あてにならない調べ物
友達に大量の誕生日プレゼントを押しつけられる騒がしい朝を無難にやり過ごし、たいして面白くもない授業を切り抜け、お昼休み。今日は弁当を忘れてしまったから、学食に向かう。
「たまにはあそこで食べるのもいいよねー、噂話聞けて楽しいし!」
何故か、たんたんも一緒だ。コンビニ弁当が入ったレジ袋を引っ摑んで振り回しながら、私の後をちょこまかとついてくる。……でも、一人ぼっちにはならずに済むし、素直に嬉しい。
人で溢れかえる学食でなんとか二人分の席を取り、席番をたんたんに頼んで、長蛇の列に並び、カツカレーを買う。
「お待たせー」
カツカレーとスープ、スプーンが乗ったお盆を手に席に戻れば、笑顔のたんたんに迎えられた。
「全然待ってないよー、平気平気。それよりもさ、早く食べよ!」
「そうだね。いただきます!」
その後、ご飯を食べながら会話したことといえば、たんたんが仕入れていた噂話(もちろん内容は『不思議』に関することだ)とか、たんたんの部活事情とか、そんなことばかり。私はほとんど聞き手に徹していた。
「いやー、でも、むかいちゃんの誕生日と部活の休みが重なるって、こんな幸運はないと思うんだよね! 日頃の行いがいいからかなぁ」
「……違う気がするけど、そういうことにしとこうか」
「酷い!」
いやいや、数学の課題をすっぽかす人が『日頃の行いがいい』なんて言っても、説得力ないし……と思うけど、それは黙っておく。
「んー、納得いかないけどいいや。ねえ、あたしばっかり喋っててもつまんないしさ、むかいちゃんもなんか話してよ」
不満げだった表情をころりと変え、つぶらな目を輝かせながら、たんたんはこちらに詰め寄ってくる。
「えっ!? 私に話せることなんて――」
――あ、あった。
「……あのさ、夜見月市内の私立校で、中高一貫校ってあったっけ? 夜見月駅よりも南にあるところで、制服がセーラー服の学校なんだけど」
えみちゃんのことを思い出して、尋ねてみた……けれど。
「……私の記憶が正しければ、そんなところはないなあ。どうしたの、突然」
首を傾げながら、そう言われてしまう。
「私の友達が、夜見月市内の中高一貫校に通っているって言ってたから。その子、夜見月駅で下り電車に乗る子で、セーラー服を着ていたんだよね……」
「うーん……夜見月市にある中高一貫校は全部、夜見月駅以北の位置にあったと思うよ」
「そっか……そうだよね。ありがとう、たんたん」
その後、念のためネットでも調べてみたけれど、夜見月駅以南の場所に、中高一貫校はなかった。夜見月市内だけでなく、隣の市にも。
一体、どういうことなんだろう?