吐露
「――むかいちゃん!」
「うわあっ! ……な、なんだ、たんたんか……」
昼休みの時間、ご飯を食べ終わってボケッとしていたら、唐突に肩を叩かれた。もう、本当にびっくりしたよ……。
「ちょっともう、何回も呼んでるのに、ぜーんぜん反応してくれなくて心配したよー」
「ごめん、ぼんやりしてて全然聞いてなかった」
手を合わせて軽く頭を下げると、むすっとしながらも彼女は「もう、しっかりしてよー」と笑った。
「でも珍しいね、むかいちゃんがぼんやりしてるなんて。どうしたの?」
こてん、と首を傾げるたんたんに。
「……ちょっと、場所変えてもいい?」
小さな声で問いかければ、「いいよ」と返事が飛んでくる。
教室の喧騒の中から抜け出して、人気のない場所を目指し走った。
「たんたんが教えてくれた『噂話』……本当、だった」
立ち入り禁止の屋上に続く、階段。その踊り場で二人きりになって、話していた。
「あの事故があった日、見ちゃったんだよ。赤い目をした黒い影が、男の人を突き落とすの。この街の『不思議』に関する『噂話』が嘘だとは思ってなかったけど、でも衝撃だった」
たんたんはひたすら、真剣な表情で私の話を聞いてくれる。
「でも……それだけなら、まだよかったんだ」
「それだけ、なら?」
たんたんの問いに、頷いた。
「その黒い影……私の、友達だったんだ」
彼女の目が、パッと丸く見開かれる。
「それ……どういうこと?」
「この間話したじゃん、セーラー服の中高一貫校に通う友達のこと……あの子、だったんだ」
えみちゃんのことを、話した。
出会ったいきさつも、楽しかった朝の会話も、朝にしか会えないことも、学校や年齢や、いろいろなことが分からないことも、全部。
たんたんは少し考えて、こんなことを口にした。
「……ねえ、むかいちゃん。分かってるとは思うけど……そのえみちゃんって子、幽霊だと思うんだ」
私は、ゆっくりと頷く。
あの『噂話』の内容からして、きっとそうなんだろう、とは薄々勘づいていた。
「この間さ、セーラー服が制服の中高一貫校について訊かれたとき……そんな学校、夜見月市内にはないな、って思ったんだよ。どこもブレザーを指定してたはずだよなって。記憶が間違っているかも、と思って言わなかったんだけど……ネットで調べなおしても、やっぱりなかった」
でもね、とたんたんはこう付け足した。
「昔なら、セーラー服が制服のところが、この夜見月市内にもいくつかあったんだよ」
――昔なら、か。
「だからさ、その子が着ているのって、もしかしたら、古い制服なんじゃないかなあって思うんだ」
……確かに、それなら納得がいく。
「その子が学校をごまかしたのは、自分が幽霊ってことを隠したかったからなんじゃないかなあ。年齢をごまかして中高一貫校だって言ったのも、同じ理由だと思うよ」
結構無理がある嘘だとは思うけどねえ、嘘が下手なのかな、その子。そんなことを言うたんたんの声を聞きながら、決めた。
――えみちゃんに、会いに行こう。
えみちゃんにちゃんと、本当のことを訊きに行こう。
幽霊だということを隠していた理由とか、どうして人を殺したのかとか、私と友達になろうと思ったわけとか。
やっぱり怖いけど……友達だもの。




