ。言いたいことはわかるが、まさか我とレギナがなんの備えもせんかったと思うのかぁー? んんー?」
サタンにからかわれながら顔を近づけられて、またもや思考停止してしまった。
てか、その綺麗な顔でじっと見続けるのほんとにやめて!
ほんとに、どきどきが止まらないから!
そこまであたふたする俺をじと目で見た後、はぁーっと長めに溜息をつくアンネリーゼ。
「おい、今絶対呆れただろ!」
だからこそ、抗議の目線と共にそう言葉にしたが、ぷいっと顔をそむけられて無視されてしまった。
つ……辛い……。
「気付いているかもしれないけれど……この町の規模は他国の都市部と比べてもなんら遜色はないわ。確かに貴方の言う通りよ。いくら"大英雄レギナ"が、奴らの心底恐れる方法で魔王タナトスを撃滅したといっても、それだけで辺境の町にまでその効果が及ぶとは言えないし、当然にここまで町の繁栄も進まないわ」
まぁ、それはおいといてだ。
やっぱり、そうだよな……。
町の繁栄には、持続的な安全が必要不可欠だ。
しかもこのエヴァリーデは、近くに吸血鬼が住まうような森もあるのだからなおさらだろう。
だが……そうすると、この町は何故ここまで繁栄したんだろうか……?
「でもね?」
しかし――
「だからこそ、"大英雄レギナ"はベルスタルージュ帝国の隅々の町まで足を運んで施したそうよ。そのおかげで、彼女はベルスタルージュ帝国の守り神とまで呼ばれるようになったの」
「施した……?」
ここから、俺の想像をはるかに超えた回答が待ち受けていたのだ。
「――えぇ、そうよ。各町の周囲に超強力かつ超持続の、それも呪術による大きな結界をね」
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「じゅ……呪術による大きな結界……? それを、この広大なベルスタルージュ帝国の各町に……? それも、"大英雄レギナ"が活躍したのは、大昔なんだろ……? もしや……まさかとは思うが、今でも……?」
俺は次々と、疑問が湧き上がってしまう、
各町の周囲に施しただって……ッ!?
そんな馬鹿な……この広大なベルスタルージュ帝国の全土に渡ってとなれば……
一体どれほどの魔力総量を有していれば、そんなことが可能になるんだッ!?
それにだ……!
大昔から今もなお、この町が繁栄しているってことは……
範囲だけでなく、持続力も桁違いってことじゃないか……ッ!
「おやぁー? 信じられぬのか、我が主よ?」
当たり前だ!
そんな超範囲、超強力、超持続の三拍子揃った呪術結界なんて、いくらなんでも存在するはずがない!
そうして俺は次々と、頭の中で否定していくのだが――
「そう、そのまさかよ。今もどの町でも、現役バリバリで効果を発揮しちゃってるわね。ほんと、"大英雄レギナ"って知れば知るほど化け物よね」
「――ッ!!!」
はぁーっと、心底呆れるアンネリーゼの顔を見て、俺は全てが真実であると認識してしまったのだ。
そして同時に考える。
もし、そうであるならば――
俺なんかが、そんなすごい人の生まれ変わりで大丈夫なんだろうか……?
そのため、俺はどうしようもなく、責任の重さと言い知れない不安を感じてしまったのだ。
「…………」
「大丈夫……?」
うつむいて落ち込んでいる俺を見て、アンネリーゼは心配そうに様子をうかがう。
いやいや、駄目だ! 女の子に……男が心配をかけるなんて……!
そこまで決心した俺は、自分の頬を両手でばちばちと叩いた。
そんな俺を見たアンネリーゼは一瞬驚いていたようだったが、すぐにふっと笑って口を開いた。
「いい心がけだねぇ、ルミラ君? 女の子はそういう気遣いに弱いもんだよー?」
にししと笑いながら、上から目線のアンネリーゼ。
くそっ……若干からかわれてるな……。
しかも当然のように考えを見透かされているし……。
悔しい……。
「さーて、話を戻すけどね? その呪術結界っていうのは……そうねぇ、たとえばなんだけどさ? 【神聖魔術師】による魔術結界が、闇の住人に対して効果が抜群っていうのは知っているわよね?」
すっかりアンネリーゼのペースだな……。
だがな? ここはメルノイス魔術学院主席の俺の知識で、逆にぎゃふんと言わせてやる!
「勿論、知っているさ。【神聖魔術師】のスキル持ちが張った魔術結界ならば、奴らは触れただけでその身がけし飛ぶといっても過言ではないはずだ」
「そう、それよ! 簡単に言うなら、それの【凶禍の呪術師】バージョンってわけ! 【神聖魔術師】の魔術結界が触れただけでけし飛ぶのに対して、【凶禍の呪術師】の呪術結界は、闇の住人のような悪しき者達が触れただけで、みるみる身体が腐食して死に至らしめるのよ」
「な……何ッ!?」
――と思っていたが。
すぐにこちらが知識の差で、ぎゃふんと言わされてしまった……。
情けないことこの上ないな、ほんと……。
「そっ……そんなことが……可能なのか……?」
「ふっふっふーっ! まだ主には説明しておらんがっ! レギナは【凶禍の呪術師】の"禍"スキルの一つ、"禍言"で呪術結界に強力な呪いを込めたからなっ!」
俺が素直に疑問を口にすると、今度は隣のサタンが自信満々にドヤ顔で答えてくれた。
「そっ……そうなのか……本当にすごいな、【凶禍の呪術師】って……」
しかし、【凶禍の呪術師】はそういうこともできるのか……。
あとでじっくりとサタンに教えてもらおう……。
「あぁ! そうだぞ、我が主よっ!」
しかし――
そんな時間などこれから全くなく、町の方々から想像以上の大歓迎を受けてドタバタとしてしまうことを、この時の俺はまだ知らなかったのだ。
――ドンッ!
「つっ……連れてまいりましたッ! 町長であるコルネリウスを初めとして……ッ! エヴァリーデの"全住民"が貴方様を大歓迎いたしますッ!!」
次回は9/2にアップします!
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