楓の使っていたリップクリームと元カノの自殺未遂の原因
僕は自宅に戻り、先程の出来事を思い返していた。
テーブルの上に上がっているティッシュを2~3枚取り、それを濡らし唇を拭いた。
律子さんに口付けされてから唇が気になって仕方がない。
何度も何度も拭いた。
そして、気の済むまで拭いたら唇が痛くなってしまった。
仕方なく引き出しからリップクリームを取り出し、唇に塗った。
そういえば、このリップクリームは楓が僕の部屋に来た時、使っていたものだった。
そんなことも忘れて使っていた。
でも、言い方は悪いが、楓に唇を浄化してもらった気分だ。
それからは気分も良い方に変わり、窪田道弘に連絡をすることにした。
話しの内容は、なぜ彼女は手首を切ったか、だ。
テーブルの上のスマホを手に取り、か行を探し、窪田道弘を選らんで通話ボタンを押した。
何度目かのコールでつながった。
「どうも、窪田さん」
「ああ、慎吾か」
「ちょっと、訊きたいことがあるんだけど、今いい?」
窪田さんはうん、と頷いた。
「僕が紹介して、ものにした彼女は何で手首切ったの?」
一瞬、間が空いたが、すぐに、
「その話か…。それはだな、つまり、俺が彼女に別れてくれと言った後なんだわ」
あ、そうだったんだ、と言った後、
「それで、彼女、命に別条はないの?」
「うん、それは大丈夫だ。ただ、あいつ搬送先の病院でかなり暴れたらしいけど…、それも、俺との別れが原因だろうな」
そっか、それともう一つ、と僕が言って続きを話した。
「彼女とは完全に別れたの?」
「ああ、別れたよ」
それを聞き僕はホッとした。
いろいろあったけど、何とか落ち着きそうだ。
あとは、律子さんとの関係をどうしていくかが問題。