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プロローグ

 光の届かぬ海底神殿。その神殿の入り口に、七人の男女が佇んでいた。


「ああ……これで自由に会話できる! なんて素晴らしいんだ!」


 両腕を広げて大仰に喜ぶ凡庸な見た目の男の言葉に、眩い金髪を持つ美しい女が微笑みを浮かべた。


「ふふ……本当、ようやくだね」

「一年掛かりの旅だったもんなー」


 銀髪の女に続いて、艶やかな青い羽毛に包まれた鳥男が嬉しそうに笑った。


「もうっ、アンタ自分がとんでもない存在になったっていうのに、初っ端の感想がそれなわけ?」


 呆れたようにそう言ったのは、背中に翼を生やした銀髪の、全体的に色素の薄い小柄な少女だ。半眼になりやれやれと頭を振るその姿は、少女のわりに老成しているように見えた。


「まあ、そう言うな。それがこいつらしいと言えばらしいんだ」

「そうだな。彼はあらゆる問題ごとを全てついで(・・・)に解決した男だからな」


 少女を諌めるように口を開いたのは、立派な黄金の(たてがみ)を揺らす獅子のような姿をした大男だ。その大男の言葉に、彼に比肩する長身を持つが痩躯の、緑の髪を持つトカゲのような姿をした女性が同調する。

 そんな二人の言葉を聞いて、浅黒い肌と尖った耳、長い黒髪を持つ男がふぅ、と溜息を吐いた。そしておもむろに凡庸な見た目の男に向き直ると、低いがよく通る声でこう言った。


「さて……約束通り、貴様には我が国の古代文献の解読に付き合ってもらうぞ。なに、百年もあれば全て読み解けよう」

「あなた方の時間感覚と一緒にしないでくれません!?」


 浅黒い肌と尖った耳を持つ男の言葉に、凡庸な見た目の男が食って掛かった。


「百年後なんて俺、骨になってますから!」


 その男の叫びに背中に翼を生やした少女が「ん?」と首を傾げる。その仕草に気付いた鳥男が口を開いた。


「どうしたんだい?」

「いやー……たぶんだけど、あたしたち並みとはいかないけど長生きすると思うんだよね」

「えっ?」


 翼を生やした少女の言葉に、凡庸な見た目の男が間抜けな声を上げた。その男の声が聞こえているのかいないのか、少女は話を続ける。


「元々の肉体の作りがあたしたちに比べて脆弱だから劇的に長生きはしないと思うけど……老化は確実に遅くなるよ。おじいさんになるまでに七十年か八十年くらいは掛かるんじゃない?」

「嘘だろオイ!?」

「なるほど、それは良いことを聞いた。やはり貴様は我が国で古代文献をその生涯をかけて解読する運命にあったのだ」

「都合よく解釈すんな!」


 神殿の前だというのにぎゃあぎゃあと賑やかなその一団。

 年齢も種族も国での立場もてんでばらばらな彼らはやがて、偉業を成し遂げ後世に語り継がれる存在となる。


 これは、そんな彼らが出発地点(・・・・)に立った時の、平和な一場面である。

2018.11.15

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