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また明日も、この場所で  作者: 秋本そら
言葉の呪いと名前の呪い
12/18

吐露

「――むかいちゃん!」

「うわあっ! ……な、なんだ、たんたんか……」

 昼休みの時間、ご飯を食べ終わってボケッとしていたら、唐突に肩を叩かれた。もう、本当にびっくりしたよ……。

「ちょっともう、何回も呼んでるのに、ぜーんぜん反応してくれなくて心配したよー」

「ごめん、ぼんやりしてて全然聞いてなかった」

 手を合わせて軽く頭を下げると、むすっとしながらも彼女は「もう、しっかりしてよー」と笑った。

「でも珍しいね、むかいちゃんがぼんやりしてるなんて。どうしたの?」

 こてん、と首を傾げるたんたんに。

「……ちょっと、場所変えてもいい?」

 小さな声で問いかければ、「いいよ」と返事が飛んでくる。

 教室の喧騒の中から抜け出して、人気(ひとけ)のない場所を目指し走った。


「たんたんが教えてくれた『噂話』……本当、だった」

 立ち入り禁止の屋上に続く、階段。その踊り場で二人きりになって、話していた。

「あの事故があった日、見ちゃったんだよ。赤い目をした黒い影が、男の人を突き落とすの。この街の『不思議』に関する『噂話』が嘘だとは思ってなかったけど、でも衝撃だった」

 たんたんはひたすら、真剣な表情で私の話を聞いてくれる。

「でも……それだけなら、まだよかったんだ」

「それだけ、なら?」

 たんたんの問いに、頷いた。

「その黒い影……私の、友達だったんだ」

 彼女の目が、パッと丸く見開かれる。

「それ……どういうこと?」

「この間話したじゃん、セーラー服の中高一貫校に通う友達のこと……あの子、だったんだ」

 えみちゃんのことを、話した。

 出会ったいきさつも、楽しかった朝の会話も、朝にしか会えないことも、学校や年齢や、いろいろなことが分からないことも、全部。

 たんたんは少し考えて、こんなことを口にした。

「……ねえ、むかいちゃん。分かってるとは思うけど……そのえみちゃんって子、幽霊だと思うんだ」

 私は、ゆっくりと頷く。

 あの『噂話』の内容からして、きっとそうなんだろう、とは薄々勘づいていた。

「この間さ、セーラー服が制服の中高一貫校について訊かれたとき……そんな学校、夜見月市内にはないな、って思ったんだよ。どこもブレザーを指定してたはずだよなって。記憶が間違っているかも、と思って言わなかったんだけど……ネットで調べなおしても、やっぱりなかった」

 でもね、とたんたんはこう付け足した。

「昔なら、セーラー服が制服のところが、この夜見月市内にもいくつかあったんだよ」

 ――昔なら、か。

「だからさ、その子が着ているのって、もしかしたら、古い制服なんじゃないかなあって思うんだ」

 ……確かに、それなら納得がいく。

「その子が学校をごまかしたのは、自分が幽霊ってことを隠したかったからなんじゃないかなあ。年齢をごまかして中高一貫校だって言ったのも、同じ理由だと思うよ」

 結構無理がある嘘だとは思うけどねえ、嘘が下手なのかな、その子。そんなことを言うたんたんの声を聞きながら、決めた。

 ――えみちゃんに、会いに行こう。

 えみちゃんにちゃんと、本当のことを訊きに行こう。

 幽霊だということを隠していた理由とか、どうして人を殺したのかとか、私と友達になろうと思ったわけとか。

 やっぱり怖いけど……友達だもの。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 怖いです……。 むかいちゃん大丈夫かしら? 幽霊に正面切って会いに行こうという決意、えみちゃんとは友達だから……例えそうであっても、やっぱり怖いです……。 [気になる点] 一人で会いに…
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