プロローグ
飛ばせるプロローグ……
14:35
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」
いつものカフェで、いつもの笑顔を向けられる。
旧内装を取り壊したパイプが剥き出しの空間に、学校の教室にありそうなガラクタが並べられている。
あの懐かしい、座ると疲れる魔法のイスが造り出す雰囲気が、このカフェの魅力だ。
定位置は………真っ白な肌に赤い唇の女が座っていた。美人なだけに幽霊のようだ。
女子会、ママ友会、主婦会そんなグループが占領している時間。
空いている隅のテーブルに、ブルーのハンカチを置く。
セルフサービスなので、先に席をとらなければならない━━━ということをわたしはこの店で覚えた。
「ダージリン。あと、季節の3種のベリーパンケーキ。」
「いつもありがとうごさまいます!お先にダージリンティーです。パンケーキは席へお持ちします。」
いつものお姉さんに、いつものように渡されるダージリンティーの乗ったトレイ。
ゆっくり歩いているのに、カップの水面が激しく揺れる。
ウェイトレスのあれは神技だ。
わたしはこの作業にいつまで経っても慣れない。
ウー ウウー
サイレンがけたたましく、どこか離れた場所を通過した。最近やたらと火事が起きている。気候のせいだろうか。
客は気にする風でもなく、より大きな声で会話を続けていた。