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ブラックボード

リープはしておりません!

9月半ばから大学の後期授業が始まった。

ハルキは理工学部物理学科の専攻だ。

周りから呪文のようだと言われても、ハルキは物理学が好きだ。小さいころからよく科学図鑑を見ていた。10歳のとき、星に興味を持ったハルキに過剰な期待を寄せた両親は、立派な望遠鏡を買い与えた。


「ハルキ、オレバイトあるから次サボるわー。」

仲がいいのかよく分からない大学の友人━━━アキツ。一年生は基礎授業ばかりで退屈だ。

「うん、わかった。明日2限に。」

じゃっ、アキツは片手を挙げて出ていった。


ハルキが移動の準備をしていると、斜め前に座っていた老人が独り言をこぼした。

「あんな黒板ができるとは、世の中変わったなー」

黒板はチョークの粉塵が人体に悪影響を及ぼすとかで廃止になった。ハルキが小学生の頃だ。

今あるのは、旧校舎のホワイトボードか、新校舎のブラックボード。ブラックボードは、巨大なiPadのようなものだ。インターネットに接続されているので、一昔前のスクリーンを上げ下げして資料や映像を写す、なんてことはしなくてよい。大抵の資料はブラックボードで表示できる。それに、ノートを取らなくても、先生が書いたものをダウンロードできる。ただ一つ、技術が進化してもPowerPointではなく手書きを続ける教授は多い。人間そんなに変わるものではないらしい。それに、液晶画面に映る手書きの文字は、なかなかに味があったりする。


それにしても大学にはいろんな人がいる。この老人しかり、国籍、年齢なんて関係ない。

そう思いながらフユキのことがチラッと頭に浮かんだ。

老人は手慣れたもので、ちゃちゃっとダウンロードを済ませると、「明日2限に、ハルキ君。」と軽やかに出ていった。

名前を教えただろうか?同じ学科だから知っていてもおかしくはないが。




10:25

翌日の2限開始5分前、アキツから『飲み過ぎた、サボる』とのメッセージが入った。こうして多くの大学生が怠惰の渦に嵌まっていくのだろう。


「隣空いているかい?」

「え、ええ、どうぞ。」

昨日の老人だった。こういう人はきっと本気で勉強しに来ている。

「すみません、名前……。」

ハルキが申し訳なさそうにしていると、

「あ、そうか、きみとはまだ……」と老人は呟き、

「マゴマサノリです。マサノリでいいですよ。」と大人ぶる訳でもなく微笑んだ。

「後期の基礎英語を担当します━━━」

鐘の鳴らない授業が始まった。

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