帰り道
あっという間に時間は過ぎていき、授業が終わった。
「またねー、むかいちゃん! 明日、忘れないでよーっ」
「もちろんだよ、たんたん! 部活、頑張ってね」
部活動加入率が九割五分を超える濱風高校。もちろん、一年三組の皆もほとんどの子が部活をやっている。
ただし、私は少数派。残りの五分のうちの一人。つまり、帰宅部だ。
というわけで、クラスの皆とはすぐ別れることになる。
一人で学校を出てバス停に向かい、数分スマホをいじりながら待つ。そのうちやってきたバスに乗り込み、揺られること約十分で、学校最寄駅に着く。駅ビル二階にある改札に着いたら、定期をタッチ。そのまま上り線ホームに繋がる階段を駆け上がれば、目的地に到着だ。
「次の電車は……七分後か。あー、喉渇いた」
盛大な独り言を呟きながら、近くの自販機でオレンジジュースを買う。
「――ぷはっ。なんか全身に染み渡る感じがするなぁ」
一気に半分ほど飲み干してから、夜見月駅の出口に近い乗車口に立ち、またしてもスマホをいじり始めた。
……楽しくないわけじゃ、ないんだけど。
ふと、スマホを操作していた親指の動きが止まる。
……楽しくないわけじゃないんだけど、やっぱり一人って……独りって寂しいよな。
そんなことを、考えてしまう。
友達に囲まれる学校。えみちゃんと言葉を交わす朝の駅。一人じゃないときの方が、絶対に楽しい。
――夜見月駅で、偶然えみちゃんに会えたりしないかな。
そんなことを考えながら、やってきた電車にぼんやりと乗り込む。
淡い期待を抱きながら、電車に揺られること約十分。
『次は、夜見月駅、夜見月駅。お出口は、左側です』
開いた扉から外に出て、人混みの中にあの子がいないか探してみる。
……今日も、いない。
一つため息をついて、階段を降りると、東口の改札から駅構外へ。
「……帰ろう」
家に着いたら、何をしよう。そんなことを考えながら、家路を辿った。
春から続けてきたことを、今日もまた、繰り返すだけ。
平穏なのはありがたいけれど、少しつまらないような、そんな気もする。