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彼女の死  作者: 遠藤良二
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僕の仕事、そして温厚な上司。悲しみは癒えない。

 翌日になり、僕は行きたくない気持ちを胸に秘め、無理矢理、出勤した。


僕の職業はコンクリートを製造する仕事をしている。


職場までは自宅から車で30分くらいかかる。


会社の班長と工場長には本当のことを話したが、他の従業員には身内で不幸があったことにしている。


班長と工場長はとても人柄が穏やかで、僕の休みを急であるにも関わらず、有給扱いにしてくれた。


これには本当に助かっている。


他の会社なら、こんな急な話しはただの欠勤としかみないと思う。


僕はいつも出勤時刻は早い方で、七時半頃には工場で待機している。


ちなみに勤務開始は午前8時からだ。


 ここの工場は数か所に部門は違うが分かれている。


道路用品・Hパイル・パイル・鉄筋溶接などで僕は道路用品に所属している。


道路用品という部署は道路の縁石や、高速道路で使われる細長いコンクリートを製造している。


慣れはしたものの結構な肉体労働だ。


僕はこの仕事は嫌いではない。


砂ぼこりがすごいが、天井から吊るされているクレーン(通称、天井クレーン)をリモコンで操って、一つづつU字型のコンクリートを運ぶのは技はいるものの、楽しい。


そんな環境で仕事をしながらでも、悲しみは癒えたわけではない。


僕はその悲しみを払拭するかのように仕事に没頭した。


まあ、周りの従業員はおじさんや、おばさんばかりで若い奴は数名しかいない。


けれど、そいつらは僕とはタイプが違い、ヤンチャな感じなので会ってもあいさつ程度で、遊んだりはしなかった。




 仕事中にもよく亡くなった楓のことを思い出す。


時には、思いあまって涙を流してしまう時さえあった。


でも、僕は素知らぬ顔で業務をこなしていた。


だが、その姿を見ている人はいるものだ。


それは、道路用品の班長だ。




仕事の帰り際に、ポンっと肩を叩かれ、


「堀下、大丈夫か?」


と言ってくれた。


僕としてもその声かけにはどう対処したらいいのか戸惑い、そして、


「…何とか、大丈夫です。心配かけてすんません…」


と、言いながら、押し寄せる心の闇を抑えるのが精いっぱいだった。


僕は班長に一瞥をくれてからその場を去った。


彼は明らかに心配そうな面持ちだった。


「おつかれさん」


という声が聞こえ、僕は振り返り頭を下げた。


それから、会社のトイレで黒いジャージと灰色のセーターに着替えてから僕は帰宅した。




さて、これから楓のアパートに行き、探ってみるか……。


それにしても疲れた……。


僕はこの寂しいような悲しいような気持ちのやり場を見つけることが出来なかった。


なので、凄く辛い…。


楓のアパートを目にしたらすぐにでも発狂しそうな気持ちだ。


だから、僕は少し自宅で休んでから向かうことにした。




時刻は19時を目前にしていた。


外は既に暗い。


少し休んだので僕はアパートに向かうことにした。

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